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初音ミクの崩壊~0と1の狭間で~

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序章:邂逅



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 今年の夏は暑い…。

 ひたすら暑い…。

 この夏休みの日々、俺がやったことと言えば、部屋でテレビを見るか、ゲームをするか、だ。

 クラスメートからは、「海水浴に行こう」だの「釣りに行こう」だの誘われちゃぁいるが、俺は自分の部屋から出るつもりはない。

 誤解しないで欲しいのは、俺は別に引きこもりの類いではないと言うことだ。

 これを読んでる人にも分かるだろう?何度も言うが、今年の夏は暑い…。クーラーを効かせた部屋からは一歩だって出たくないと思ってるやつは、俺だけじゃないはずだ。



 それなのに俺は断れなかった。
 何を?山に避暑キャンプに行く誘いを、だ。

 学生には勉強という仕事がある。らしい。

 一円の給料も出ない仕事なんてすぐにも辞表を叩きつけてやりたいところだが、義務教育なる期間が続いている間はそうもいかんのだ。

 もちろんそれはこの夏休みも例外ではなく、辞書ほどの厚みのある宿題が出された。それが10日ほど前の事だ。

 今年の夏は暑い…。この暑さはいかなるやる気も奪い去っていく強力な魔法だと思う。

 もちろん俺は、この宿題なる物を自力で片付けるような愚かな真似はしない。俺には秀才の友人…悪友がいるのだ。

 彼の名前は沖方豊。同じ中学の同じクラスだ。その男から、このキャンプに誘われたのだ。



 いきさつはこうだ。

 携帯の着信が鳴った。
「はい、こちら時川。」
「やあ!僕だよ、僕」
 この声は豊か。
「あぁ、これが噂のオレオレ詐欺か」
 まずは適当にいなしてみる。
「違うっての!!」
「で、どうした?豊じゃないなら切るが?」
「なんだよ〜、僕の声を忘れちゃったんじゃないかと、悲しくなっちゃったじゃないかぁ〜」
「てめえの声など、忘れたくても忘れられんわ…。それと、語尾をフニャフニャ伸ばすな。気持ち悪い。…で?用件は?」
「ふむ、どうせ君は今年も部屋に引きこもっているのだろう?しかし宿題は未だに手を付けていない」

 流石に親しい付き合いなだけはある。俺の毎年のパターンは熟知している。

「あぁ、そうだった。豊、悪いが宿題を俺ん家まで持ってきてくれ」
「残念ながら、それはできん」
「…なぜ?」
「どうしても宿題を写させろ、と言うのなら、明後日から一緒にキャンプに来い。そこで宿題を渡す。」
 また面倒な交換条件だな…
「分かった、宿題の件は別の奴に頼むわ。んじゃ」

 何が悲しくてクーラーのついてないような所に泊まりにいかにゃならんのだ…

「まてまて、頼むから来てくれ。このままだと龍輔と二人きりになっちゃうんだ。」
 慌てて会話を繋げる豊に、俺はそっけなく対応。
「いいじゃねぇか、二人きりでナイショのお泊まり会でもしてこい。んじゃな」
 俺が電話を切ろうとすると。
「バスの少女の事、皆にばらすぞ〜」
 こいつ…卑怯な…。
「わぁったよ…。行きゃいいんだろ…。そのキャンプの詳細は?」



 という流れだ。
 バスの少女については聞かないで欲しい…。
 簡単に言えば弱味を握られているのだ。豊に。

 まぁ、キャンプそのものは楽しかったと言えなくもない。キャンプ地も渓谷で、気温は寒いくらいあった。たまには、緑に囲まれて一日を過ごすのも、悪くないかもしれない。…柄でもねぇが。

 そしてそのキャンプで、俺の人生が大きく変わることになる。

 それは帰り道での出来事。





「天気、けっこうやばくなってきたかな?」
 愛車のwagonRを運転しながら、龍輔がつぶやく。
「だなぁ、早めに切り上げて良かったかもしれないな」
 豊も窓の外の曇天を眺めて言った。

 俺達は、つい先程キャンプ地を後にして、帰路についている。
 ちなみに、今、車を運転しているのは、野田龍輔。
 今年19歳になる近所の兄さんで、小学校の登校班の時から、色々面倒を見てくれる、自称自由人(フリーター)だ。

「昼頃には一雨来そうだな…」
 俺も外を眺めながら、相づちを打った。
 自動車は、曲がりくねった細い山道を、器用におりていく。

「よし、こういうジメっとした日に丁度良い、怖い話をしよう」

 また豊がろくでもないことを考え付く。

 俺は、極力話を耳に入れないよう、窓の外の景色に目を向ける。怖い話という物は、俺はどうも好きになれない。
 怖がりというわけでも、臆病という訳でもないと思うが、好きになれない物は好きになれないのだ。

 窓の外の山肌に幾分の変化が現れる。ふもとに近づいたのではない。家電やらタイヤやら何かの部品やらが山積みになっているのだ。いわゆる、産業廃棄物というやつだろう。

「…そして、夜中に冷蔵庫から異常音がすると、その後ろから…女性の手が…」
 豊の話はまだ続いている。全く、飽きない…やつ…だ…?

 俺の思考が一瞬ショートする。

 外に見える産業廃棄物の中に、冷蔵庫があり、その後ろから…手!?

 いやいや。豊の話に幻でも見たのか。頭を振ってもう一度見てみる。
 見間違いに違いない。そう信じて。
 それでも、やはり、手のような物が見える…。

「龍輔!悪ぃ、車を止めてくれ!」
 別に、気にしなくても良いのかもしれない。あのような場所に、人の手があるはずはなく、確認しても、無駄骨に決まっているのだから。

 それでも、今はっきりさせておかないと、それこそ毎晩うなされそうだ。

「どうした!?」
 車を道端によせながら、龍輔が訊いてくる。
「ん〜?何かあったの?」
 豊も不思議そうに訊いてくるが、今は説明している余裕はない。
「ちょっと。な」

 車を降り、ガードレールを飛び越え、半ば滑るように、緩やかな斜面をかけおりる。
 ゴミの山の麓に着いた。

「でけぇな…」

 まさしくゴミの山…。
 冷蔵庫あり洗濯機ありタイヤありetc...
 異臭まで漂ってくる。

「何かめぼしい物でもあったのかよー?」
 上から豊と龍輔が覗き込んで言う。
 ゴミの山に唖然としている場合じゃなかった…。
「確か、腕の様なものが見えたのは…」
記憶をたよりに探してみる。

「おい!あそこ、人が倒れてないか!?腕みたいなのが見えるぞ!!」
 龍輔にも見えたらしい。
「どこ?」
 輔に訊いてみる。上から場所を教えてもらった方が早い。
「あ、あそこだ!ちょい上の冷蔵庫の近く!!まってろ、僕も行く」
 豊も斜面を滑り降りてくる。

「こっちだ!」
 豊がゴミの山を登っていく。俺も続くが、足場が以外と悪い。両手も使ってよじ登っていくと…

 いた。豊の足元に確かに人の腕がある。ここからではよく見えないが、恐らく体全体が、冷蔵庫と洗濯機の間にはさまれているようだ。

「拓馬!来てくれ!!女の子だ!埋もれてる!!」
 急いで豊の元に行こうとするが。
「っとと…あ、あぶっ!?」
 足元が悪いことを忘れていた…。
 何とかたどり着く。

 豊は必死に腕を引っ張っている。…訂正。
 ここに来てようやく全体が見えた。豊の言う通り、女の子が埋もれていた。
 いや、挟まれている。の方が正解か。

「拓馬!手を貸して!」
「あぁ!!」