こらぼでほすと 年末風景2
翌日も、坊主は檀家廻りなので、朝からスクーターで出撃している。一口に寺の大掃除と言っても、墓所と本堂と境内があるので、結構な仕事量になる。例年は、ニールが年少組に手伝ってもらって、墓所のほうは事前に片付けているのだが、今年は、それもできていない。絶対にやるな、と、坊主が命令したからだ。
朝の家事を一通り、終わった頃に、トダカとアマギが顔を出す。特区組のトダカーズラブのメンバーも十人くらい同行していた。
「おはよう、娘さん。」
「おはようございます、トダカさん、アマギさん。今日はすいません。」
出迎えて、ニールが挨拶して立ち上がる。すでに、メンバーは境内に散って草むしり辺りから始めてくれている。
「後から、オーヴ組が追い駆けてくるはずだ。そっちには、墓所のほうをやってもらうとして、まずは本堂から始めようか? 」
「そう思って、今、本堂の荷物を外へ移動させてもらってます。」
で、ふと、台所では、いい匂いがしている。カレー独特の匂いというのは、隠せないものだ。朝から、悟空とシンが、ウキウキとカレーうどんを製作して食べていたからだ。やはり、カレーの匂いは強烈で、ついつい手が出てしまうものらしい。
「娘さん、まさかと思うが・・・カレーを作ったのかい? 」
「温かいものもあったほうがいいな、と、思って。もちろん、メインは出来合いの弁当ですが、トン汁とカレー、カレーうどんは用意してます。それから、本堂のほうに、お茶とビールあたりは置いてますんで、親衛隊の方には、自由に飲んでもらってください。」
「どうして、きみは大人しくしてられないんだろうね? 」
「でも、シンたちが、ほとんどやってくれたんで、俺は楽してますよ? トダカさん。」
「里帰りしたら、何もしちゃいけないよ? 」
「はいはい。」
三人で回廊を昇って、本堂のほうへ出向く。こちらでは、シン、レイ、悟空、リジェネが本堂のものを、外へ移動させている。さすがに、ご本尊は運び出せないが、それ以外を一端、本堂の前の廊下に出して、天井の煤払いから開始する。煤払いは悟空が担当だ。
「トダカさん、おはよう。」
「おはよう、悟空くん。とりあえず、荷物の運び出しからだね? 」
「ああ、それが終わったら上から順番に拭いて、最後に床になるよ。」
「他は、境内と墓所か。」
「そんなとこ。」
「とーさん、俺ら、ここの運び出しが終わったら、墓のほうへ行って来るよ。」
「シン、境内のを何人か連れて行きなさい。後から、本国組も来る。」
「アマギさん、トダカーズラブは何人来るんですか? 」
「出席予定は、三十八人だ。今、特区組の半分が顔を出している。半分が、昼の買出しをしてくることになってたんだが・・・・トダカさん、買出しは減らしたほうがいいですか? 」
昼の準備も、こちらでするから、と、アマギは事前に連絡していたのだが、ニールが、いろいろと作っているので、買出しは減らすほうがいいかもしれない。
「いや、そのままでいいんじゃないか? アマギ。娘さんが用意してくれてるのは、カレーなんかだからメインは人数分、必要だろう。」
仕出し弁当ではなくて、適当にスーパーとコンビニで昼ごはんの調達をしてくれるように、アマギが手配した。だから、弁当やらおにぎりやらがメインになる。
「ニール、米は炊いたのか? 」
「一応、一升は炊いてあります。」
「じゃあ、大丈夫かな。悟空くんたちもいるし。」
トダカーズラブは、そろそろ壮年の人間ばかりだが、年少組はぴちぴちの二十代だ。ここいらは、半端な量ではないから、多いぐらいのほうが安全だ。
「まさか、おやつも作ってないだろうな? 」
「そこまでは・・・うちのが五月蝿くて。」
本当は、菓子類の仕入れもしたかったのだが、悟空以下が、「もう、なんもすんなっっ。」 と、叱ったので、そこまで用意できなかった。ちょこまかと動こうとしたら、リジェネがティエリアから教えてもらった、と、ニールの両手の親指をヒモで結んでしまったので、そこからは動いていないのだと笑っている。
「今日は亭主の世話だけしてろ。掃除には参加するな。」
「そうもいかないでしょう、アマギさん。みなさん、ボランティアで手伝ってくれてるのに。」
ああ、言えば、こう言うので、トダカは苦笑して、リジェネを呼ぶ。一々説教しても聴かないのだから、実力行使が望ましい。
「リジェネくん、ニールの監視してくれるかい? 昨日の技も使っていいから。」
「了解っっ。ほらね? ママ。あれ、やっぱり悪いことじゃないんだよ。」
「おまえ、あれは人権侵害も甚だしい行為だぞ? 」
「でも、ティエリアも、ママは人の話は聞かないから、あれが有効だって言ってたし。」
あまり動かさない方法となると、拘束するのが一番手っ取り早いのだ。うんうん、と、悟空もシン、レイも頷いている。坊主が、出入りするので居間で待機してもらっているのが、一番いいのだが、そうなると一人で家のほうの掃除をちょいちょいとやってしまう。だから、拘束でもしておかない限りは見張りが必要になるのだ。
ちょっとおいで、と、トダカがニールを居間に連れて行き、タオルで両手を軽く縛ると、こたつに横にした。毛布も被せて、リジェネに寝るまで監視しておいてくれ、と、依頼する。
「どうせ、朝から動いてるんだろ? 大人しくしてなさい。いいね? 」
ちょいと強めに言われると、ニールも大人しく横になる。そこへ、もっと怖いのが到着した。
「ニール、このカレーの匂いは、どういうことですか? 」
ものすごーい笑顔だが、沙・猪家女房の背後からは冷たいオーラだ。今回は、アマギのほうで昼の手配はしてくれているから、汁物ぐらいでいいだろうと打ち合わせはしていた。それが、なぜかカレーの匂いだ。それだけで、何をやらかしているか、八戒には知れている。
「昼の汁物の一環です。作ったのは、俺じゃなくて悟空たちですから。・・・おはようございます、八戒さん。」
「はい、おはようございます、ニール。」
「なるほど、お父さんは拘束技に出たんだな。おはようさん、トダカさん。」
背後から悟浄も顔を出して笑っている。まあ、それで一番、動きを止めるには有効だから、誰も気にしない。
「おはよう、悟浄くん、八戒さん。なんだか、昨日から動きまくっているみたいだから、今日は大人しくさせておくよ。今日は長丁場だからね。」
「ああ、そうだ。場所とドレスコードをお聞きしようと思ってたんですよ。忘年会は、どちらで? 」
「あははは・・・ドレスコードはないんだ。近くの健康ランドを借り切ったから、無礼講だ。だから、着の身着のままでいいよ。あっちで湯上り服とか水着もレンタルできるから。」
最初は、どこかのホテルのバンケットルームで立食の宴会でいいだろうと考えていたのだが、そこへ余計なのも乱入することになって、さらに人数が増した。そうなると泊まりの手配とか面倒になって、二十四時間営業の健康ランドなら、そのまま泊れるし食事も、そこそこだし全員がゆっくりするにはいいだろうということになったらしい。
朝の家事を一通り、終わった頃に、トダカとアマギが顔を出す。特区組のトダカーズラブのメンバーも十人くらい同行していた。
「おはよう、娘さん。」
「おはようございます、トダカさん、アマギさん。今日はすいません。」
出迎えて、ニールが挨拶して立ち上がる。すでに、メンバーは境内に散って草むしり辺りから始めてくれている。
「後から、オーヴ組が追い駆けてくるはずだ。そっちには、墓所のほうをやってもらうとして、まずは本堂から始めようか? 」
「そう思って、今、本堂の荷物を外へ移動させてもらってます。」
で、ふと、台所では、いい匂いがしている。カレー独特の匂いというのは、隠せないものだ。朝から、悟空とシンが、ウキウキとカレーうどんを製作して食べていたからだ。やはり、カレーの匂いは強烈で、ついつい手が出てしまうものらしい。
「娘さん、まさかと思うが・・・カレーを作ったのかい? 」
「温かいものもあったほうがいいな、と、思って。もちろん、メインは出来合いの弁当ですが、トン汁とカレー、カレーうどんは用意してます。それから、本堂のほうに、お茶とビールあたりは置いてますんで、親衛隊の方には、自由に飲んでもらってください。」
「どうして、きみは大人しくしてられないんだろうね? 」
「でも、シンたちが、ほとんどやってくれたんで、俺は楽してますよ? トダカさん。」
「里帰りしたら、何もしちゃいけないよ? 」
「はいはい。」
三人で回廊を昇って、本堂のほうへ出向く。こちらでは、シン、レイ、悟空、リジェネが本堂のものを、外へ移動させている。さすがに、ご本尊は運び出せないが、それ以外を一端、本堂の前の廊下に出して、天井の煤払いから開始する。煤払いは悟空が担当だ。
「トダカさん、おはよう。」
「おはよう、悟空くん。とりあえず、荷物の運び出しからだね? 」
「ああ、それが終わったら上から順番に拭いて、最後に床になるよ。」
「他は、境内と墓所か。」
「そんなとこ。」
「とーさん、俺ら、ここの運び出しが終わったら、墓のほうへ行って来るよ。」
「シン、境内のを何人か連れて行きなさい。後から、本国組も来る。」
「アマギさん、トダカーズラブは何人来るんですか? 」
「出席予定は、三十八人だ。今、特区組の半分が顔を出している。半分が、昼の買出しをしてくることになってたんだが・・・・トダカさん、買出しは減らしたほうがいいですか? 」
昼の準備も、こちらでするから、と、アマギは事前に連絡していたのだが、ニールが、いろいろと作っているので、買出しは減らすほうがいいかもしれない。
「いや、そのままでいいんじゃないか? アマギ。娘さんが用意してくれてるのは、カレーなんかだからメインは人数分、必要だろう。」
仕出し弁当ではなくて、適当にスーパーとコンビニで昼ごはんの調達をしてくれるように、アマギが手配した。だから、弁当やらおにぎりやらがメインになる。
「ニール、米は炊いたのか? 」
「一応、一升は炊いてあります。」
「じゃあ、大丈夫かな。悟空くんたちもいるし。」
トダカーズラブは、そろそろ壮年の人間ばかりだが、年少組はぴちぴちの二十代だ。ここいらは、半端な量ではないから、多いぐらいのほうが安全だ。
「まさか、おやつも作ってないだろうな? 」
「そこまでは・・・うちのが五月蝿くて。」
本当は、菓子類の仕入れもしたかったのだが、悟空以下が、「もう、なんもすんなっっ。」 と、叱ったので、そこまで用意できなかった。ちょこまかと動こうとしたら、リジェネがティエリアから教えてもらった、と、ニールの両手の親指をヒモで結んでしまったので、そこからは動いていないのだと笑っている。
「今日は亭主の世話だけしてろ。掃除には参加するな。」
「そうもいかないでしょう、アマギさん。みなさん、ボランティアで手伝ってくれてるのに。」
ああ、言えば、こう言うので、トダカは苦笑して、リジェネを呼ぶ。一々説教しても聴かないのだから、実力行使が望ましい。
「リジェネくん、ニールの監視してくれるかい? 昨日の技も使っていいから。」
「了解っっ。ほらね? ママ。あれ、やっぱり悪いことじゃないんだよ。」
「おまえ、あれは人権侵害も甚だしい行為だぞ? 」
「でも、ティエリアも、ママは人の話は聞かないから、あれが有効だって言ってたし。」
あまり動かさない方法となると、拘束するのが一番手っ取り早いのだ。うんうん、と、悟空もシン、レイも頷いている。坊主が、出入りするので居間で待機してもらっているのが、一番いいのだが、そうなると一人で家のほうの掃除をちょいちょいとやってしまう。だから、拘束でもしておかない限りは見張りが必要になるのだ。
ちょっとおいで、と、トダカがニールを居間に連れて行き、タオルで両手を軽く縛ると、こたつに横にした。毛布も被せて、リジェネに寝るまで監視しておいてくれ、と、依頼する。
「どうせ、朝から動いてるんだろ? 大人しくしてなさい。いいね? 」
ちょいと強めに言われると、ニールも大人しく横になる。そこへ、もっと怖いのが到着した。
「ニール、このカレーの匂いは、どういうことですか? 」
ものすごーい笑顔だが、沙・猪家女房の背後からは冷たいオーラだ。今回は、アマギのほうで昼の手配はしてくれているから、汁物ぐらいでいいだろうと打ち合わせはしていた。それが、なぜかカレーの匂いだ。それだけで、何をやらかしているか、八戒には知れている。
「昼の汁物の一環です。作ったのは、俺じゃなくて悟空たちですから。・・・おはようございます、八戒さん。」
「はい、おはようございます、ニール。」
「なるほど、お父さんは拘束技に出たんだな。おはようさん、トダカさん。」
背後から悟浄も顔を出して笑っている。まあ、それで一番、動きを止めるには有効だから、誰も気にしない。
「おはよう、悟浄くん、八戒さん。なんだか、昨日から動きまくっているみたいだから、今日は大人しくさせておくよ。今日は長丁場だからね。」
「ああ、そうだ。場所とドレスコードをお聞きしようと思ってたんですよ。忘年会は、どちらで? 」
「あははは・・・ドレスコードはないんだ。近くの健康ランドを借り切ったから、無礼講だ。だから、着の身着のままでいいよ。あっちで湯上り服とか水着もレンタルできるから。」
最初は、どこかのホテルのバンケットルームで立食の宴会でいいだろうと考えていたのだが、そこへ余計なのも乱入することになって、さらに人数が増した。そうなると泊まりの手配とか面倒になって、二十四時間営業の健康ランドなら、そのまま泊れるし食事も、そこそこだし全員がゆっくりするにはいいだろうということになったらしい。
作品名:こらぼでほすと 年末風景2 作家名:篠義