こらぼでほすと 解除17
「うふふふ・・・お褒めに預かり光栄です。連続で来られる方たちのために趣向も変えておりました。」
「ああ、飽きなかった。」
いい時間潰しにはなった、移動すると疲れるので、データの鑑賞しているぐらいが、ちょうどよかった。途中で眠くなったら、刹那に凭れて居眠りしてはいたが。
それでも、毎日、舞台装置や曲のアレンジが変えられていて、退屈で眠くなるということはなかった。
「みなさま、いかがでしたか? 」
「みんな、元気だったよ。フェルトが春に降りて来るらしい。」
「それはよかったです。・・・・動けますか? ママ。」
「そろそろ大丈夫だろう。アレルヤ、肩貸してくれ。」
ちょっと気分を変えるために、医療ルームは出る。アレルヤに肩を貸してもらい、ニールもゆっくりと足を進める。扉を出ようとしたら、あちらから勝手に開いた。
「ママッッ。」
飛び込んできたのは、リジェネだ。抱きつこうとしたが、頭をアレルヤに押さえられて停止させられる。
「リジェネ、ニールが怪我するでしょ? 危ないなあ。」
そして、横手からティエリアが、リジェネに蹴りを見舞う。コロンコロンとリジェネは床を転がっている。
「おいおい、ふたりとも。大丈夫か? リジェネ。」
転がっているリジェネに、近寄ってニールが注意するが、ふたりとも、どこ吹く風の状態だ。リジェネのほうも慣れているのか飛び起きて、抱きついている。
「おかえりーーっっ、ママ。」
「はいはい、ただいま、リジェネ。痛くないか? 」
「大丈夫、全然、平気。ほら、左手の爪も再生させたから、もう、どこも異常はないんだ。」
ほら、と、ニールの前に差し出された左手は、ちゃんと爪が整っていた。ヴェーダに戻って、素体からヴェーダ本体へ戻って作業している間に、細胞を活性化させて爪も伸ばしておいた。地上では、そんなことはできないが、ちょうどヴェーダに戻ったから、素体の修理もやっておいた。
「そりゃ、よかった。」
「なるべく怪我はしないように気をつけるけど、また、やらかしたらお願い。」
「わかってるよ。」
絶対にしない、とは、リジェネも言い切らない。何かしらの緊急事態に陥ったら、素体を棄てるために、わざと破壊することもあるからだ。
「ラクス。僕に連絡くれなかったでしょ? どういうこと? 」
「連絡はさしあげましたよ、リジェネ。あなたが応答しないから、寝ていると判断したのですが、違いますか? 」
「そういう場合は叩き起こしてくれればいいのっっ。あのね、ママ。プラントのおいしい焼き菓子をみつけたんだ。それ、食べよ? 」
ニールが医療ポッドから出たら、連絡を、と、リジェネは頼んでいたのだが、自室で寝転けていたらしい。そんな失態はなかったことにして、リジェネが右側の腕に纏わりついて案内する。それほど、長い距離は歩けないから、近くの展望室へ案内する。
ニールが、もし、時間があれば、と、ラクスに頼んでいたことがあった。往路でも復路でもいいが、時間があったら宇宙を見せて欲しい、と、本宅でリクエストを出していたのだ。さすがに往路は、それどころではなかったので、復路に、その時間を作った。安全速度でエターナルが航行すれば、地球まで、かなりの時間があるからだ。歌姫様は、プラントでは忙しくて、とても時間がなかったので、プラントでおいしいお菓子を調達するよろに、リジェネに依頼しておいた。
「リジェネ、右手の扉ですよ? 」
「わかってるよ、ラクス。」
歌姫様が、ニールの左手を支えるように歩く。ちょっと気分を変えてもらうために、お茶の用意をしていた。
その二人を背後から眺めて、「これなら、僕らがいなくても大丈夫だね? 」 と、横手を歩いているティエリアにアレルヤが声をかける。リジェネが、ずっと傍についていてくれるなら、アレルヤとティエリアかいなくても、ニールは落ち込まないだろう。
「そうだな。お茶の席で、そのことはニールに告げよう。」
ティエリアも、アレルヤの言葉に頷く。ちょっと寂しい気分でもあるのだが、楽しみにしている旅行のほうが、何より勝っている。
ハイネのほうは、民間船に記録させていた全てのデータを消去させていた。そこに残っているのは、紛れもなく組織の拠点のひとつの情報だからエターナルから発進して戻るまでの全てのデータは残しておくわけにはいかないからだ。もちろん、医療データから生活関連データまで全部、ということになると、二時間ばかりかかった。ぶへーっとブリッジに報告に訪れたら、虎が苦笑していた。巡航しているので、ブリッジには他にはダコスタが待機しているだけだ。
「お疲れさんだな? ハイネ。」
「しょうがないだろう。こればっかりは残しておいたら、後々、問題になるんだからさ。」
エターナルが借り出していた民間船だと判れば、どこの陣営も、それが、どういう使われ方をしたか調べるだろう。一応、資材の搬送用の予備ということで理由はつけてある。これなら、使用しなくて待機状態だったとしても言い訳は成立している。
「スメラギさんは気付いてたか? 」
「ああ、気付いてた。とりあえず、ママニャンは壊れてて復帰は不可能ってことで納得はさせた。実際、そういうことだから、おかしなことはない。」
「酷い言い訳だな? 」
今回の騒ぎより前から八戒のほうから正式に頼まれていたことがあった。ニールは、後々、人外の関係者になってしまうから、組織や『吉祥富貴』の活動から外さなければならないとのことだった。すぐにではないが、まあ、あまり、そちらの用件に関わっていると、本山のほうからクレームがくるらしい。ヴェーダを掌握しているティエリアとリジェネに無条件でヴェーダのフルドライヴを命じられる人間は、この世に一人だ。スメラギなら、そのことに気付いて、緊急の場合、ニールを頼るかもしれない、と、虎たちも危惧していた。頼られたら、ニールは無理してでも組織へ復帰するだろう。そうなると、確実に三蔵の上司様たちから本山への強制送還の招聘がかかってしまう。だから、ハイネは、それを拒否するために、ニールが復帰できないことをスメラギに提示して納得させなければならなかったのだ。実際問題として、ニールは宇宙での活動には耐えられないし、一部壊れているから、スメラギのほうも諦めてはくれたはずだ。だから、デュナメスの一件は、ちょうどよかった、と、ハイネも考えている。
「事実だぞ? 虎さん。ママニャン、デュナメスを見て、ちょっとパニクってたからな。・・・・それから、デュナメスとキュリオスを、うちのラボに格納させて欲しいって話も出た。一応、俺は許可しておいたが、問題はないよな? 」
作品名:こらぼでほすと 解除17 作家名:篠義