こらぼでほすと 年末風景5
「シン、キサカは何を言って勧誘したんだ? 」
「え? 」
「忘年会の時、おまえたちに、何かしらの理由をつけて、オーヴへ誘っただろ? 」
シンとレイは、トダカが知っているとは思わなくて、一瞬、沈黙した。それで、勧誘があったことは、バレたも同然だが、しらばっくれておこうかと考えていた。
「何のことだよ? とーさん。」
「おまえ、誤魔化すのが下手だなあ、シン。・・・見てないと思ったみたいだけど、うちのものが尾行してたんだ。シンとレイに言い寄ったって聞いてるんだが? 」
「トダカさん、キサカさんを凹にしてませんよね? 」
「さあ、どうだったかなあ。・・・・くくくくくくく・・・・酔い潰してはおいた。かなり飲ませておいたから、翌日はボロボロになってたね。」
うちの子に余計なことをするな、と、申し渡しておいた、と、おっしゃったので、シンとレイも降参だ。
「そのうち、オーヴに戻って来いって言われた。俺たちは、キラさんと一緒に働きたいと、一応、断ったけどな。」
「将来的なカガリのブレーンとしての勧誘でした。」
「まあ、そんなことだろうな。・・・娘さんのほうは、亭主が一緒で手が出せなかったらしいが、おまえたちには声をかけたわけだ。」
「え? 俺? 」
まあ、確かに、あの日は亭主が、終始一緒に行動していたから、誰も近寄って来なかった。というか、ニールを勧誘したところで、何の戦力にもならないと、当人は思う。
「娘さん、きみ、自分の価値が判ってないね? きみだって、いいブレーンには該当しているんだよ? 」
「ですが、トダカさん。俺は、元々裏社会の人間だし、直近の職歴はテロリストですよ? そんなのカガリの役には立ちません。」
「カガリ様に直接は役に立たないけど、裏のやり方を知っていることには違いない。そちらの対処には有効なんだ。政治の世界なんて綺麗事だけでやっていけるものじゃない。裏から手を回すことだってある。」
それに、何よりニールはヴェーダを自由に使える人間だ。その力は、オーヴにとっては強力な武器になる。当人は、そのことを理解していないが、何かあったらヴェーダを掌握しているティエリアとリジェネが黙っていないだろう。何かしら、ニールの周りで起これば、すぐに動くはずだ。うふふふ・・・と、リジェネは微笑んでいる。
「もしかして、本命はねーさんだった? とーさん。」
「いや、どっちも本命だろうさ。おまえたちの力も、評価は高い。」
まだ、今の所は、若いからすぐにどうこうするつもりはないだろうが、経験が備われば、シンとレイも立派な戦力になる。それも、カガリの本質を知っているし、容赦なくツッコミできる貴重な人材だ。オーヴの国家元首としてのカガリと対等にモノを言える人間というのは貴重だからだ。
「トダカさんのことも話には出てました。」
「情に訴える作戦か・・・・それも有効だろうけどね。」
そこで、トダカは一端、沈黙する。もちろん、子供たちが傍に居ることは嬉しいのだが、そのために未来を曲げてもらっては困るのだ。今後のオーヴとプラントのためには。
「私は、オーヴに来るのは反対だよ? シン、レイ。特に、シン。おまえは、プラントで重要な役目がある。」
「俺? 」
「キラ様が暴走した場合、止められるのは、実績のあるおまえだけだ。他は、みんな、一度、キラ様に倒されているからね。」
『吉祥富貴』の面々でも、キラを倒したのはシンとレイだけだ。他は、見事にダルマもしくは足チョンパにされている。
「それなら、アスランが、もっとも止められる立場ですよ? トダカさん。」
「ふふふふ・・・レイ。それは間違いだ。アスランくんは、キラ様を止められない。むしろ、賛同して行動を共にするだろう。おまえたちは、キラ様が暴走したら、それを暴走と認識できるはずだ。だが、アスランくんは、暴走とは思わないんだよ。」
キラを常時、守っているアスランは、キラと、ほとんど同化している。だから、キラがおかしな方向に突っ走る事態が起きたら、間違いなく一緒についていってしまう。それでは、止められない。シンとレイは、キラに心酔しているわけではないから、冷静に、その判断ができるだろうと言う。確かに、そうかもしれない、と、レイも思い直す。アスランは流されやすい性格だ。それで、キラと何度も衝突している。
「でも、とーさん。あれは、キラさんが疲れてたからできたことだぜ? タイマンなら、俺は無理だ。」
シンが、かつてキラを倒せたのは、何十機ものMSやMAと戦った後のキラだったからだ。一対一で、となると、勝てる気はしない。
「だから、シンも鍛えて対等になることは必要だ。プラントを守るために、キラ様には常に最強のMSが用意されるだろう。それで、暴走されたら誰も止められないわけだが、ラクス様は、そこいらも考えていらっしゃるはずだ。同じ機体を用意しておくぐらいのことはされるだろう。それに搭乗してキラ様を止めるのは、今のところ、おまえだけだ、シン。」
『白い悪魔』のふたつ名は伊達ではない。今でも、キラは最強だ。だが、シンも、それに近いところまでは辿り着ける素質がある。一度、キラを落としたのだ。そう言われると、シンも考える。人間は、変っていく生き物だ。それは、シンも理解している。今は、平和な世界を望んでいるキラだって、世界を独占しようと変わってしまうかもしれない。それを阻止するためには、キラと対等に強くなければならない。
「だから、おまえはプラントに居るべきだと私は思っている。今度は、レイの助けがなくてもキラ様を倒せるように強くなれ。」
「とーさん。」
「人間は、変化する生き物だ。この先、どんなことになるのか、誰も予想はつかない。キラ様が変わらずにおられるなら、一緒に働けばいい。それが、私も一番望ましいんだが、そうとは限らないのが人間というものだ。だから、予防策は用意しておきたい。キラ様の変化は、近くに居なければ気付かないだろ?」
「それは、もし、キラさんが暴走しそうなら事前に止めるってことでもいいんだよな? 」
「もちろん、それが最善だ。ただ、まあ、キラ様は、ああいう方だから変化がわからないかもしれない。」
普段から天然電波な大明神様なので、おかしな方向に流されていても、誰も気付かない場合もある。最悪の事態の場合は、シンが戦うことになるという話だ。
「まあ、そこは問題だな。俺、普段でもキラさんが何を考えるのかわかんないもんな。」
「そういうことさ、シン。次は、レイの助けはないかもしれないしね。」
「ん? なんでだよ? 」
トダカの言葉に、レイは内心でドキッと心臓が跳ね上がった。まさか、ここで暴露するつもりか、と、思ったからだ。
「いつまでも、二人一緒なわけがないだろ? シン。いずれ、おまえたちも、別々に艦隊を任される立場になる。そうなったら、おいそれとレイと連携できない場合も出てくる。」
「あーそうか。そうだよな。艦を預かることになれば、別々になることもあるか。」
うーん、と、シンが唸っているのを横目にトダカは、レイに柔らかい視線を投げる。いずれ、分かれるの意味は違うものとして説明してくれるらしい。
「できるかぎりは協力するぞ? シン。」
「え? 」
「忘年会の時、おまえたちに、何かしらの理由をつけて、オーヴへ誘っただろ? 」
シンとレイは、トダカが知っているとは思わなくて、一瞬、沈黙した。それで、勧誘があったことは、バレたも同然だが、しらばっくれておこうかと考えていた。
「何のことだよ? とーさん。」
「おまえ、誤魔化すのが下手だなあ、シン。・・・見てないと思ったみたいだけど、うちのものが尾行してたんだ。シンとレイに言い寄ったって聞いてるんだが? 」
「トダカさん、キサカさんを凹にしてませんよね? 」
「さあ、どうだったかなあ。・・・・くくくくくくく・・・・酔い潰してはおいた。かなり飲ませておいたから、翌日はボロボロになってたね。」
うちの子に余計なことをするな、と、申し渡しておいた、と、おっしゃったので、シンとレイも降参だ。
「そのうち、オーヴに戻って来いって言われた。俺たちは、キラさんと一緒に働きたいと、一応、断ったけどな。」
「将来的なカガリのブレーンとしての勧誘でした。」
「まあ、そんなことだろうな。・・・娘さんのほうは、亭主が一緒で手が出せなかったらしいが、おまえたちには声をかけたわけだ。」
「え? 俺? 」
まあ、確かに、あの日は亭主が、終始一緒に行動していたから、誰も近寄って来なかった。というか、ニールを勧誘したところで、何の戦力にもならないと、当人は思う。
「娘さん、きみ、自分の価値が判ってないね? きみだって、いいブレーンには該当しているんだよ? 」
「ですが、トダカさん。俺は、元々裏社会の人間だし、直近の職歴はテロリストですよ? そんなのカガリの役には立ちません。」
「カガリ様に直接は役に立たないけど、裏のやり方を知っていることには違いない。そちらの対処には有効なんだ。政治の世界なんて綺麗事だけでやっていけるものじゃない。裏から手を回すことだってある。」
それに、何よりニールはヴェーダを自由に使える人間だ。その力は、オーヴにとっては強力な武器になる。当人は、そのことを理解していないが、何かあったらヴェーダを掌握しているティエリアとリジェネが黙っていないだろう。何かしら、ニールの周りで起これば、すぐに動くはずだ。うふふふ・・・と、リジェネは微笑んでいる。
「もしかして、本命はねーさんだった? とーさん。」
「いや、どっちも本命だろうさ。おまえたちの力も、評価は高い。」
まだ、今の所は、若いからすぐにどうこうするつもりはないだろうが、経験が備われば、シンとレイも立派な戦力になる。それも、カガリの本質を知っているし、容赦なくツッコミできる貴重な人材だ。オーヴの国家元首としてのカガリと対等にモノを言える人間というのは貴重だからだ。
「トダカさんのことも話には出てました。」
「情に訴える作戦か・・・・それも有効だろうけどね。」
そこで、トダカは一端、沈黙する。もちろん、子供たちが傍に居ることは嬉しいのだが、そのために未来を曲げてもらっては困るのだ。今後のオーヴとプラントのためには。
「私は、オーヴに来るのは反対だよ? シン、レイ。特に、シン。おまえは、プラントで重要な役目がある。」
「俺? 」
「キラ様が暴走した場合、止められるのは、実績のあるおまえだけだ。他は、みんな、一度、キラ様に倒されているからね。」
『吉祥富貴』の面々でも、キラを倒したのはシンとレイだけだ。他は、見事にダルマもしくは足チョンパにされている。
「それなら、アスランが、もっとも止められる立場ですよ? トダカさん。」
「ふふふふ・・・レイ。それは間違いだ。アスランくんは、キラ様を止められない。むしろ、賛同して行動を共にするだろう。おまえたちは、キラ様が暴走したら、それを暴走と認識できるはずだ。だが、アスランくんは、暴走とは思わないんだよ。」
キラを常時、守っているアスランは、キラと、ほとんど同化している。だから、キラがおかしな方向に突っ走る事態が起きたら、間違いなく一緒についていってしまう。それでは、止められない。シンとレイは、キラに心酔しているわけではないから、冷静に、その判断ができるだろうと言う。確かに、そうかもしれない、と、レイも思い直す。アスランは流されやすい性格だ。それで、キラと何度も衝突している。
「でも、とーさん。あれは、キラさんが疲れてたからできたことだぜ? タイマンなら、俺は無理だ。」
シンが、かつてキラを倒せたのは、何十機ものMSやMAと戦った後のキラだったからだ。一対一で、となると、勝てる気はしない。
「だから、シンも鍛えて対等になることは必要だ。プラントを守るために、キラ様には常に最強のMSが用意されるだろう。それで、暴走されたら誰も止められないわけだが、ラクス様は、そこいらも考えていらっしゃるはずだ。同じ機体を用意しておくぐらいのことはされるだろう。それに搭乗してキラ様を止めるのは、今のところ、おまえだけだ、シン。」
『白い悪魔』のふたつ名は伊達ではない。今でも、キラは最強だ。だが、シンも、それに近いところまでは辿り着ける素質がある。一度、キラを落としたのだ。そう言われると、シンも考える。人間は、変っていく生き物だ。それは、シンも理解している。今は、平和な世界を望んでいるキラだって、世界を独占しようと変わってしまうかもしれない。それを阻止するためには、キラと対等に強くなければならない。
「だから、おまえはプラントに居るべきだと私は思っている。今度は、レイの助けがなくてもキラ様を倒せるように強くなれ。」
「とーさん。」
「人間は、変化する生き物だ。この先、どんなことになるのか、誰も予想はつかない。キラ様が変わらずにおられるなら、一緒に働けばいい。それが、私も一番望ましいんだが、そうとは限らないのが人間というものだ。だから、予防策は用意しておきたい。キラ様の変化は、近くに居なければ気付かないだろ?」
「それは、もし、キラさんが暴走しそうなら事前に止めるってことでもいいんだよな? 」
「もちろん、それが最善だ。ただ、まあ、キラ様は、ああいう方だから変化がわからないかもしれない。」
普段から天然電波な大明神様なので、おかしな方向に流されていても、誰も気付かない場合もある。最悪の事態の場合は、シンが戦うことになるという話だ。
「まあ、そこは問題だな。俺、普段でもキラさんが何を考えるのかわかんないもんな。」
「そういうことさ、シン。次は、レイの助けはないかもしれないしね。」
「ん? なんでだよ? 」
トダカの言葉に、レイは内心でドキッと心臓が跳ね上がった。まさか、ここで暴露するつもりか、と、思ったからだ。
「いつまでも、二人一緒なわけがないだろ? シン。いずれ、おまえたちも、別々に艦隊を任される立場になる。そうなったら、おいそれとレイと連携できない場合も出てくる。」
「あーそうか。そうだよな。艦を預かることになれば、別々になることもあるか。」
うーん、と、シンが唸っているのを横目にトダカは、レイに柔らかい視線を投げる。いずれ、分かれるの意味は違うものとして説明してくれるらしい。
「できるかぎりは協力するぞ? シン。」
作品名:こらぼでほすと 年末風景5 作家名:篠義