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こらぼでほすと 解除18

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 クリスマスウィークは、毎日が大盛況なので、裏方の仕事までスタッフも手が廻らない。そこいらに、ニールを投入しておけば、人目があるし、日常担当が遠征してくれれば、スタッフも気分が落着くので、トダカも頼む。




 翌日、別荘からトダカ家へ里帰りした。それから数日、療養して寺に戻った。坊主は、これといって感慨もないらしく、「おい。」 と、お茶を所望する。
「紫猫もどきは、どうした? 」
「リジェネなら、別荘でラクスとカガリたちの手伝いをしてますよ。」
 ニールが、独りで帰って来たので、それだけは疑問だったらしい。淹れてもらったほうじ茶を、ずずっと啜っている。まだ、時間は午後の早い時間だが、平日だ。
「出勤ですよね? 」
「いや、今日は休みだ。指名がねぇー。」
 トダカは、ニールを送るだけで、すぐに店に出勤した。本日から新装開店であるらしい。しばらく休んでいたから、在庫のチェックやら発注なんかで忙しいとのことだった。来週からは、クリスマスウィークに突入するから、それまでは店も客が少ないから、坊主も無理に出勤するつもりはない。
「今日は、メシ作らなくていいぞ? 八戒が、昨日、おでんを仕込んでたからな。」
「はいはい。随分と世話かけちまったなあ。・・・・明日にでもお礼を言わなきゃ。」
「まず、俺にだろ? 」
「ん? お礼ですか? あんたに? 」
「礼じゃなくて謝罪だな。不在の不自由ってやつだ。」
「ああ、長いこと勝手してすいませんでした。明日から、本業に戻りますんで。」
「ぼちぼちでいい。まだ、本調子じゃねぇーんだろ? 」
「完全に治るには半年ぐらいかかるんだそうです。まあ、そこいらは、ぼちぼち。・・・・とりあえず、またお願いします。とうとう、あんたのとこしか行くとこがなくなっちまった。」
 身体が元に戻ったら、と、ニールは考えていたのだが、組織に戻ってみたら、すっかり自分の居場所だったロックオン・ストラトスの場所には、実弟が存在していた。それに、宇宙で過ごすだけで、体調がおかしくなるぐらいに弱っていては、組織に復帰するのは無理なことだ。帰る場所が、寺になっているのだと、ニール当人も考えていて、組織への復帰は、先の先になりそうだと自覚した。
「いりゃいいじゃねぇーか。」
「そうなりました。・・・・なんかあったら、あっちに戻ることになるでしょうが、今のところ、俺は、あっちでは役立たずです。」
「そりゃそうだろう。おまえ、体力的に回復するだけでも、一苦労なはずだ。諦めて、俺の傍に居ろ。」
「はいはい、あんたの傍に居座りますよ。追い出されるまではね。」
「今のところ、追い出す予定はねぇーな。」
「今、追い出されたら里に帰りますけどね。」
「だから、追い出す予定はねぇーって言ってるだろ。・・・・別に慌てなくても、ちびどもは生きてるんだ。生きてるうちは、おまえも生きてるって約束なんだから、気長に回復しろ。」
「はいはい。・・・・とりあえず、ウォーキングぐらいから始めようかな。」
「半年後からな。」
「え? 」
「おまえ、グダグダ状態から脱してないだろ? ウォーキングなんかしたら確実にダウンだぞ。」
「そうかなあ。」
「せいぜい、俺の世話が関の山だ。舅にも、そう言われなかったか? 」
 スパーッとタバコの煙を吐き出して、亭主は苦笑する。明日からって、ぼちぼちの意味が、まるっきりわかっていない。女房のほうは、お茶をずずっと啜って、えーと小首を傾げていたりする。
「言われましたかねぇー。」
「散歩ぐらいなら付き合ってやるよ。それぐらいにしとけ。」
「それ、買い物がてらに外食ってこと? 」
「そんなもんだろ。」
「毎日デート? 」
「はあ? 脳みそ、爛れてんのか? 誰がデートだ。」
「明日、本屋に行きたいんですが? 」
「じゃあ、本屋デートだ。メシは、どうする? 」
「蕎麦がいいなあ。・・・今日は、どうしたんです? 」
「悟空が、白メシと味噌汁は朝に作ってるから、それを食った。」
「明日の朝の材料はあるかな。」
「そこそこ、材料はあるはずだ。昨日、八戒が冷蔵庫に詰めてた。・・・・出汁巻きとマヨ焼き。」
「はいはい。」
 亭主と女房の二人だと、こんな会話が、日常だ。「どうだった?」、も、「大丈夫か? 」 もないが、そのほうが女房も、いつも通りで気が休まる。どうせ、明日にはシンやレイも顔を出すだろう。来週には、リジェネも帰ってくるはずだ。そう思うと、ほっとする。
「俺にとっては、こっちが帰る場所だって、ようやく理解しました。」
「おまえは、俺の女房だ。他に帰れると思うな。」
 けっっと舌打ちして、坊主が女房に言い渡す。とりあえず、居場所はあるのだ。そう思うとニールの顔も自然と綻ぶ。
「ありがとうございます、三蔵さん。」
「ほら、礼も言ってるだろ? 」
「あ、そうですね。あははははは・・・ほんとだ。」
 二人して、クスクスと笑っている声がする。それを外から帰って来て廊下で聞いていた悟空も微笑む。ようやく、いつもの日常に戻れる。ママは、何も知らないままで、どうにかできた。よかった、と、息を吐いて、「ただいまぁー。」 と、元気に居間に突入した。
作品名:こらぼでほすと 解除18 作家名:篠義