【静帝】 SNF 第二章
どうコメントしたら良いものか、絶句したまま乾いた笑顔を貼り付ける正臣の脳裏に、前触れもなく何故かいきなり、上京してきた帝人を駅まで迎えに行った時の、再会シーンが忽然とよみがえる。
耳にピアスを開けて茶髪に染めた、今どきの若者風に変貌していた幼馴染みの姿を見て、すぐさま表情を翳らせた帝人は…もしかして、こんな所感をいだいたのでは無かろうか?
『うわぁ、見るからに軽薄そうな“チャラ男くん”だぁ〜。う〜ん…ちょっと、がっかりかも。とっても残念な方向に成長しちゃったんだね、まーくん…。』
まさか、期待外れだったと失望した結果、「少し距離置いて接しとこうかな」と見切りをつけ、今日まで一線を画した付き合いをして来たとか…そ、そんな怖いこと、言ったりしないよなっ?
あの時、落胆した様子を見せたのも、妙に余所余所しい態度をとったのも、“紀田くん”なんて他人行儀な呼び方をしたのも――全部、全部、もしかして……。
(〜〜泣くっ!ホントにそうだったら、まじ泣きするっ!…頼むぜ、帝人ぉおお〜〜っ!!)
記憶を辿って、改めて思い起こせば起こす程、直視したくないイヤ〜な仮定しか想像できない。
自分の妄想に打ちのめされ、地味にへこんだ正臣の胸中に、ふと、想い人に不憫な酷評をたまわった、哀れな男への同情心が沸き起こる。
(…ゼロからどころか、《危ない人》認定のマイナスからのスタートで、よくもまぁ〜《恋人》の地位にまで登り詰めたな、平和島静雄!)
身につまされる部分が多々あるだけに、痛切に奇妙な親近感を男に覚えた正臣は、お節介は承知の上で、帝人に「…そこは、見なかった事にしといてやりなさい。」と、台無しだった初邂逅に関しては、ただ擦れ違っただけなのだからと、ノーカウントにする方向で忘れてやるよう提唱した。
それにしても…一体、どんな風に巡り逢って、どんな付き合いを交えたら、友好関係を深めるだけでなく、その気持ちを恋情にまで発展するに至れるものなのか…。
――興味本位で尋ねるのは不謹慎かもしれないが、非常に好奇心をそそられてウズウズする。
「なぁ、帝人〜。今度、おまえらの馴れ初め話、聞かせて貰ってもイイかぁ〜?」
真っ赤な顔して恥ずかしがる帝人をからかってやるつもりだったのに…さすがは天然みかど!思わぬカウンター攻撃を見舞ってくれた。
「うん、良いよ。正臣が、新羅さんと最低でも2時間、席を立たずに仲良くお茶できるようになったら、聞かせてあげる」
「何その拷問!ってか、それくらい耐性つけなきゃ、聞けない領域なのか?おまえの惚気話はっ!」
「うふふっ」
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作品名:【静帝】 SNF 第二章 作家名:KON