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トータル・イクリプス Side Story

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小さな、でも確かな一歩




カムチャッカ遠征後、ステラはある事を考えていた。


(篁中尉、カムチャッカでは最悪な状況だったとはいえ、ユウヤとの距離を少しだけ縮める事が出来たわね…)

命がけで唯依を救ったユウヤに対し、唯依が明らかに好意を寄せているのはアルゴス試験小隊全体での共通認識になりつつある。
また、ステラは、ユウヤが大破した不知火弐型でカムチャッカ基地に留まった時の唯依の、立場を忘れた要求を聞いていたため、より深く認識していた。


(でもユウヤは…篁中尉の好意に気付いてないのよねぇ…)

溜め息を漏らすステラ。ユウヤの朴念仁ぶりは筋金入りである。そしてそれはユーコンに来てからさらに磨きがかかっていた。
ただ、そのお陰で不知火弐型の完成度が高まっているのも事実ではあるのだが。

(これじゃあ、篁中尉も浮かばれないわよね…)

やはりここは自分が一肌脱ぐしかない。唯依、そしてユウヤのためにもステラは動くことにした。




―数分後、ステラは唯依を基地廊下で捕まえた。唯依に話しかけた時、何故か彼女は顔を紅くしていたが、何があったのだろう。ともあれ、ステラは唯依に対してある「提案」をしてみた。

「篁中尉、もしよろしければカムチャッカ遠征慰労パーティで、私と一緒に料理をしませんか?」

「料理…?」

怪訝そうに繰り返す唯依。

「はい。パーティでは、腕の立つ者はキッチンへ、と相場が決まってます。篁中尉も如何ですか?それに…」


料理。
言われてみれば久しくしていない。少なくともユーコンに来てからは全くしていない。久しぶりにやってみたい気もする。

「それに?」

少なからず興味を抱いた唯依はステラに話の続きを促した。

(もう一押しいるかしら?)悪戯っぽい笑みを浮かべながらステラは続けた。

「大切な人に食べて貰えるっていうのもいいんじゃないかしら?」


少しくだけた口調にしたステラ。


「…そう、ユウヤ、とかね?」


「ぶぶぶブレーメル小尉!?」


直球過ぎるステラの言葉に顔を真っ赤にする唯依。


その表情を楽しんだステラはゆっくりと唯依を抱きしめた。

「あっ…」

「唯依。貴方も、もう少し素直にユウヤと接してみたら?そうすれば…少しは貴方の気持ち、伝わるわよ。」


抱きつかれた唯依は最初こそ戸惑ったものの、ステラにそう囁かれると不意に温かさを感じた。
唯依に姉はいない。けれども、姉が妹を思うような優しさを感じていた。


「ブレーメル小尉…」


「なに?唯依。」


「私も…参加させてもらえないだろうか。」


唯依から離れたステラは優しく微笑みながら肯定の意を表した。




―数十分後、歓楽街。

ステラと唯依は材料を揃えるために買い物に出ていた。


「これで全部かしら、唯依?」

「うん…これで全部…」

「そう、なら…作りに行きましょうか。」

「ん…」


今まで公私を分けず、全て公で接してきた唯依にとって、ステラとプライベートな会話をするのは少々抵抗があった。
ステラもそれを察し、唯依が話しやすそうに会話をしていた。


「ブレーメル小尉、ここは…?」

「私達が普段お酒を飲んでるお店。ユウヤの歓迎会もここでやったのよ?」

「そう…なんだ。」

「オーナーも中々話せるのよ?」

そう言ってステラは店に入る。唯依も続くとそこに若い女性が店の準備をしていた。


「準備はどう?ナタリー。」

ナタリーと呼ばれた女性はステラに気付くと笑顔で近づいてきた。

「あら~ステラ。どうしたの?パーティにはまだ早いわよ~?」

「実はちょっとキッチンを貸してほしいの。」

「あら、料理でもするの?」

「いえ、私はお手伝いよ。作るのは彼女。」

そう言ってステラは唯依に顔を向ける。ナタリーも興味深そうに唯依を見つめていた。

「あ…唯依 篁だ…」

「ユイ、ね~。私はナタリー・リュクレール。よろしく。フランス人よ。ちなみに、ここのオーナーよ。」

「ああ…。ところでキッチンは…」

「勿論良いわよ~。何?彼氏に~?」

「ななななっ!」

「あら…図星?」

「ふふっ。じゃあナタリー、お借りするわね?」

「はいはい~」

楽しそうに笑ったステラはナタリーに許可を貰うと赤面する唯依と共にキッチンに入っていった。





「で…何を作るの?」

「え…いや…その…肉じゃがを…」

「あら。日本の料理ね?」

「ああ…随分久しく作っていないが…」

「ふふっ。ユウヤ、喜んでくれると良いわね?」

「あ…うん…」

「じゃあ、作りましょう?はい、これ。」

「これは…」

「エプロンよ。ほらほら。」

「…」

「あら、可愛いじゃない。さ、始めましょう。」

こうしてステラと唯依のクッキングが始まった。



―料理を作る間、ステラは唯依の話を聞いていた。


「そう…じゃあ軍に配属されるまでは料理をしてたのね?」

「ああ…だが大規模BETA上陸で私達は通常よりも早くに配属されたんだ。」

「そうなの。…肉じゃがは誰からか教えてもらったの?」

「これは母から教えてもらったんだ。最も、あまり時間がないので過程は少し省いているが。」

「唯依のお母様ね。いいお母様なのでしょうね…親子での料理もいいものね。」

「ああ…」

母を誉めてもらった唯依はなんだか嬉しそうであった。
唯依は聞き上手のステラが相手だったため話しやすかった。またステラも唯依の話を聞いていて興味深かった。

(唯依も…やっぱり女の子、ね…)

ステラはこっそり微笑んだ。




「できた…」

「いい香りね。」

二人が完成させた頃にはもうパーティが始まっていた。

ステラはあらかじめヴィンセントからユウヤが何時に来るかを聞いていたため、頃合いを見計らってホールを覗いた。
ホールは人でごった返ししていたが、入り口近くで既に人混みに入るのを躊躇っているユウヤの姿があった。


「唯依、ユウヤ、来たみたいよ。」

「そ…そうか。」

「固いわよ?唯依?」

「……!」

「あら。仕方ないわね、私も一緒に行こうかしら?」

「お、お願いできるだろうかっ!」

必死の顔でステラに頼み込む唯依。


(まだまだ、2人だけ…っていうのは遠そうね。)

少し困ったような笑顔でステラは承諾をした。

まだまだ唯依とユウヤの距離は遠い。でも、少しずつでも距離が近くなっていけば。

そんな事を思いながら、ステラは唯依と共にユウヤの元へと向かっていった。