【静帝】 SNF 第三章
懐かしい回想に耽りながら、時間つぶしの為に入店したコンビニで、手土産の【飲み物】を物色していたトムに、「そろそろ頃合いだ」との情報がもたらされる。
《むっつりストーカー》…もとい情報提供者の、只者ならぬ《千里眼》能力は、開眼当時より更に磨きが掛かって、今日も絶好調に冴え渡っている。
(こいつの『人外』っぷりにゃ〜だいぶ慣らされたが…。つくづく途方もねぇ、高性能な【望遠スコープ】持ってるヤツだべ。)
諺(ことわざ)曰く、何とかの『一念岩をも通す』――愛の奇跡で得た【能力】なら、間違った方向に悪用するかもしれないとの懸念は、まず抱かなくても大丈夫だろう。大丈夫…だよなっ!?
(くれぐれも、危険を察知する以外の目的では、使用してくれンなよ?〜〜頼むからっ!!)
初めは容認し難かったこの《覗き見》行為も、あの子に実害さえ及ばないのであれば、便利な機能が一つオプションで付け足されたと割り切って、ギリギリ!何とか受け入れられそうだとトムは思った。
「…さてっと、ほんじゃまぁ〜ぼちぼち、待ち合わせの公園に出向くとすっか」
レジで速やかに会計を済ませて、店を出る。
公園までの道すがら、距離が縮まるほどに“喜怒哀楽”を読み分ける精度を高めゆく『規格外』男から、付けっ放しのラジオよろしく、愛し子の実況中継が垂れ流される。
「なんかイイ事、あったみたいっスよ?すっげえ嬉しそうな気配が、ふわふわ漂って来るっス」
幸せ気分が伝播したように、わずかに口角を持ち上げて、あの子の今の情態をつぶさに報じてくれる相棒に、悪気がないのは分かってる。分かっちゃいるが…っ!!
――嗚呼、早くあの子に会って、癒されたい…。
ピークに達した精神疲労に、己の限界を覚えたトムは…切実に、安らかな憩いのひと時を、待ち望まずには居られなかった。
本日は晴天なり。
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作品名:【静帝】 SNF 第三章 作家名:KON