とある二人の無能力者2話
PM.2:38
静まり返った路地を駆ける1人の少女。
普段からスキルアウトがたまり場にしている路地裏の複雑に入り組んだ道を彼女は、
無線から届くパートナーの声を頼りに進む。
そして、せまい道から広い道まで情報をきちんと把握し、
じわじわと、奴等を追い詰めていった。
「ハァ、ハァ・・・もう行ったか?」
「たぶんな・・・」
今は廃墟と化した建物の一室に複数の男達が息をひそめるようにしてかくれている。
しばらくの間走っていたせいか、服は汗でびっしょりに濡れ息を切らしていた。
そんな彼らに、
「馬鹿野郎!お前たちのせいで失敗しただろうが!!」
中でも一際目立つほど体つきの大きな男の一喝が入る。
それに端の方に座っていた男が応えた。
「仕方無いだろ・・・予想外のことで全員対処が出来なかったんだ」
「出来ることがあったんじゃないのか!?」
「お前だってあそこにいただろ」
「・・・チッ!」
静まり返る廃墟。
ちなみに彼等は能力を持たない、そして集団で能力者を「狩る」スキルアウトだった。
彼らの今回の目的はATMの金。
理由は単純。
行動を起こすための資金調達だ。
「なぁ・・・これからどうすんだよ?」
そこに今までの沈黙を破り男達の1人が口を開く。
「・・・とりあえず、今日は一旦退いて後日に作戦を立て直す」
建物内の皆は一斉に立ち上がった。
「様子を見て、今日は解散だな」
リーダー格の男が視線で一人に合図を出す。
指示を出された男は嫌々窓の方に歩み寄り外を確認して、
そして・・・
「もう大丈夫みたいだなっぐふぅぅぅ!!」
パリン!という音と共に地面に倒れこんだ。
「おい!どうしたんだ!?」
「ちょっと待て!」
男の倒れた横に1人の少女が立っていた。
近寄ろうとしていた男達は一斉に距離を取る。
それぞれ個人の使い慣れた武器を片手に襲撃者の出方を見るが一向に動く気配がない。
「何とか言えよ!ああ!?」
「・・・・・・・」
なおのこと無言の少女に我慢出来なくなった男の1人が、
「テメェいい加減にしろよ!」
彼女に目がけて鉄パイプを振り下ろす。
しかし。
「なっ!!??」
先程まで窓の前にいた少女が消え男達の後ろに立っていた。
「何だこいつ!」
「ちくしょう、やっちまえ!!」
一斉に飛びかかってくるスキルアウトの集団に彼女は、
時に、
「っが!!」
得意とする体術を行使し、
「当たれー!!!」
時にすばやい判断力でそれらの攻撃をかわし、
「くぅ・・・構わねぇ、鉛玉ぶち込め!!!」
そして時に、
ガキン!!
金属が金属を貫く鋭い音。
「なっ!何で銃に金属の棒が!?」
「テメェもしかして、能力者か!」
「でしたら?」
瞬間移動能力「テレポート」を駆使する。
「お前一体何もんだ!?」
「私ですか?私は・・・・」
腕に巻いてある腕章を前に、
彼女は高らかに宣言した。
「ジャッジメントですの!」
「白井さん!2人が路地の方に逃げました!北の方向です」
一室に響くキーボードの音。
親友のすさまじい仕事ぶりに、今日もまた無能力者・佐天涙子は呆気に取られていた。
「いや〜・・・いつ見てもすごいですよね」
「本当よね・・・私には出来ないわ」
それに応えるのは常盤台中学のエースこと御坂美琴だ。
熱い紅茶を飲みながら、じーっとそれに見入る彼女達。
その視線の先には、どこかで戦闘中らしい白井黒子のに向けて、
アドバイスを送る風紀委員所属の初春飾利がいた。
「初春って学校の時の性格と風紀委員の仕事の時の性格がガラリと変わるからまいっちゃうんですよね」
「まぁメリハリをつけてるってことでいいんじゃない?」
「そうですけど・・・いつもみたいにスカートめくっても反応ないし」
「ええと・・・それはまた別だと思うけど・・・」
「あの反応を見るのが楽しみなのに無反応なんですよ!?私としては許せません!!」
「あはは…」
ちなみに朝と放課後の2回に分けて佐天の1日の行動構成にスカートめくりが割り当てられてしまっている以上、今さらやめろと言われても出来ないのが事実だ。
「本当ですか!良かった…」
突然の声に目を向ける2人。
「はい…はい…分かりました。こちらから連絡しておきますね、また後で」
「初春?どうしたの?」
イヤホンマイクを外し、ふぅと息をつく初春に尋ねる。
「白井さんから連絡があって。無事に犯人全員を拘束したみたいです」
「黒子が?」
初春の後ろからパソコンの画面を覗くようにして立っていた佐天の横で御坂が言う。
「現地での後始末・・・・が終わり次第戻ってくるそうですよ」
「今回はずいぶんと時間かかったわね」
と言いつつも安堵した顔を浮かべる御坂に、
「とは言っても心配だったんですよね?」
「し、心配?わ・・・私があの子に心配なんてするわけ」
「あっ、照れてる」
「てっ、照れてない!」
そんな慌てた様子を見て思わず微笑んでしまう。
なんだかんだで白井のことを大切に思う先輩の、
照れ隠しに対してだ。
「後輩思いなんですね」
「初春さんまで!」
風紀委員活動第177支部に御坂美琴の声が響き渡る。
20分後。
白井と合流した佐天達は支部からさほど離れていないファミレスの店内にいた。
日中ということもあって店内の席は満員状態だ。
そんな中、
「はぁ〜、本当やってられませんわ」
「まぁまぁ、落ち着いて下さい」
熱いお茶を口にし、溜息をつく白井にそれをなだめる初春。
簡潔に言ってしまうと白井黒子は不機嫌である。
「黒子あんたさっきからどうしたのよ?」
「黒子のことはほっといて下さいまし。どうせいつものことですから」
「ん〜白井さんがこんな感じだと調子狂うなー」
「全くよ。いつもの元気はどこに行ったのかしら」
佐天や御坂の反応に白井はより一層むくれるばかりだ。
いよいよ何があったか気になった佐天は初春に標的を変える。
「ねぇ初春。何があったの?」
「え〜と・・・それは」
ちらっと向かい側でふてくされている白井に視線を向け、様子をうかがう。
「それがですね・・・」
風紀委員(ジャッジメント)とは、
能力者の学生たちによる学園都市の治安維持機関であり、
原則として校内を管轄とする仕事が常である。(一部例外があるが)
よって、あくまで学生の機関であるので重要な任務に就かされることはなく、
犯罪などの大きな事件などは風紀委員より職責・権限が上である、
警備員(アンチスキル)が管轄している。
アンチスキルの主な活動としては科学組織との戦いや、都市外部への派遣などあり危険な仕事が多い。
何が言いたいかというと。
あえてもう一度言おう。
ジャッジメントは原則として校内を管轄する。
アンチスキルは原則として校外を管轄する。
ちなみに警備員は風紀委員より権限が上である。
言いかえると警備員は校内にも管轄が及ぶが、
風紀委員は校外の事件などに干渉が出来ないということ。
これは基本条例に明記されていることである。
静まり返った路地を駆ける1人の少女。
普段からスキルアウトがたまり場にしている路地裏の複雑に入り組んだ道を彼女は、
無線から届くパートナーの声を頼りに進む。
そして、せまい道から広い道まで情報をきちんと把握し、
じわじわと、奴等を追い詰めていった。
「ハァ、ハァ・・・もう行ったか?」
「たぶんな・・・」
今は廃墟と化した建物の一室に複数の男達が息をひそめるようにしてかくれている。
しばらくの間走っていたせいか、服は汗でびっしょりに濡れ息を切らしていた。
そんな彼らに、
「馬鹿野郎!お前たちのせいで失敗しただろうが!!」
中でも一際目立つほど体つきの大きな男の一喝が入る。
それに端の方に座っていた男が応えた。
「仕方無いだろ・・・予想外のことで全員対処が出来なかったんだ」
「出来ることがあったんじゃないのか!?」
「お前だってあそこにいただろ」
「・・・チッ!」
静まり返る廃墟。
ちなみに彼等は能力を持たない、そして集団で能力者を「狩る」スキルアウトだった。
彼らの今回の目的はATMの金。
理由は単純。
行動を起こすための資金調達だ。
「なぁ・・・これからどうすんだよ?」
そこに今までの沈黙を破り男達の1人が口を開く。
「・・・とりあえず、今日は一旦退いて後日に作戦を立て直す」
建物内の皆は一斉に立ち上がった。
「様子を見て、今日は解散だな」
リーダー格の男が視線で一人に合図を出す。
指示を出された男は嫌々窓の方に歩み寄り外を確認して、
そして・・・
「もう大丈夫みたいだなっぐふぅぅぅ!!」
パリン!という音と共に地面に倒れこんだ。
「おい!どうしたんだ!?」
「ちょっと待て!」
男の倒れた横に1人の少女が立っていた。
近寄ろうとしていた男達は一斉に距離を取る。
それぞれ個人の使い慣れた武器を片手に襲撃者の出方を見るが一向に動く気配がない。
「何とか言えよ!ああ!?」
「・・・・・・・」
なおのこと無言の少女に我慢出来なくなった男の1人が、
「テメェいい加減にしろよ!」
彼女に目がけて鉄パイプを振り下ろす。
しかし。
「なっ!!??」
先程まで窓の前にいた少女が消え男達の後ろに立っていた。
「何だこいつ!」
「ちくしょう、やっちまえ!!」
一斉に飛びかかってくるスキルアウトの集団に彼女は、
時に、
「っが!!」
得意とする体術を行使し、
「当たれー!!!」
時にすばやい判断力でそれらの攻撃をかわし、
「くぅ・・・構わねぇ、鉛玉ぶち込め!!!」
そして時に、
ガキン!!
金属が金属を貫く鋭い音。
「なっ!何で銃に金属の棒が!?」
「テメェもしかして、能力者か!」
「でしたら?」
瞬間移動能力「テレポート」を駆使する。
「お前一体何もんだ!?」
「私ですか?私は・・・・」
腕に巻いてある腕章を前に、
彼女は高らかに宣言した。
「ジャッジメントですの!」
「白井さん!2人が路地の方に逃げました!北の方向です」
一室に響くキーボードの音。
親友のすさまじい仕事ぶりに、今日もまた無能力者・佐天涙子は呆気に取られていた。
「いや〜・・・いつ見てもすごいですよね」
「本当よね・・・私には出来ないわ」
それに応えるのは常盤台中学のエースこと御坂美琴だ。
熱い紅茶を飲みながら、じーっとそれに見入る彼女達。
その視線の先には、どこかで戦闘中らしい白井黒子のに向けて、
アドバイスを送る風紀委員所属の初春飾利がいた。
「初春って学校の時の性格と風紀委員の仕事の時の性格がガラリと変わるからまいっちゃうんですよね」
「まぁメリハリをつけてるってことでいいんじゃない?」
「そうですけど・・・いつもみたいにスカートめくっても反応ないし」
「ええと・・・それはまた別だと思うけど・・・」
「あの反応を見るのが楽しみなのに無反応なんですよ!?私としては許せません!!」
「あはは…」
ちなみに朝と放課後の2回に分けて佐天の1日の行動構成にスカートめくりが割り当てられてしまっている以上、今さらやめろと言われても出来ないのが事実だ。
「本当ですか!良かった…」
突然の声に目を向ける2人。
「はい…はい…分かりました。こちらから連絡しておきますね、また後で」
「初春?どうしたの?」
イヤホンマイクを外し、ふぅと息をつく初春に尋ねる。
「白井さんから連絡があって。無事に犯人全員を拘束したみたいです」
「黒子が?」
初春の後ろからパソコンの画面を覗くようにして立っていた佐天の横で御坂が言う。
「現地での後始末・・・・が終わり次第戻ってくるそうですよ」
「今回はずいぶんと時間かかったわね」
と言いつつも安堵した顔を浮かべる御坂に、
「とは言っても心配だったんですよね?」
「し、心配?わ・・・私があの子に心配なんてするわけ」
「あっ、照れてる」
「てっ、照れてない!」
そんな慌てた様子を見て思わず微笑んでしまう。
なんだかんだで白井のことを大切に思う先輩の、
照れ隠しに対してだ。
「後輩思いなんですね」
「初春さんまで!」
風紀委員活動第177支部に御坂美琴の声が響き渡る。
20分後。
白井と合流した佐天達は支部からさほど離れていないファミレスの店内にいた。
日中ということもあって店内の席は満員状態だ。
そんな中、
「はぁ〜、本当やってられませんわ」
「まぁまぁ、落ち着いて下さい」
熱いお茶を口にし、溜息をつく白井にそれをなだめる初春。
簡潔に言ってしまうと白井黒子は不機嫌である。
「黒子あんたさっきからどうしたのよ?」
「黒子のことはほっといて下さいまし。どうせいつものことですから」
「ん〜白井さんがこんな感じだと調子狂うなー」
「全くよ。いつもの元気はどこに行ったのかしら」
佐天や御坂の反応に白井はより一層むくれるばかりだ。
いよいよ何があったか気になった佐天は初春に標的を変える。
「ねぇ初春。何があったの?」
「え〜と・・・それは」
ちらっと向かい側でふてくされている白井に視線を向け、様子をうかがう。
「それがですね・・・」
風紀委員(ジャッジメント)とは、
能力者の学生たちによる学園都市の治安維持機関であり、
原則として校内を管轄とする仕事が常である。(一部例外があるが)
よって、あくまで学生の機関であるので重要な任務に就かされることはなく、
犯罪などの大きな事件などは風紀委員より職責・権限が上である、
警備員(アンチスキル)が管轄している。
アンチスキルの主な活動としては科学組織との戦いや、都市外部への派遣などあり危険な仕事が多い。
何が言いたいかというと。
あえてもう一度言おう。
ジャッジメントは原則として校内を管轄する。
アンチスキルは原則として校外を管轄する。
ちなみに警備員は風紀委員より権限が上である。
言いかえると警備員は校内にも管轄が及ぶが、
風紀委員は校外の事件などに干渉が出来ないということ。
これは基本条例に明記されていることである。
作品名:とある二人の無能力者2話 作家名:ユウト