こらぼでほすと 解除13
「おめでとう。」 と、ケーキを前にしてティエリアは、お祝いの言葉を受けた。年齢不詳なので、七本のローソクという適当なものだが、それを吹き消すところまでやった。他の人間の誕生日イベントは、いつも見ているだけだったが、全員から祝われるというのは、とても幸せな気分にしてくれるのだと知った。
「降りて来たら、派手にやろうな? ティエリア。欲しいものも考えておけ。」
ニールは、そう言って、一口だけアイスケーキを口にした。さすがに、まだ食べられるほどではないらしく、残りは刹那の前に移動させている。
「そういうことなら、シャンパンよね。ちょっと待ってて。」
スメラギのほうは、そういうことなら秘蔵のがあるのよ、と、自室に走り、隠していたシャンパンを持って来た。飲める人間だけが、それで乾杯だ。フェルトとニールは、ジュースで一緒に相伴する。
トレミーの食堂で賑やかにお誕生日会なんぞやっていたが、ニールが眠気に負けたので、お開きになった。ロックオンの部屋で、ちょっと横にしておけばいいだろう、と、運んでハイネに連絡を入れておいた。
で、ここで問題が発生したのだが、それもなんとか話し合いで解決したので、マイスター組も休息することになった。
ニールが、ぐっすりと眠って目を覚ますと、ちゃんとベッドの上だった。さすがに制服のまんまはキツイだろうと、実弟が上着やらベルトやらは脱がしたり外したりしてくれたので、気持ち良く眠った。で、傍らが暖かいので、そちらに目を向けて、ちょっと絶句する。黒猫が、ぴったりと張り付いていたからだ。
・・・・あれ?・・・・
一人用のベッドだというのに、黒猫は横に眠っている。かなり窮屈だろうに熟睡している様子だ。明かりは消えているが、真っ暗ではない。薄暗いが、照明はついていた。自分の寝ているベッドの脇に、カタマリが二つある。よく目を凝らすと人の頭が二つくっついている。
・・・・え? ・・・・
体格からすれば、アレルヤとティエリアだろう。床に座り込むようにして眠っているらしい。何をやらかしてんだか、と、ニールが起き上がる。すると、足元に、ひとつのカタマリがあった。たぶん、それはライルのものだろう。全員が、毛布を被って寝ているらしい。どうやら、マイスター組総出で、ここで寝るということになったのだろう。いつぞや、アレルヤがマイスター組の決まりだとか言ってたから、実行したのだろうが、こんなところで窮屈に寝なくてもいいだろうに、と、ニールは思う。とりあえず、ちゃんと各人を部屋に戻して休ませようと、ベッドを降りたら、アレルヤが目を覚ました。
「まだ、早いよ? ニール。」
「アレルヤ、ちゃんと部屋で寝ろよ。そんな窮屈なことしてたら、疲れが取れないだろ? 」
「でも、なんか心配だしさ。・・・もうちょっと寝てれば? 」
「だから、ティエリアを連れて部屋に帰れ。俺、ライルを起こすから。」
「みんな、気が抜けてるんだよ。だから、寝かせておいてあげてよ。ニールと一緒の方が、よく寝られるんだから、問題ないって。」
そう、この問題が発生して、誰がニールと寝るかで揉めた。刹那は、自分が隣りに寝るのが一番だと譲らないし、ティエリアは、それでは不公平だと怒るし、どっちも折り合いをつけるつもりはないから、結果として、こうなった。とりあえず、同室ならよかろう、と、全員が雑魚寝なんてことになったらしい。ロックオンは呆れていたが、一人だけ別に寝るのも寂しかったのか、文句を吐きつつ、そこで休んだとのことだ。それを聞いて、ニールも呆れた。やれやれと、ベッドの端に座り込む。
「もう、んなことしてる場合か? 」
「してる場合っていうか、みんな、ニールのところに居たいっていうのが、本当の理由なんだと思うよ。・・・・そう言ってる、僕やハレルヤだって、やっぱり、側がいいなって思っちゃうんだ。」
「そりゃ、ありがとさん。でも、ちゃんと休まないと身体がな。」
「こんなぐらい、どうってことない。コクピットで寝るより、ずっと楽じゃない? 気分は? 」
「・・・んー、ちょっと身体が重いなあって感じかな。」
「ほら、もう少し寝たほうがいいんだよ。」
なんとなく、身体は重い。気圧変化に対応が利かないということは、重力にも対応はできていないのだろう。低重力やら人工重力やらを移動しているから、身体が対応できなくて鈍くなっているのだと、ニールにも解る。たかだか、数時間で、これだということは、確かに宇宙で活動は無理だ。
「おい、じじい。ぶつくさ言ってないで寝ろ。あんま喋ってると、五月蝿いのが目を覚ます。」
アレルヤではなく、ハレルヤが声をかけてくる。アレルヤがティエリアの凭れかかった身体を支えているので動けないから、口での注意しかできないらしい。
「なあ、ハレルヤ。おまえら、二月の予定は、どうなってるんだ? 」
「今のところ、フリーだ。たぶん、末のほうは、店の特別ミッションが入るだろうから空けてある。それがなかったら、ティエリアが行けないところへ行こうかって、アレルヤと考えてるとこだ。」
二月の末は、毎年、『吉祥富貴』の特別ミッションがある。指名が、アレハレとティエリアというのが定番のお客様だから、今年も、そうなるだろう、と、予想はしていた。ただし、今年はティエリアが、直近に組織のほうへ戻ることになっているから、アレハレ単独ということにはなる。これも、『吉祥富貴』から招聘されてしまったら、ティエリアも再度、降りる可能性もあるので決定ではない。
「じゃあ、店の用事が入ったら、うちに戻ってくるんだよな? 」
「そうなるだろうな。今年は、ティエリアは不参加になるから、俺らだけでも出ないとマズイだろう。」
じゃあさ、と、ニールが言いかけたら背後から襟首を捕まれた。黒猫が起きたらしい。
「何をしている? 」
「え? 目が覚めたから、ハレルヤと話してただけだ。おまえさん、ちゃんと部屋に帰れよ? こんなところで寝てたら疲れが取れないだろ? 」
「あんたが寝られなくなるだろ? いいから、寝ろ。」
ぐいっと背後に引き摺られて、ベッドの奥へ横にされる。体格的には、ニールのほうが大きいのだが、筋肉がついた黒猫だと、それぐらいは軽いもんらしい。
「あのさ、刹那さん。」
「話は起きてからだ。寝かせろ。」
ぎゅっと抱き込まれてしまうと、ニールも動けない。ハレルヤは、クスクスと笑って、「おやすみ。」 と、声をかけて沈黙した。確かに、身体は重いので横になると、ほっとする。ラッセから、トランザムバーストを浴びた後の経過も聞いたが、やはり、すぐに回復するものではなかった。戦闘終結後、一刻も早く、その場所を離れなければならなかったから、身体を騙し騙し、トレミーの操船をしたのだが、さすがに基地に帰ったら、ラッセもダウンしたとのことだ。スメラギの指示で再生槽に叩き込まれて、二週間ばかりはかかったし、その後、地上に降りて療養もしたとのことだ。
・・・・ということは、俺の場合も同じことなんだろうな・・・・・
「降りて来たら、派手にやろうな? ティエリア。欲しいものも考えておけ。」
ニールは、そう言って、一口だけアイスケーキを口にした。さすがに、まだ食べられるほどではないらしく、残りは刹那の前に移動させている。
「そういうことなら、シャンパンよね。ちょっと待ってて。」
スメラギのほうは、そういうことなら秘蔵のがあるのよ、と、自室に走り、隠していたシャンパンを持って来た。飲める人間だけが、それで乾杯だ。フェルトとニールは、ジュースで一緒に相伴する。
トレミーの食堂で賑やかにお誕生日会なんぞやっていたが、ニールが眠気に負けたので、お開きになった。ロックオンの部屋で、ちょっと横にしておけばいいだろう、と、運んでハイネに連絡を入れておいた。
で、ここで問題が発生したのだが、それもなんとか話し合いで解決したので、マイスター組も休息することになった。
ニールが、ぐっすりと眠って目を覚ますと、ちゃんとベッドの上だった。さすがに制服のまんまはキツイだろうと、実弟が上着やらベルトやらは脱がしたり外したりしてくれたので、気持ち良く眠った。で、傍らが暖かいので、そちらに目を向けて、ちょっと絶句する。黒猫が、ぴったりと張り付いていたからだ。
・・・・あれ?・・・・
一人用のベッドだというのに、黒猫は横に眠っている。かなり窮屈だろうに熟睡している様子だ。明かりは消えているが、真っ暗ではない。薄暗いが、照明はついていた。自分の寝ているベッドの脇に、カタマリが二つある。よく目を凝らすと人の頭が二つくっついている。
・・・・え? ・・・・
体格からすれば、アレルヤとティエリアだろう。床に座り込むようにして眠っているらしい。何をやらかしてんだか、と、ニールが起き上がる。すると、足元に、ひとつのカタマリがあった。たぶん、それはライルのものだろう。全員が、毛布を被って寝ているらしい。どうやら、マイスター組総出で、ここで寝るということになったのだろう。いつぞや、アレルヤがマイスター組の決まりだとか言ってたから、実行したのだろうが、こんなところで窮屈に寝なくてもいいだろうに、と、ニールは思う。とりあえず、ちゃんと各人を部屋に戻して休ませようと、ベッドを降りたら、アレルヤが目を覚ました。
「まだ、早いよ? ニール。」
「アレルヤ、ちゃんと部屋で寝ろよ。そんな窮屈なことしてたら、疲れが取れないだろ? 」
「でも、なんか心配だしさ。・・・もうちょっと寝てれば? 」
「だから、ティエリアを連れて部屋に帰れ。俺、ライルを起こすから。」
「みんな、気が抜けてるんだよ。だから、寝かせておいてあげてよ。ニールと一緒の方が、よく寝られるんだから、問題ないって。」
そう、この問題が発生して、誰がニールと寝るかで揉めた。刹那は、自分が隣りに寝るのが一番だと譲らないし、ティエリアは、それでは不公平だと怒るし、どっちも折り合いをつけるつもりはないから、結果として、こうなった。とりあえず、同室ならよかろう、と、全員が雑魚寝なんてことになったらしい。ロックオンは呆れていたが、一人だけ別に寝るのも寂しかったのか、文句を吐きつつ、そこで休んだとのことだ。それを聞いて、ニールも呆れた。やれやれと、ベッドの端に座り込む。
「もう、んなことしてる場合か? 」
「してる場合っていうか、みんな、ニールのところに居たいっていうのが、本当の理由なんだと思うよ。・・・・そう言ってる、僕やハレルヤだって、やっぱり、側がいいなって思っちゃうんだ。」
「そりゃ、ありがとさん。でも、ちゃんと休まないと身体がな。」
「こんなぐらい、どうってことない。コクピットで寝るより、ずっと楽じゃない? 気分は? 」
「・・・んー、ちょっと身体が重いなあって感じかな。」
「ほら、もう少し寝たほうがいいんだよ。」
なんとなく、身体は重い。気圧変化に対応が利かないということは、重力にも対応はできていないのだろう。低重力やら人工重力やらを移動しているから、身体が対応できなくて鈍くなっているのだと、ニールにも解る。たかだか、数時間で、これだということは、確かに宇宙で活動は無理だ。
「おい、じじい。ぶつくさ言ってないで寝ろ。あんま喋ってると、五月蝿いのが目を覚ます。」
アレルヤではなく、ハレルヤが声をかけてくる。アレルヤがティエリアの凭れかかった身体を支えているので動けないから、口での注意しかできないらしい。
「なあ、ハレルヤ。おまえら、二月の予定は、どうなってるんだ? 」
「今のところ、フリーだ。たぶん、末のほうは、店の特別ミッションが入るだろうから空けてある。それがなかったら、ティエリアが行けないところへ行こうかって、アレルヤと考えてるとこだ。」
二月の末は、毎年、『吉祥富貴』の特別ミッションがある。指名が、アレハレとティエリアというのが定番のお客様だから、今年も、そうなるだろう、と、予想はしていた。ただし、今年はティエリアが、直近に組織のほうへ戻ることになっているから、アレハレ単独ということにはなる。これも、『吉祥富貴』から招聘されてしまったら、ティエリアも再度、降りる可能性もあるので決定ではない。
「じゃあ、店の用事が入ったら、うちに戻ってくるんだよな? 」
「そうなるだろうな。今年は、ティエリアは不参加になるから、俺らだけでも出ないとマズイだろう。」
じゃあさ、と、ニールが言いかけたら背後から襟首を捕まれた。黒猫が起きたらしい。
「何をしている? 」
「え? 目が覚めたから、ハレルヤと話してただけだ。おまえさん、ちゃんと部屋に帰れよ? こんなところで寝てたら疲れが取れないだろ? 」
「あんたが寝られなくなるだろ? いいから、寝ろ。」
ぐいっと背後に引き摺られて、ベッドの奥へ横にされる。体格的には、ニールのほうが大きいのだが、筋肉がついた黒猫だと、それぐらいは軽いもんらしい。
「あのさ、刹那さん。」
「話は起きてからだ。寝かせろ。」
ぎゅっと抱き込まれてしまうと、ニールも動けない。ハレルヤは、クスクスと笑って、「おやすみ。」 と、声をかけて沈黙した。確かに、身体は重いので横になると、ほっとする。ラッセから、トランザムバーストを浴びた後の経過も聞いたが、やはり、すぐに回復するものではなかった。戦闘終結後、一刻も早く、その場所を離れなければならなかったから、身体を騙し騙し、トレミーの操船をしたのだが、さすがに基地に帰ったら、ラッセもダウンしたとのことだ。スメラギの指示で再生槽に叩き込まれて、二週間ばかりはかかったし、その後、地上に降りて療養もしたとのことだ。
・・・・ということは、俺の場合も同じことなんだろうな・・・・・
作品名:こらぼでほすと 解除13 作家名:篠義