二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

00腐/Ailes Grises/ニルアレ

INDEX|8ページ/27ページ|

次のページ前のページ
 

フェルトは転がる毛糸を追いかける夢を見たから、フェルト。
そして誰々はこういう夢を見て……とロックオンは説明する。

「ははっ、お前もすっかり先輩だなあ」
「たりめーだ。何年ここに居ると思ってるんだよ、おやっさん」
「そうか、もう三年経つんだなあ」

アレルヤに一つ一つ説明するロックオンの様子を見てイアンがまた笑った。
三年経つ。イアンの言葉にロックオンはどこか遠い目をしていた。

「じゃあおやっさん、この自転車の修理頼まれてくれるかな」
「おうよ、こんなのパンク直して磨き上げるだけさ」

待っている間アレルヤに時計塔の内部を見せてやれ。
イアンのその言葉にロックオンは壁伝いの階段を登っていく。
じゃあ行って来ます、とアレルヤは小さくイアンに声を掛けて、ロックオンの後を追った。



<改ページ】>


「……しんどー!」

がむしゃらに階段を登り続けて最後には二人とも息切れをしていた。
こんなに自分は体力が無いのかとアレルヤは頭を抱える。
酸欠で少しばかりクラクラしたが、体力が無いのはまだ自分がこの体の筋力を把握していないからだと思い込む事にした。
見た目だけなら筋肉もしっかりついた大人の筈なのに、指先が痺れる。
しかしロックオンも疲れ切ったような顔をしていたので、生まれたばかりとか、筋力の問題とか、そういうレベルでは無く本当にこの時計塔が街で一番背の高い建物だという事を実感した。

「昔は疲れなかったんだがなあ……歳かぁ」

汗を拭いながら、ロックオンは自嘲した。
かつて時計職人としてイアンに弟子入りをしていた時は毎日のようにここを登り降りしていたのだとロックオンは言う。
イアンの大切な愛弟子であった事は先程の様子を見てアレルヤにはよく分かっていた。
ニッと笑って、ロックオンは天井を指差した。
指が向けられた方を振り仰いで見ると、そこにはけして鳴る事の無い大きな鐘が四つ佇んでいた。
周りには大小の鐘があり、今はそれらを使って時を知らせているのだという。

「これだけデカいのが、何百年と前に作られたんだぜ」

大きなこの時計塔が建てられた時、この四つの大鐘には天使の名が冠せられた。
エクシア、デュナメス、ヴァーチェ、キュリオス。
でもいつからか、四つとも鳴らなくなった。
鐘が割れている訳でも、歯車が狂っている訳でも無い。
でも鳴らない。
かつて少年であったロックオンがどんなに願ってネジを回しても、古くなった歯車を取り替えても、鳴りはしなかった。
いつしかロックオンは諦めて、時計塔を後にした。

「……さみしくなかったの?」
「寂しくないさ。だっておやっさんは、いつでもここにいるんだから」
「そっか」

寂しいのは、鐘が鳴らなかった事では無いのだろうか。

「本当に壁の向こうって見えないんだね」
「そうだな……大人になったはずなのに、」

石造りの手摺に身をのりだす。
この時計塔に来るまで街の中を歩いたが、二人の身長は人の波より高かった。
ロックオンの言うとおり、時計塔からも壁の向こうは見えなかった。

「いつかこの鳥みたいに、壁の外に出たいんだ」

時計塔の小さな小窓から鳥が飛び立つ。
餌を乞う小鳥は、壁を超える事が出来るのだろうか。

「あの壁の向こうには何があるの?」
「さあ……壁の外に出れるのは、街同士の交易をしてくれる旅団だけだから」
「という事は、壁の向こうにも違う街があるんだよね?」
「旅団が活動してるんだから、あるんだろう」
「だろう、って」
「誰も街の外を見た事が無いんだ」

いつからこの壁が存在しているかも、人々は知らない。
それどころかそんな事を気にも止めず生きて死ぬだけなのだと。
少しずつ太陽が傾いていく。壁に囲まれた街は薄暗くなり、子供たちは次第に街の真ん中へと集まってきた。
まだ夕方には早く、集まった子供たちは一つの輪を作りまた遊び出す。

どちらかともなく先程登って来た筈の階段を降り始める。
登るより降りる方が楽に感じたが、それでも時間はかかったのか一番下に辿り着くとボロボロだった筈の自転車が、新品同様とまではいかないが綺麗に修理がされていた。
錆やゴミは落とされ、タイヤが交換されている。これだけでこんなにも綺麗になるとはロックオンもアレルヤも思っていなかったのか、驚いたような顔で自転車とお互いの顔を見合わせた。



イアンに礼を言って二人は時計塔を後にした。
綺麗になった自転車を押して、本日の目的であったはずの街の中心部となる商店街まで辿り着く。
図書館や役所、病院、レストラン、パン屋、店とつく殆どのものはこの辺りに揃っていたが、その大通りを過ぎて小さな角を曲がった所に、目当ての店はあった。
店の看板には灰羽と同じ六枚の羽が刻まれている。
どうやらここが灰羽が買い物出来る店という事らしい。

「――そんな地味なのでいいのか?」
「え、うん」

結局服を買いに来たのはいいものの、これから冬に向けてアレルヤが選んだものといえば、黒のニットだけだった。
シャツを数枚と、ジーンズやスラックスなどはロックオンがあれこれ助言をしたのはいいが、結局ロックオンと服の大きさがほとんど同じだったので、アレルヤは着回せるようなものを選んでしまう。
別に気を使っている訳では無いが、正直言って服のセンスなどないアレルヤにとってはシンプルな方が良い。
ロックオン自身も奇抜な服装を選ぶ性質の人間ではなかったので、それなら経済的に優しい方を選んでしまった。

「慎ましやかに、なんでしょう?それに僕ら服のサイズ同じなんだから着まわせるほうがいいかなって」
「あのなあ、ひよっこの灰羽に気を使わせる程じゃねーんだぞ?」
「でもいいんだ」
「…………仕方ねえなあ。今回は俺の手帳で支払っとく!」
「いいですよ、そんな…!」
「気にすんな、ページが一枚減るだけで俺には何の損も無い」

そう言ってロックオンはスラスラと手帳に品名を書いて、店主に渡してしまった。
半ば強引なロックオンの様子にアレルヤは驚く。
今日一日だけで彼の色々な表情を見た。

「後輩は先輩のいう事を聞く!」
「……ハイ、」
「それでよし」

いい先輩を持ったねえ、と古着屋の店主は笑った。




二人がホームに着く頃にはもう完全に日は沈み、東の空には一番星が輝き始めていた。
帰りの遅い二人を心配したのか、子供たちが玄関の前でたむろしている。

「あー!ろっくおんおそいー!」
「おなかすいたよー!」
「きいて、ろっくおん、きょうのおやつイチゴケーキだったのに…」
「おれわるくねーもん!さいごにイチゴのこしてるのがわるいー!」
「きょうのゆうごはんはねークリスがつくってくれるんだよぉー」

子供たちは口々に言いながら、ロックオンの足元へと群がる。
元気な男の子は後ろからロックオンに飛び乗ったり、ロックオンの膝を折ろうとしたりした。
女の子は女の子で、今日のおやつのイチゴを誰々にとられただの、おもちゃが壊れただの報告する。

「ああもー!一気に言うな、一人ずつしゃべりなさい!」

子供たちに引っ張られるロックオンは、本当に彼らの父や兄のようで微笑ましい。