Angel Beats! ~君と~
そこで遊佐の特性、『いつの間にかそこに居る』。以前、野田が旧校長室で汚れた黒い長い棒を磨いていての遊佐に気付かなかった。磨いているのに夢中になっているせいかもしれないが、入ってくる次点で遊佐の存在に気付かなかった。野田がいくらアホでも気付く、だが遊佐は見事に気付かれなかった。
「まぁ、過ぎた事はしょうがない。次は気を抜くなよ、例え女子だろうがな……」
頭をかくと少し背伸びをする。
ホームベースを踏み、一点を勝ち取った遊佐は取り敢えずベンチに戻りたかった。
「はい、ゆさゆさ」
と関根が何かを渡してきた。
「オロナミンZ?」
テレビCMで、
『疲れ気味の貴方、これを飲めば元気が出るゼェェェェェェェェェエエエエエエェェェッッッッット!!!』
という意味不明なCMだ。炭酸飲料であって、子どもから大人、お年寄りまで人気がある。
鼻から抜ける炭酸飲料独特の味、しつこくない甘さ、内容量が120mlと、お手頃サイズ。そこが人気の理由だろう。
状況はSSSチームが一点リードしツーアウト、一、二塁。さらに、野田が余裕をこいてツーストライク。しかし、野田の判断は正しい。
相手のキャッチャーはバッターの特徴を捉え、ストライクにさせる。椎名程では無いが運動神経が良いひさ子でさえギリギリだった。
だから野田は安全性が高い遊佐に賭けた。下手に打ってアウトにされるよりは良かったのだ。
(後、一回……)
(俺が打てば、ゆりっぺは俺の勇姿に惚れるだろう………)
それぞれの思惑(?)を乗せ、睨み合う。
(……コイツ…まだ片手で持ってやがる)
バットは遊佐がホームスチールをしてもまだまだ右手で持ったままだ。片手で打つつもりだろうか。
(今回はお前の好きな決め手でやれ)
キャッチャーは頭を右手でかく、これが合図。
「んじゃ……」
ビシュ!と空気を切る様な音が聞こえる。しかもかなり速い。
(ストレート!)
充分に右手に力を入れると目をボールに集中させる。
「うおおおおおおおおおゆりっぺぇぇぇぇぇぇぇええ!!」
大声を無意識に出し、全ての力をバットに注ぎ今までに観たことの無いスイングを見せる。
ボールは素直にバットの目前に、だがバットが空を切った。
(何!?)
バットは野田の手から離れ、ブーメランの様に回りながらベンチに居る大山の顔ギリギリにバットが壁にめり込んだ。
「ひい!!?」とマヌケな声を出すと同時にバットによってできた瓦礫がガラガラと大きな音を立てながら、地面に落ちていった。
「ストライク!スリーアウトチェンジ!」
(そんな…馬鹿な……!…この俺が‥‥‥ストライクだなんて…!)
To Be Continued
作品名:Angel Beats! ~君と~ 作家名:幻影