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こらぼでほすと 年末風景3

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「おう、シン、ちょっと待て。あの焼きソバとアメリカンドックと焼きイカは食う。」 
「まだ食うのか? レイ、スライダー行こう。」
 満腹になったシンとレイは、プールに突進していく。腹ごなしには、ちょうどいい。
「ママ、これ、辛いっっ。」
「あーマスタードか。これは、俺が食うからマスタード抜きのを貰って来い。」
 リジェネは、一口、アメリカンドックを齧って騒いでいるので、それはニールが引き取った。これぐらいなら、と、むしゃむしゃと食べる。今日は貸切なので、どの売店もリクエストすれば、無料で用意してくれるので、悟空は心置きなく食べている。
「うちも、これはいいかもしれませんね。」
「いや、うちだと規模が大きすぎるだろ? ホテルのプールで十分だ。」
「でも、こっちのほうが遊具が充実してるし、雨でもいいし。オーナーに提案してみようかな。」
 夏には遊園地のプールを借り切っているのだから、それよりは規模は小さいし、これなら季節を問わずに楽しめるから、これもアリだと、経理部長は考える。
「俺、特区に住んでから初めてですよ? 八戒さん。」
「ニールの場合、免疫力が低いから、こういうところは避けてたんです。今日も帰ったら、うがい手洗いはしてくださいよ? 」
「はいはい。」
 と、言いつつ、ニールのほうはケチャップで口元をベタベタにしているリジェネの世話をしているし、ついでに亭主のほうに瓶ビールの酌もしていたりする。
「初詣は二日だったよな? 八戒。」
「そうですよ、悟空。」
「天気、大丈夫かな。曇りらしいけど。」
「え? そうでしたか。それは、ちょっとマズイかもしれせんね。」
「雨なら日延べすりゃいいだろう。別に、神社は年中ウエルカムだからな。」
 イカ焼きをはぐはぐと消化している悟空が、ニールに視線を流したので、当人も気付く。
「ん? もしかして、俺、まだ雨はダウンなんですか? 」
「当たり前だ。すぐに、どうこうなんねぇーって言われただろ。」
「そうか、そういうことなのか。あれ、遺伝子情報の問題じゃないのか。」
「正確には遺伝子情報の異状によるものですが、自律神経の細胞が正常な細胞に変わらなければ、ってことです。だから、春まではナマケモノモードなんですよ? ニール。大人しくしていられないなら、漢方薬も継続させますが? 」
「いえいえ、滅相もない。グウタラ専業主夫を満喫させていただきます。」
 ようやく、あの怖ろしくマズイ漢方薬と縁が切れたのに、復活されては堪らないから、ニールも大人しく頷く。
「とりあえず、ママニャンは三蔵の相手だけしてりゃいいって。なあ、三蔵。ちょっと勝負しねぇ? 」
「誰がやるか。」
「あら、三蔵ちゃん、ママニャンにいいとこ見せておかなくてよろしいの? 惚れ直してくれるわよーん。」
「はあ? こいつに惚れられたら気色悪いだろーが。」
「惚れるねぇー、それは、ちょっと難しいかなあ。いい亭主なんですけどねぇー惚れるっていうのは・・・あははははは。相性はいいと思うんだけど、どっちも男なんで。そこがなあ。」
「おまえ、ハイネに性転換しろって言われてただろ? あれをやったら、どうにかなるぞ? 」
「は? 本気ですか? あんた。・・・俺、それでも無理な気がしますよ。顔は変わらないんだから。」
「顔はタオルでも被せりゃ、なんとかなる。」
「・・・それ、もう俺でなくてもいいと思うんですが。てか、あんたが性転換してくれても、俺は無理ですから。」
「やるなら、おまえだろ? 女房なんだから。」
「無理。女がいいなら、どっかで調達してください。」
「いろいろと面倒だから、おまえでいい。」
「俺も口説くプロセスが面倒だから、あんたでいいですよ。」
「なら、このまんまだ。」
「はいはい。」
 寺夫夫のいつものやりとりだから、もう沙・猪家夫夫もツッコミしないで、スルーの方向だ。これだけ盛大にいちゃこらしてるのに、どこまでも恋愛感情に結びつかないのだから、どうあっても関係は変わらない。トダカ言うところの、「茶飲み友達夫夫」 というものは、こういうものらしい。
「もう、俺らも期待はしてないからな。おまえらは、そのまんま永遠にいちゃこらしてろ。」
「どこがイチャコラだ? エロガッパ。てめぇーんとこと一緒にすんじゃねぇ。」
「しなだれかかりましょうか? 三蔵さん。」
「ぶっ殺すぞ。」
 そして、イチャコラしている自覚のない寺夫夫は、いつものごとくツッコミ返しだ。こればかりは、改善のしようがないから、八戒が、はいはい、と、手を打って話を強制終了させる。
「ママ、プール行こうよ。」
「ああ、ちょっと浮いてみるか? リジェネ。」
「おい、泳げねぇーんだから、どっかで浮き輪を調達して来いよ? 」
「あんたも浮きませんか? 」
「付き合って欲しいのか? 」
「たまには女房に付き合ってください。悟空も行こう。」
「おうっっ。充填完了っっ。じゃあ、悟浄、俺ら、泳いでくる。」
 しょうがねぇーなーと、坊主も立ち上がって、売店に浮き輪を探しに行くのに同行する。それを見送って、悟浄は、自分の女房に、一応、声はかける。あれで、そうじゃないって言われても、誰も納得しないだろう。
「なあ、八戒。」
「もう言わなくていいです、悟浄。それぞれに幸せの形は違うってことにしておきましょう。」
 どうツッコミしても、どうにもならないものはスルーしたほうがいい。