Ib ~とある美術館での物語(6)~
ふとわたしはあることを思い黒いモヤに視線を向けた。
「そういえば、わたしをここへ連れてきたのってあなた?」
「・・・そうだ。お前もそしてあの二人も私が連れてきた」
「なぜ?」
「理由は簡単だ。ここの仲間を増やすため、それだけだ」
「そう。・・・で、これからも懲りずに誰か連れてくるつもり」
「その通り・・・と言いたいが、お前の一撃が大きかったらしい。もう無理だろう」
見るとそいつの体から少しずつモヤが離れていった。
「やがて私は消えるだろうな」
「そう。・・・最後にあなたの名前は?」
「私に名前はない。私は作品の意志の固まりだからな」
「意志の?」
「ああ、だが全ての作品のではない。一部の、しかし、大きな意志が私を創り出した」
「それがあなた」
「そうだ。『仲間を増やす』その思いが私だ」
「・・・」
「さて、そろそろ時間だ。あっちの世界とこっちの世界が塞がるぞ。まぁ、お前が残りたいなら私は止めないが」
「悪いけどわたしは行くわ、私の両親。それにイヴやギャリーに会いたいから」
「そうか・・・。なら、試してみろ」
作品名:Ib ~とある美術館での物語(6)~ 作家名:エグゼター