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こらぼでほすと 年末風景4

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シンとレイは、温水プールのウォータースライダーで、ひとしきり遊んでいた。遊園地ほどの規模ではないが、これはこれで楽しい。ざぶりと水面から上がったら、プールサイドからキサカが手を振っていた。なんかあったのか? と、慌てて近寄ったが、用件は別口だった。
「シン、レイ、きみたち、将来的にはザフトに復職の予定か? 」
 いきなりな質問に、どっちも面食らう。これから、アカデミーで、それぞれが志望したカリキュラムをクリアーすれば、そこからは就職ということになる。シンは漠然としたもので、とりあえず、キラの手伝いをしようと思っていた。レイは、少し考えが違うが、表向きには、復職予定としている。
「それほど真剣には考えてませんが、キラさんのフォローをしたいとは思っています。」
 レイが代表して、そう返事する。今のところは、特区の『吉祥富貴』で、裏からいろいろとやらかしているが、将来的には、ラクスがプラントの政治面を、キラが軍事面を掌握して、コーディネーターの住み易い世界を構築させていくつもりだ。だから、シンとレイも、それに手助けできるようになりたいとは考えている。今は、それを担うだけの力がないから、蓄えるためにアカデミーで勉強をしている。
「・・・・その、就職ということなら、オーヴも念頭に入れておいてくれないか? 」
「え? 」
 キサカが言い出したのは意外なことだった。シンとレイは、オーヴを攻撃したザフトの一員だ。それが、オーヴへ就職は有り得ない。
「今すぐの話ではないんだ。これから、十年か二十年して、きみらが私たちくらいになったら、の話なんだ。・・・その時に、カガリ様に意見できるような人間が傍に居て欲しいと、私は思うんだよ。」
 今のところ、カガリは、まだ若くて経験も乏しいから、ウヅミーズラブ一桁、二桁会員だったものが補佐している。というか、実質的に、カガリができないことは、やっている状態だ。だが、カガリが、それなりの経験を積んで、自分で国を把握できるようになる時が、やがて来る。その頃には、今度は、今の補佐は年老いて保守的になっている。そうなると、カガリは動き辛い。その頃までに、カガリ自身が、同年代の信頼の置けるブレーンを用意しなければならないわけだが、これも一朝一夕にできるものではない。
「きみらは、その点で、カガリ様とほぼ同年代だし、他の組織で働いて、うちでは気付かない部分に気付いてくれるだろう。それに、カガリ様に忌憚のない意見も吐いてくれるだろうと予想している。」
 まず、そこなのだ、と、キサカは言う。イエスマンばかりでは、政治はできない。カガリの気付かない部分を容赦なく指摘してくれるぐらいのブレーンとしては、シンとレイは最高なのだ。本来なら、弟のキラがやればいいことだが、キラに関しては、いろいろと出生のこともあって、オーヴでの活動は難しい。いずれは、完全にプラントへ移住することになっている。
「でも、キサカさん。俺だって、あんまりいい経歴じゃないぜ? 」
「だが、きみはオーヴ出身のコーディネーターだ。オーヴは、ナチュラルとコーディネーターが混在しているから、そちらからの意見としても貴重だ。・・・それにね、トダカさんが寂しがるだろうというのもあるのさ。」
 シンとレイがプラントに移れば、トダカとは、なかなか逢えなくなる。オーヴで働くなら、同居だって可能になる。
「まさか、と、思いますが、トダカさんが、そう望んでいるんですか? 」
「それこそ、まさかだ、レイ。もし、ここで私が、きみたちを勧誘していることがバレだら、凹に違いない。きみらの将来について、きみらの望むようにさせたい、と、常々おっしゃっている。・・・・ただ、まあ、それも、きみたちの勧誘のエサにはなると思ったからだ。」
 まあ、そういうことだろう。シンとレイにしたって、トダカと逢えなくなるのは残念ではある。ただ、シンには姉ができて、そちらがトダカのところに居てくれるから、トダカも寂しい思いはしなくていいだろうとは思っていた。すぐに、という話ではないが、今現在、シンが考えている未来についての意見だけは述べておく。
「キサカさん、俺は、今のところ、やっぱ、カガリよりキラさんのほうが心配だ。そっちのフォローしたほうが、恒久的平和への助力になると思うんだ。・・・・まあ、なんかヘマでもして、キラさんからザフトを追放されたら帰ってくるかもしれねぇーけどさ。」
「申し訳ありませんが、俺もシンと同意見です。」
 これから先のことは漠然としているが、『吉祥富貴』のメンバーと一緒に働きたいとは考えている。もちろん、オーヴに何かあれば戻って来ることになるだろうが、カガリのブレーンになりたいとは考えられない。それが、今のシンとレイの考えだ。キサカも予想はしていたのか苦笑して頷いた。
「今は、それでいい。そういう選択肢もあるのだと、頭の隅に留めて置いてくれ。・・・・ああ、そうだ。この話は、トダカさんには内緒で頼む。そうでないと、私は、今後、面会謝絶にされてしまう。」
「そう思うんなら、やめとけばいいのに。」
「タネは蒔かなければ芽吹かない。オーヴもプラントも、これから国家として存続させていくには、次世代のことも考えなければならないんだ。」
 その用件もあって、キサカは遠征して来たらしい。キラのスタッフを横取りするつもりではない。キラが命じるのではなく、母国のことを慮って欲しいという気持ちもあって、シンに話したのだ。キサカは言いたいことは、それだけだ、と、プールから踵を返す。それを見送っていたら、レイが、シンのほうへ振り向く。
「シン、俺は、もしかしたらアカデミーで、しばらく研究のほうをやるかもしれない。・・・だから、ザフトへの復帰は、随分と先になるかもしれない。もちろん、キラさんへの協力は、できる限りするつもりだが。」
「そうか、俺は学究とかは向いてないから、普通に卒業する。その後、ザフトに復職するか、『吉祥富貴』の正社員になるかは、そこで、また考える。まあ、正社員になりそうな気はするけどな。」
 自分たちの未来は、自分たちで決める。それが、キラが選択した未来だ。だから、シンとレイも、自分たちが考える未来へと足を進めるつもりだ。地球が、連邦として一つに纏まり、ある程度の平和が確保できたら、今度はプラントでコーディネーターとしての平和を確立する。ナチュラルとコーディネーターが争わずに生きていける世界が重要だと考えている。
 刹那たちが、絶対的抑止力として組織を存続させるから、地上は、それで均衡が保てる。プラントが暴走しなければ、良好な関係は築かれるはずだ。そのためには、何ができるのか、それを今、シンは模索している。ただ、命令されたことに従うのではなく、自分で考えて、より良い方向に向かわなければならない。それが、自分たちで作る未来というものだ。
「そうだな、シンは実践のほうが向いている。」