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こらぼでほすと 解除13

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 ティエリアが座ったままのアレルヤに近付いて、その頭を抱き締める。旅行の準備は完璧だ。今回は、初めてだから、あまり無茶な日程を組まなかったし、滞在するのも都市部を選んだ。何かあったら、すぐに組織へ戻れるように、用心している。初めての旅の最後の日は決まっているが、そこまでの予定は、あくまで予定だ。どんなことが待っているのか、ティエリアもアレルヤも楽しみで仕方がない。




 ニールは、民間船の医療ポッドで目を覚ました。側には、ハイネが陣取っている。トランザムバーストの空間で、刹那と話はしたが、大したことではない。どちらかといえば、ぼんやりと、お互いの過去を眺めていただけだった。これといって分かり合う必要が、すでにないから、そんなことになる。
「おはよーさん、ママニャン。」
「朝なのか? 」
「いや、もう夜って時間だな。」
「終わったのか? 」
「ああ、これにて治療は終了。検査結果の解析は、まだだけど。問題はないだろうって、ドクターも言ってた。」
 一度目で、遺伝子情報の異常は検出されていないから、まあ、問題はないだろう、と、ドクターも太鼓判を押した。一応、念のため、同じようにサンプリングしたデータの解析はしているが緊迫したものではない。
 やれやれ、と、ニールも起き上がる。まだ、組織の制服のままだったが、また靴がない。
「俺、着替えとか全然ないのか? ハイネ。」
「靴はない。パジャマと検査着はあるんだけど、うっかりしてた。」
 うっかりというか、なんというかなのだが、ハイネも着替えのことなんか考えていなかった。予備のパジャマは用意してあったが、履物関係なんて用意することすら忘れていたのだ。たぶん、エターナルには用意があっただろうが、時間が押していたから、それらの確認をしなかった。
「まあ、いいけどさ。・・・あいつらは? 」
「本日の業務をこなしてるはずだ。整備は終わってると思う。・・・あのな、ママニャン。おまえさん、寝る時は医療ポッドな? 」
 とりあえず、身体の休息をさせるために、ドクターと相談して、そういうことに決めた。残り三日ばかりだが、ドックやらトレミーやらを散歩するだろうから、睡眠時間に体調の調整をさせることにしたのだ。
「そうなるよなあ。・・・・俺も、そのほうがいいと思う。動けなさ加減が酷くて、びっくりした。」
 ニールのほうも、それには納得だ。数時間、トレミーへ出かけただけで、身体が重いし、低重力では、うまく動けないなんてことになっていると、当人でも、体調の悪さは自覚できる。
「しょうがないだろう。おまえさん、すでに地上に身体が馴染んでるし、ダウンしてたからな。宇宙で動けるわけがない。」
「先は長いなあ。まずは体力回復ってとこか。」
「そうだな。でも、来年の春ぐらいまでは、療養生活だからな。細胞異常が完全に払拭されるまでは、無茶なことはできねぇーぞ。」
「それ、本宅に軟禁か? 」
「いや、そこまでじゃないだろう。お里と寺の往復になるんじゃねぇーのか? どうせ、年末年始は里と本宅か別荘だろ? 」
「うん、そういう予定だったな。・・・なんか治ったっていう実感がない。」
「目は見えるようになったんだろ? 後は、徐々に戻るから、働きすぎるなよ。」
「わかってるよ。・・・・これじゃあ、復帰なんて夢のまた夢だって、よくわかった。」
「復帰? せつニャンに叩きのめされるぞ? 」
 ハイネは大笑いで、ニールの肩をバンバンと叩く。もっと簡単に戻れると思っていたのだろう。そんな簡単なものではない。まったくゼロの状態に戻っているのだ。そこから、またマイスターになろうと思ったら、組織に勧誘されたところから始めることになる。地上施設での訓練から宇宙での訓練、更に付け加えて、射撃の訓練も付け足される。ニールが、以前に身につけていた力量まで戻ろうと思ったら、五年近くかかるだろう。いや、肉体的には、もう少しかかるのかもしれない。
「反対はされるだろうけど、そこは実力で、どうにかできると思ってたんだけどなあ。・・・・ほんと、寺のフルタイム女房ぐらいが関の山だな。」
「何が、関の山だ。それこそが、ママニャンの最高の居場所だろ? ・・・なんなら、俺とプラントに駆け落ちでもするか? 」
「三蔵さんに殺される覚悟ができたのか? ハイネ。」
「おまえら、全員、その意見か? 」
「だって、あの人に勝たないと、俺の所有権って確保は難しいぞ? 」
「それって、ママニャンも三蔵さんの傍がいいってことか? 」
 ニールの言葉の意味を噛み砕くと、ニール自身も、その所有権は坊主のものだと思っているということに他ならない。
「いいって言うか、楽なんだよ。お互い、気楽な独り身だしな。これといって気を遣う必要もないからさ。ハイネだって、そうだろ? 」
 まあ、有体に言うと、ハイネだって寺での同居生活は気楽なのだ。最低限のルールさえ守れば、お互い、気楽に好きなように暮らせる。恋愛感情がないから、独占欲なんてものも発生しないし、適度にスキンシップや会話も楽しめるのだ。
「そうなんだよな。気楽でいいってのは、同意する。」
「だいたい、俺なんか嫁にすると、ウザイと思うぜ? うちの亭主は、よくも俺なんかを同居させてくれるって感心してんだから。」
 ニールにしてみると、坊主は、グダグダする自分の相手を、飄々とこなしていることに感心する。いい加減、面倒くさいと思わないのかな、と、思うのだが、坊主は、ちっとも、そういう素振りがない。尋ねても、「これぐらい、どうってこともねぇーぞ。」 と、おっしゃる。だから、気楽に愚痴も吐いて、坊主相手にグダグダしていられるのだ。普通は、嫌気が差すだろうと思う。たぶん、ハイネは二人だけで同居なんてことになったら、そのうち帰宅拒否するだろう、と、予想している。
「ウザイ? 別に、それはそれで楽しいから聞かせてくれよ? おまえ、俺には、あんま吐かないぜ? それって間男としては、ちと悲しいんだ。」
「物好きだな? 」
「そうか? ママニャンのグダグダなんて可愛いもんだ。トダカさんが、可愛い可愛いって言うのは、そういうとこだろ? 」
 ニールの壊れた部分に最初に気付いたのは、じじいーずだ。頼れる相手でありたい、と、思っているし、実際にも、そういうアプローチをしている。独りじゃないんだと気付いて欲しいから、そうしてきた。坊主が、先に、その牙城を崩した。それは、ハイネとしては、少し悔しい気もする。
作品名:こらぼでほすと 解除13 作家名:篠義