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トータル・イクリプス Side Story

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バオフェン小隊(の中尉)によるアルゴス小隊(の主席開発衛士)撃墜作戦



ユーコン基地、バオフェン小隊ブリーフィングルーム。
1人、甘い妄想に浸っている緑髪の女衛士ー崔亦菲その人がいた。

(はぁ...ユウヤと歓楽街でデート...2人でショーウィンドーを見ながら...腕を組んで...)

「崔中尉?」

(ベンチで愛を囁き合いながらクレープを食べさせあいっこして...)

「中ー尉ー?」

(そのまま夜まで洒落こむ...!)

「...だめだ。」

部屋に小隊のメンバーが入ってきた事はおろか、呼び掛けてにも気づいていない。まるでなんとかのようだ、というやつだ。

「中尉の乙女妄想にも困ったもんよねぇ...」

青髪の少尉が溜め息混じりに吐き出す。

「本当アル。ああなったら私達には止められないアル。」

赤髪の少尉も同調する。

「ブリッジス少尉もまさか脳内まで登場させられてるとは思ってないでしょうね。...お気の毒。」

最後にお姉さん役の少尉が話を締めた。

そして崔中尉とは今は話せないことを知り、三人はそそくさと部屋を後にした。

そんな事は露知らず、亦菲は脳内考察を続けていた。

(絶対にユウヤは私がもらう!お姫様なんかに渡さないわ!...でも...ブルーフラッグではステルスとかいう、反則もどきな奴らにやられちゃったし...)

これではユウヤに会う口実がない。
亦菲は何かきっかけはないかと頭を悩ませ続けた。

(難しく考えるからだめなんだ...!いっそアルゴスのブリーフィングルームに押し掛けてしまえば...!お姫様なんて勢いでなんとでもなるっ!)

そして最後は実に亦菲らしい、強行策に出ることとなった。

(いや...でも普通のジャケットで行ったらインパクト無いわよね...ここはユウヤのため、歓楽街で兵装(勝負服)を買うしかない!)

思い立ったら早いのも崔亦菲。ブリーフィングルームを出たかと思うと、脱兎の如く、駆け出していった。




数十分後、歓楽街。

亦菲はユウヤを悩殺出来るような服装を求めて店を渡り歩いた。

「中々イイのが無いわねぇ...基本的に何着ても可愛いのが私だけど、私の魅力を最大限に活かせるモノじゃないとね...」

しかし、一向に亦菲のお眼鏡に敵うものが見つからない。
苛立ちを感じ始めた頃、ふとショーウィンドーのファッションに目が止まった。

「...これだわっ!」

そう叫んだかと思うと、早速店に入り、試着を始めた。亦菲の脳内にインスピレーションを起こしたそのモノとはー



「ふふっ、どう?店員さん、似合うでしょ?」

店員も驚きを隠せない様子で

「ええっ...これは...ここまで着こなすとは...!」

とわなないていた。




ー深紅のチャイナドレスである。

やはり統一中華戦線の衛士だけあり、着こなしは見事なものだった。ちゃっかりライトピンクのルージュまで引いている。
また、腰の辺りまであるスリッドが亦菲の妖艶さを引き立たせていた。

「決めたわ!これ、ちょうだい!」

即決。亦菲はご機嫌な様子で店を後にした。

主力兵器を手に入れた後、幾つかの支援兵装(ハイヒール...etc)を購入した亦菲はこの上なく上機嫌でバオフェンの格納庫へ戻ろうとした。

しかし格納庫への帰投中、予想外の事が起きた。

ユウヤ遭遇である。ただ、ユウヤは亦菲に気づいておらず、どうやら連れもいるようだった。

(ユウヤ...!ん?でも、誰かいる...?)

所属不明機を見つけた亦菲は咄嗟に街路樹の影に隠れた。

(あれは...紅の姉妹!?なんで...?)

まさにCODE:991発生である。
さらにあろうことか、ユウヤは花を購入し、紅の姉妹にそれを上げているではないか。
F-22Aよろしくアクティブステルスでいた亦菲だったが、とうとう我慢できず、愛機である懺撃10型の勢いでユウヤに近寄った。

「ちょっと、アナタ!?」

さらにユウヤが「げっ」というようなオーラを醸し出しているのも亦菲の感に障った。

その後、余りの亦菲のキレっぷりに恐れをなしたか、紅の姉妹は退散し、ユウヤを1人にした。
ここでユウヤのツキも尽きる。

近接戦闘なら神業を誇る亦菲。
77式長刀張りのヘビーで、亦菲はユウヤの鳩尾を叩き割っていた。

(なんなのよもう!俺達今忙しいですって!?何が忙しいのよ!え!?)


その背景を篁中尉が隠れて観察していたことを、亦菲は知らなかった。

また、この時購入したチャイナドレスはユーコン基地襲撃事件やら何やらのお陰で再び日の目に出ることは無かった。