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00腐/Ailes Grises/ニルアレ

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大人しく、教えられる物事を享受しよう…アレルヤは、鸚鵡返しを始めた。

「【灰羽は金を持っちゃいけない。】
【新品のものを扱っちゃいけない。】
【年長者になると仕事に従事する。】
【従事した仕事を覚えてマエストロになる。】…こんな感じかな」
「お金を持っちゃいけないのに、買い物?」
「灰羽は連盟から貰った灰羽手帳がお金代わりなんだ。そこに買うものと値段を書いて、物品と交換する。代金は後で連盟が支払ってくれるんだが、新品を買うと後々面倒な事になるらしいから、中古品とかしか買えないけど」

今日は新しく生まれた灰羽ですーって自己紹介に行って、名札と手帳を貰うんだ。
そう言って、ロックオンは自分の手帳を見せてくれた。
手のひらサイズであろうそれは、大きな手のロックオンが見ると少し小さく見える。
手帳には持ち主の名前と写真と住所が記載されていて、ノートの何枚かは千切られていた。

「マエストロになる、っていうのは?」
「手に職をつけろ、って事」
「ゴッデスホームを出て生活する灰羽も居ない訳じゃないし。別に働かなくても灰羽は生きていける制度があるけど、それじゃあ他の人たちに申し訳がたたない」
「そんなわけで、俺らは中古品で慎ましやかに生きて、勉強よりも仕事、って感じ」
「なるほど。だから小さい子たちは学校には行ってないんだね」
「その点については改善の案が出されてるみたいだけどなあ。灰羽にも人権がどうのこうの…」

ため息交じりにロックオンは言う。
灰羽の決まりごとや人間の決まりごと。
ややこしい問題が山積みであることは、内容は分からずとも、ロックオンの声を聞くだけでアレルヤにも理解できた。

「働いて稼げる訳じゃないけど手に職つけて、それを他の人間に伝承していく…ってのが、俺らの役割でもあるんだって」
「……ロックオンは何を仕事にしているんだい?」
「それ、聞くかぁ?」
「え、でも、ロックオンも働いて…………え?」

自然に返してしまった返事に、ロックオンは困ったような表情をした。
聞いてはいけない事だったのだろうか、しかし大人の灰羽は仕事に従事すると先程ロックオンが言ったばかりなので、アレルヤは戸惑いを隠せない。

「チビたちの面倒を見る保育士だよもう俺は……」
「あ、ああ…」
「……俺が居なくなったら、誰がチビたちに勉強教えるんだろうなあ……」

昼飯は誰が用意するんだ。ケンカしないようにおやつを分けて、散歩に出して……。
落胆したような、あきれたような。ロックオンは肩を落とし自称した。
だけどどこかうれしそうな、幸せそうな表情でロックオンが言うものだから、アレルヤは小さく笑ってしまう。

「ロックオン、頼りにされてるんだね」
「クリスには頼りない頼りないって言われるけどな」
「ふふ、それとはきっと違うことだよ」

違うこと。よく解らなかったが、なんとなくそう思った。
彼は周りの人を喜ばせようとしている。楽しませようとしている。
まだ出会って一日しか経っていないけれど、そんな風に感じた。
そんな事を話しているうちに、沢を越えて、滝の近くにある岩肌の聖堂へと辿り着いた。
どうやらここが灰羽連盟と呼ばれる団体の本部のようで、ロックオンは静かにその荘厳な扉を押し開いていく。

「やあ、ロックオン」
「こんにちは神父様。こっちが昨日生まれた新生子のアレルヤです」

まるで二人が訪れる事を知っていたかのように、聖堂の中には神父が一人佇んでいた。
天窓から差し込む光を跳ね返すステンドグラスに眩暈を起こす。
夢の中でそれと重ね合わせてみるが、洞窟に造られたこの聖堂は、天井に作られた天窓から僅かな光が差し込むだけで、夢の中とはその輝かしさは異なった。
刻まれている模様は、抽象的ではあるものの灰羽の背に刻まれた六枚の羽と酷似していた。

「うん、うん。とても純粋な視線だね。キラキラ輝いている。
……ロックオン、どんな瞳の色か教えてくれるかな」
「はい、神父様」

僕がステンドグラスに気を取られていると、微笑む神父の言葉を聞いて僕の顔を覗き込んだ。
(どうかした?具合でも悪いのか)
小声で耳打ちされる。
どうやら神父は目が見えないのか、ただ穏やかにそこで微笑んでいるだけだった。
(いえ、大丈夫です。……夢の中で見たものに、似ている気がして……)
頬にロックオンの指先が触れる。
つい視線を逸らし、俯いてしまった。
(そういえば、お前さんの夢も聖堂だったよな。……どうだ?一緒だった?)
(いえ、全然……)
「あっ」

似ても似つかなかった、と顔を上げる。
するとロックオンの指がさらりとアレルヤの前髪に触れ、頬を包み込む。

「え?」
「アレルヤ、お前……」
「どうかしたのかな、ロックオン」
「いえ、とっても綺麗な色ですよ。神父様の言うとおり、きらきら、かがやいてる」
「……やっぱりそうかい!いやー、私もまだまだ老いてないねえ!」

どこかうれしそうに神父は声を上げる。
頬の紅潮した神父から、名札と手帳と、御言葉を授けられた。

「……神は確かにいないかもしれない。だが人はこうして教会に集まり、祈りを捧げる。
信じなさい。己の近くにいる者を。頼りなさい。己の隣にいる者を。【主よ、みことばを以て我らを守り賜え】」




「どうだった?悪い人じゃないだろう?」
「ええ……。あのロックオン、さっきはどうして、」
「……もしかして、気付いてない?」
「何をですか?」

聖堂を出てすぐにある滝を横切るつり橋の上でロックオンは立ち止まった。
連盟の聖堂にいたときのように、そっとロックオンの大きな手がアレルヤの髪を掻き分けて頬に触れる。
親指の腹で下目蓋をすっと横に撫で、アレルヤの両の目を覗き込んだ。
飛散する滝の水しぶきが両頬を濡らす。

「俺もさっき気付いたけど……お前、左右で眼の色が違うんだよ。金いろと銀いろ」

まじまじと見詰められ、頬が熱くなるのをアレルヤは感じた。
今まで特に何も思っていなかったが、ロックオンはとても整った顔立ちをしているのだ。
これだけ接近するまで気付かなかったのは、彼の飄々とした立ち方のせいか、それとも少し抜けた性格のせいなのだろうか。
クリスに頼りない頼りないと言われ、ふにゃっと笑う顔が印象的だったのだ。
柔らか過ぎる日常の物腰のせいで、目覚めてすぐ眼にした真剣な表情を忘れていた。

「おかしい…ですか…?」

あの時はすぐに微笑んでくれた。だけど今はまじまじと見られて、恥ずかしい。
もっともっと水しぶきを浴びせて欲しい。
視線を逸らしてしまいたいが、ロックオンの両手が頬に触れているからそれは叶わない。

「いや、珍しいかもしれないが……さっきも言ったろ。綺麗な色だって」

こつん、とロックオンの額がアレルヤの額に軽く当てられる。
そうして至近距離でロックオンが微笑むのだから、アレルヤは今にもこの滝に流されてしまいたいほど、顔が熱くて熱くて堪らなかった。



<改ページ】>



おもはゆい表情のまま、アレルヤはロックオンの後を追い森を抜けた。
しばらく歩いて、街へ向かう道へと出る。
するとそこには、朝食のパンケーキを食べた後すぐに仕事へと向かったはずのフェルトがいた。