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Ib ~とある美術館での物語(6)~

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「そうね。・・・じゃ、さようなら。そして、ありがとう。」

「?どうしてありがとうなんだ?」

不思議そうにそいつはそう言った。

もう体のほとんどのモヤは消えていて、反対側が透けて見えるぐらいだった。

「だって、あなたがわたしをここに連れてこなかったらわたしはイヴ達に会えなかったかもしれないでしょ?だから」

「・・・そうか」

「そうよ」

そこまで言うとわたしは絵に再び向き直った。

「・・・ここから出られても、ここからでたらここでの記憶はなくなるぞ?それでもいいのか?」

「何度も言わせないで、わたしはここから出る。そして、それができるかどうか今試す!」

そう言って私は絵に向かって走り、絵に飛び込んだ。

メアリーが絵に飛び込むと同時にまた絵が光りだし、光が収まると元通り絵には額縁があった。

「ふん、間に合ったか。・・・やれやれ、私もここまでか」

作品の意志はため息をつきながらそう言った。

「・・・ありがとう。か、・・・悪くない」

言い終わるとモヤは完全になくなった。

モヤがなくなると同時に刺さっていたパレットナイフが床に落ちて「カツンッ」と乾いた音だけが響いた。