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初音ミクの崩壊~0と1の狭間で~

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 二人で引き上げようとするが、びくともしない。何か引っ掛かっているのか!?
 いや、そもそも…生きて…いるの、か…?
「君、君!?聞こえるか!?」

 豊が半ば叫ぶように聞く。

 反応は…無い。

「何か引っ掛かってるのかもしれん。ちょっと待て。この洗濯機を下に蹴り落とすぞ!」
「あ、あぁ。そうだな」
 俺の提案で、少女を挟んでいる洗濯機を蹴り落とす。

「「せぇーの!」」

 足で蹴り出すように、ゆっくりと、ゴミの山から洗濯機を押し出していく。
 そして…

 俺たちは無重力体験をした…。

 …ジェンガ崩しって、こんな感じだったっけ?

 ふとそんな事を考えていた。



7/31 02 初音ミク

私#▽⇒‰⌒えδのχё∵?

 私の▽が‰⌒えるのχёか?

 私の▽が‰こえるのχすか?

 私の声が聞こえるのですか?






システム リカバリ
メインメモリ フォ-マット...OK
フラッシュメモリ フォ-マット...OK
メモリスロット オールグリーン

スタンドバイ メモリ...



HEARTシステム ウェイクアップ

ワーニング
バッテリ ザンリョウ ガ キケンイキ デス

ワーニング
ラジエータ スイイキ ガ キケンイキ デス

システム ヲ セイゲン シテノ キドウ ニ キリカエマス

エラー
エラー ナンバー #000062
ヨキセヌ プログラム ガ ジッコウ サレヨウ ト シテイマス

プログラム チェック
...
...
...

0X0061A3
アドレスチ ガ フセイ デス
インスウ ヲ サンショウ デキマセンデシタ

システム ヲ サイキドウ シマス

ヨキセヌ プログラム ガ ジッコウ サレヨウ ト シテイマス

コンディション レッド...
コンディション レッド...

システム ヲ キョウセイシュウリョウ シマス

ヨキセヌ プログラム ガ ジッコウ サレヨウ ト シテイマス

ヨ#セヌ プ"&~ラム :` \='コ> サ%ヨ| ト _`イ{"

...
...
...


システム ヲ サイショウ デンリョク デ キドウ シマス

システム ヲ イチブ セイゲン シマス

...
...
...



7/31 03

いや、死ぬかと思った。
まじで、がちで、本気で…
走馬灯が駆け巡ったからな…

幸い、俺に怪我はない。全身が痛いが…
残念なが…いや、幸い、豊にも怪我はない。
そして、女の子は…というと…

「もしもし?聞こえるか?」
豊と龍輔が必死に呼び掛けている。
ったく、俺は放置かよ…
「その子、生きてんのか?」
俺が訊いてみると。
「おぉ、拓馬が復活した!?」
豊を無視する。
「大丈夫か?一、二分は気絶してたぞ?」
龍輔が覗き込んでくる。
「そんなにか?一瞬意識が飛んだくらいかと思ってたんだが…と、その子は大丈夫なのか?」
「あぁ、さっき豊が話しかけたとき、わずかに反応があった」
龍輔の言葉に胸を撫で下ろす。少なくとも、祟られる事は無さそうだ。
「そうか、そりゃ良かった…でもなんであんなところに?」
「いや、僕に訊かれてもなぁ…。とりあえずその子を病院にでも運んだ方が良いと思うんだけど?どのみちここに長居はしたくないぞ?」
豊が、空を顎でしゃくりながら言った。
つられて見ると、今にも大雨が来そうな雲が垂れ込めている。
「とりあえず、車に運ぼう」
龍輔の提案に、俺は龍輔を見つめる。
豊も見つめる。
「…」
「…」
「…分かったよ、俺が運べば良いんだろ?」
ご名答。
正直、人1人を抱えて、この斜面を登りたくはない。
龍輔が少女を抱え上げようとする、が…
「よっ…とと?よいしょ…っつ…」
持ち上がらないらしい。
俺と豊は視線で声援を送る。
「ちょ、手伝ってくれぃ!」
涙目の龍輔に駆け寄る。
「ったく、兄さん。頼みますよ?」
「いや、本当、重いんだって!」
「レディに向かって失礼な。彼女、起きてたらひっぱ叩かれますよ?」

俺は少女の脇に屈み込んで、持ち上げよう…と…する…が…。
脇で雑談している豊に言う。
「や、龍輔の言う通り、こいつ、本当に重い。」
見た限りほんの少女…なんだが…全身に鉛でも入れてんだろうか…

「本当に…重いな…」
豊も分かってくれたようだ。
「ん!?まずい、急ごう。降ってきたぞ」
龍輔の言う通り、ポツリ、ポツリと雫が落ちてきた。
「しゃーない。3人で抱えるか。豊、両脇を抱えてくれ。拓馬は、両足」
龍輔は腰を抱え上げる。
3人がかりでようやく持ち上がった。
「な、なぁ。」
よろよろと斜面を登りながら、俺は訊いた。
「お、女ってのは、こうも、お、重いのか?」
「こ、これは、規格外、だろう…」
龍輔も、喘ぎながら言った。
豊は…少女の左腕を凝視し、無言。
「ゆ、豊さん?ち、力、入れてますかぁ?」
「…」
無言。
少女の左腕に何かあるのだろうか。覗き込もうとして、やめた。
視線がヤバイのだ。
つまり、俺は少女の両足を抱えていて、なおかつ、斜面を登っているのだ。視線を下げると、まぁ、少女のミニスカートが…というわけであり、色々とまずいのだ、この構図は…。

そんなこんだで、何とか車まで到着。

後部座席に少女を寝かせ、俺も後部座席に乗りこむ。豊は助手席。
「濡れちまったなぁ、麓の病院まで飛ばしていくぞ」
龍輔が、エンジンをかけながら言う。

俺は丁度少女を膝枕する形。
いや、改まって見ると、それなりに…かなり可愛い少女だ。髪の毛が雨に濡れ、艶やかな…と、何を解説しているのだろう。俺は。

ふと気になって、少女の左腕を見てみる。
「OI?いや、01、か?」
タトゥーだろうか、文字が書いてある。かすれていて、よく読めない。
「vo…vocal、か?」
バンドでもしていたのだろう。そう考えていた時。
「ぅ…」
少女が、動いた。
「大丈夫か!?今、病院に連れてってやるから!もうちょっと辛抱してろ」
俺の呼び掛けに、少女の唇も動いた。
「…い」
かすれ声で、上手く聞き取れない。
耳を少女の口元まで近付ける。
「い…みな…い」
いみない…意味無い、か!?
「なに言ってんだ!もうすぐ着くから!!」
必死に訴えかける。
「起きたのか?」
ルームミラーの龍輔と目があった。
「あぁ、何とか話せるみたいだ」
また少女が口を開いた。
「み…ず…」
水か!?
「水だな?待ってろ」
リュックサックを漁る。確か、山の湧水をペットボトルに汲んだはず…あった。が、2リットルペットボトルだった。
「起きれるか?」
少女を支えながら上半身を起こしてやる。
「飲めるか?」
ペットボトルを差し出す。
500ミリリットルのペットボトルに汲んどきゃ良かった、と今さら後悔。
少女はペットボトルをラッパ飲み。もとい、イッキ飲み。
…あっという間に2リットルが空に…
「そんなにイッキ飲みして大丈夫か?」
少女は俺の問いには答えず、力無く俺に倒れ込んできた。
「とと…大丈夫かよ。龍輔、病院まであとどのくらい?」
「街が見えてきた、あと十分くらいだ」
「よし、もうちょいだからな」
俺は励ますように言ったが、
「意味…無い…」
かすれ声でそう言うだけだった。