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00腐/Ailes Grises/ニルアレ

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一枚の挿絵が、アレルヤの目に留まる。
暗闇から濃紺、濃紫へ。そして突き抜けるような、青。
キラキラと輝く瞳。いいえこれは星だ。
満点の星空だった。
「きれい」
瞳だと思ったのは、きっと、ロックオンの絵を見たせい。
「……この本、棄てちゃうんですか」
せかいのはじまり、と、この本の表紙には書かれていた。
よくよく見ればこれは豪華な装丁なのではなく、手作りで丁寧に作られた一冊もののようだった。
絵本だ。
だが、アレルヤにはその一枚に惹かれる。
まるでいつかこの景色を見た事があるような。
どこか俯瞰した構図のその絵は、まるで神様が描いた空から見た景色のようで。
「修繕に出そうか」
一番最後の後書きをカティは見詰め、そう言った。
何代か前の職員の名前が綴られている。
「えっ」
カティの言葉に、アレルヤはまるで自分が強要してしまったのではないかと頭を振り上げる。
「とても貴重な本だ。見付けてくれてありがとう」
しかしそんなアレルヤとは打って変わって、カティはもう一度、微笑みを向けてくれた。


図書館の大掃除は何日かに分けて行われた。
二日くらいは激務だったが、四日目になる今日は手伝いににも慣れて、無駄口を叩ける程には余裕が出来ていた。
「……子ども、かあ」
遠くで引継ぎの伝達をしているカティを見て、クリスがぽつり、呟いた。
「どうしたの?クリス」
フェルトがクリスの顔を覗き込む。
その顔はうっとりとしたような、恋に恋する乙女といった表情では無く、何処か諦めたような……手の届かない宝物を見るような女の目だった。
「ねぇフェルト。フェルトは結婚したいなって思う?」
「なに、急に」
「だってー!マネキンさ……コーラサワーさん、すっごく幸せそうなんだもん!結婚式も綺麗だったし!!」
「ウェディングドレスは着てみたいとは思うけど……」
「そうじゃなくって、結婚!どう思う?」
「急に言われても、わからないよ」
しかしクリスにしては珍しい暗い様子はすぐに何処かへ消え、フェルトに女子トークを持ち掛ける。
目の前に仮にも成人男性がいるのによく出来るなあ、とアレルヤは影に成りすまし素知らぬ顔をして作業に没頭する。
「……〜じゃあアレルヤ!アレルヤは?男の意見として、結婚したいって思う?」
「えっ僕?!」
影になろうとした途端、突然話題が振られた。
あまりにも唐突過ぎて、過剰に体が跳ねる。
「アレルヤ以外いないわ」
「えっ、えー…ロックオンにきいてみないと……」
けっこん。いわゆる男女の契約だ。
その契約は生涯に渡り続き、どちらかが死ぬまで、それは消滅しない。
死が二人を別つまで、なんて言うが、事実として婚姻関係を持たずに子供を作る女性もいるし、離婚して生涯の伴侶である筈の嫁を取っ替え引っ替えする男性もいる。
いるにはいるのだが、それ以前にというかそもそもこの街の、灰羽のしきたりがよくわからない、とアレルヤは言おうとした。
「ロックオンはしないって言うわ……」
「クリス?」
まただ。
クリスの陰りのある表情は、普段が突き抜けに明るいぶん分かりやすい。
嘘や隠し事が苦手なのかもしれない。
クリスの手の届かないもの。
もしかしたら、それは……
「そうじゃなくて!アレルヤの、気持ちはどうなのよ!」
「僕の、気持ち?」
思考がその答えを導き出すまでに、クリスに問い質される。
ふと、教会で頽れた夢を思い出した。
未だはっきりと思い出せない夢の続きを。
背後から訪れる恐怖。
でももしそれが結婚式のように、恐怖ではなく愛しい人が来てくれるなら……。
アレルヤの想像は意識を越える。
幸せな夢だったらよかったのに。
伸ばされた腕に優しく抱きとめられて。
振り向けば星が、瞬いた。
アレルヤの空想であるのにもかかわらず。
鷲色の髪。彗星の瞳。白い肌。
顔が赤くなる。
だってそれは……
(ロックオン?)
この世界で、初めて自分を呼び起こしてくれた人。
どうして彼の顔が浮かんだのだろう。
アレルヤの意思に反して、空想の彼は微笑んでくれた。
(ロックオンなら、いいのに)
ちくりと胸が痛む。
だってその夢はとても怖かったから。
とうてい幸せな夢じゃない。
悲しかった。
(悲しかった……?)
夢の中での自分は、悲しくて泣いていたのか。
またちくりと胸が痛む。
アレルヤの心の中の、黒い影が夢を蝕み、そして胸を痛める。
先程の思考の答えを導き出してしまいそうだった。
「――アレルヤ、どうしたの?」
クリスとフェルトが心配そうにこちらを覗き込む。
汗がこめかみを伝う。
なんだ。この気持ちは。
胸が痛い。

「……きもち、わるい」

気持ち悪い。
腹の底で何かが蠢いている。
「ごめん、体調悪かった?」
「アレルヤ汗が、」
どんどん青褪めていくアレルヤの頬をクリスは撫でた。
違う、自分の中に何かがいるんじゃない。
これは今気付いたもの、芽生えたもの。
自分自身への嫌悪。
彼を穢してしまったように思った。
ただ微笑みかけられたいと願ってしまった。
そんなの、おかしい。
夢も現実も、しあわせになれない。
「クリス……なんか、変なの。背中がいたい」
胸の痛みは肋骨を抜けて、背骨へと侵食を始めた。
じくじくと、懐かしいようで、つい最近に感じた痛みだ。
「背中ッ?刻印は?!」
アレルヤの言葉を聞いて、クリスの表情が険しくなる。
その言葉の通り、刻印から痛みが与えられているようにも、自らの内側から鞭をうたれているようにも感じた。
「わからな……いた…………」
「嘘、やだ、やめてよアレルヤまで……!」
アレルヤの意識は、そこで途切れた。




――初めて目が覚めた時みたいだ。
アレルヤはベッドの横で椅子に座るロックオンを見て、呑気にそんな事を考えた。
今度は夢は、見なかった。
「お疲れ様。お前倒れたんだよ?」
「……迷惑かけてましたよね……ごめんなさい」
優しくアレルヤを諭すように、ロックオンは言った。
アレルヤはロックオンの変わらないその様子に、少し心が落ち着くのを感じた。
微笑って欲しいなあ。そうすれば、もっと心が落ち着くのに。
そして心の中でもう一度、アレルヤは謝った。
ごめんなさい。
微笑ってなんて、僕は言える立場じゃないのに。
「体調が悪かった訳じゃ……ないんだよな」
「うん……。ここ、は?」
しかしロックオンは、アレルヤの事をわかっていてくれた。
突然具合が悪くなったのだ。
それは本当の事で、アレルヤも否定も言い訳もしなかった。
アレルヤは頷いた後、あたりを見回す。
どこか見覚えのある部屋だ。
「俺の部屋だよ。アッチだったら、チビたちがうるさくてゆっくり出来ないだろう」
まだ部屋が決まって無かったから、俺の部屋に運んだんだ、とロックオンは付け足した。
じゃあこれはロックオンが眠ってるベッド……とアレルヤが声に出す前にそれを理解してしまい、アレルヤは顔が赤くなる。
赤くなるのが恥ずかしくて顔を隠すように口元までシーツを引っ張り上げると、そこからふんわりとロックオンの香りがしてしまいさらに顔が熱くなるのが分かった。
「背中は?まだ痛むのか」
「え、あ……大丈夫、みたい」