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こらぼでほすと 解除17

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エターナルも予定通りにプラントは離れた。そこには、ちゃっかりとリジェネも同乗している。ハイネたちとのランデブー地点までは、エターナルも安全速度と言える速度で航行する。
「ハイネからの通信は? 」
 ブリッジに顔を出した歌姫様が、艦長席で指揮している虎に尋ねる。無事に治療は終わったと報告は受けているが、それでも気になるものは気になる。
「あちらも予定通りに出航している。オーナー、慌てたところで、ランデブーポイントまでは、まだ十数時間はかかるんだが? 」
「そうですか。それなら、よろしいのですが。」
「とりあえず、その疲れた顔は、よろしくない。まずは休息を摂られることを推奨しましょう。」
 スケジュールはギリギリまで詰め込まれていた。だから、出発時間まで、歌姫様も忙しく分刻みで動いていたのだ。三日間連続のコンサートに、その後の公式な予定となると、かなり気も遣うし疲れもする。身内だけだから、気を抜いているから、歌姫様も疲れた顔だ。
「まあ、そんなにですか? 」
「俺が、わかる程度にですが。 ママニャンにはバレるでしょうな。」
「それは、マズイですね。では、休ませていただきます。」
 行きは、ずっと冷凍処理された状態だったが、帰りは、一時、エターナルで目を覚まさせる予定だ。成層圏に到達する前に、再度、冷凍処理を施してシャトルで降下する。そこからは、特区の本宅まで行きと同じ行程で戻ることになっている。歌姫様が、ぐったりしていたら、親猫は心配するだろう。外でなら、歌姫様も気張っているが、親猫の前だと気を抜いている。だから、顔色が悪いなんてのは、絶対にバレてしまう。
 それはそれは、と、歌姫様も急いでブリッジは退出した。まずは、栄養補給と休息だ。




 ハイネは予定地点まで間近の場所で、一端、民間船を止めた。加速しているエターナルに合流するには、その速度に同調して格納してもらわなければならない。それも、各国のレーダーレンジの範囲に入る前に、確実にエターナルの内部に入らなければならないから、どこかのレーダーレンジに入るギリギリに停船した。ここで、エターナルを捕捉したら加速する。
「ところで、どこを予定しているんだ? 世界放浪の旅は? 」
 エターナルを捕捉すれば警告音が鳴る、それまでは、暇だから、ハイネもアレルヤに雑談を持ちかける。
「欧州のほうだよ、ハイネ。古い建築物や景色を見てこようと思っているんだ。」
「そうだな。欧州なら、都市部に、そういうものが多いか。でも、アレルヤ、どうせなら特区の西も予定すればいいのに。」
「それはね、いずれ、ニールが動けるようになったら一緒に行こうかな? って思ってるんだ。独特の建築物や文化にも興味はあるよ? 」
 アレルヤとティエリアが、自分たちで調べて条件に見合うものが多い場所を選定した。欧州には、マリーが居るので、そちらにも顔を出したいというのもあった。一度、二人でマリーと顔合わせをしておこうと思ったからだ。特区のものも心惹かれたが、そこは、ニールも行けるだろうから、後回しにした。再々始動までの時間は、かなりあるだろうから、ニールの体調が整ったら、誘って出かけることにしたのだ。
「なるほど、そりゃ、ママニャンも喜ぶだろう。来年の夏以降にしてくれ。」
「回復させるだけで一年もかかるのか? ハイネ。」
「細胞異常自体は、半年でクリアーできるんだけどな。それから、本格的に体力回復させるから、そんなとこだと思う。・・・・おまえだって、あのデータ見て、それぐらいは予想できるだろ? ティエリア。」
「よく生きているな、と、感心した。」
 実際のニールのカルテを把握しているのはティエリアだ。ここ数ヶ月のデータを見せられて、この状態で生きているのか、と、驚いた。ラッセのデータと比較しても、かなり酷い状態だったのだが、どういう裏技なのか、漢方薬なるもので、ギリギリのラインで踏み止まっていた。
「ここんとこは、みんな、気をつけてたからな。当人も、なるべく身体は休ませるようにしてたほどだ。」
「それについては感謝する。だが、今後、体力の回復はいいとして、余計なことはさせないでもらいたい。」
「どれが余計なことの範疇だ? 」
「マイスターに戻れる能力のことだ。護身術程度の体術は構わないが、それ以上には必要ではない。さらに、射撃については一切、練習もさせないでもらいたい。そのことだ。」
 それらが再び、身についたら、無理矢理にでも戻ってきそうな気がする。たぶん、ニールは同じことをするだろう。それだけは避けたいのだ。過去の、あんな戦い方をされたら、とてもではないが、ティエリアも助けられる気がしない。
「組織には戻さないって、スメラギさんとも確認はした。せつニャンも、ママニャンに、そう言ってた。戻れないことは理解してるはずだ。」
「『吉祥富貴』での、ニールの担当は変えないのか? 」
「変えないだろうな。ママニャンの担当は、『日常』だ。その担当できるのは、うちでもママニャンだけだからな。」
「僕たちも、それには賛成だよ、ハイネ。ニールは、お寺で待っててくれると嬉しい。」
 マイスターには戻らないで欲しい、というのは、アレハレも願っていることだ。すでに、ロックオン・ストラトスは存在する。もちろん、MSは第三世代の初期から、全て再生させているから搭乗出来る機体もあるが、それでも戦いの場に揃って行きたい、とは思わなくなった。どちらかといえば、休息の場にこそ、ニールが欲しいと思う。たぶん、『吉祥富貴』でも、同じ考えなのだろう。おかえり、と、迎えてくれる場所は、アレハレにとっても、ニールの場所だけだ。

 ピピッ

 お寺での風景を思い出していたら、警告音だ。おいでなすった、と、ハイネが船を進ませる。指定宙域に侵入したら、エターナルは速度を落とす。その間に、民間船を格納し、速度を上げて指定宙域を出る。レーダーから外れている時間は、そうやって調整すれば、どこも不審には思わない。
「エターナル、捕捉。」
「よし、じゃあ、合流するぞ。誘導ビーコンが出たら、こっちに回せ。同調する。」
 矢継ぎ早に、ハイネも指示を出しつつ、操縦桿を握る。大して難しいことではない。タイミングの問題だけだ。エターナルに速度を合わせたら、誘導ビーコンに乗せて、そのまま格納庫へ飛び込む。





 医療ポッドで目を覚ますのも慣れたものだ。次は、エターナルだ、と、言われていたから、周囲の景色が一変していても、ニールのほうも慌てない。やれやれと起き上がったら、歌姫様が抱きついてきた。
「おかえりなさいませ、ママ。」
「ただいま、ラクス。」
 その背後から、ドクターが顔を出して、現在の体調と今後の予定は報せてくれた。数時間したら、今度は冷凍処理をするというものだ。それから、アレルヤとティエリアが、いつものように身体を擦ったりマッサージをしてくれる。歌姫様も、それに加わっている。
「コンサート、見せてもらったよ、ラクス。」
「あら、見てくださったんですか? 」
「ああ、ティエリアがデータを取って来てくれたからリハーサルと三夜連続鑑賞した。やっぱ、おまえさんの歌は凄いな? フェルトなんか途中で感動して泣いてたぜ。」
作品名:こらぼでほすと 解除17 作家名:篠義