とある二人の無能力者2話
「第一位には弟でもいんのかよ…アイツ一歩も動いてないのに」
第一位というのには気になることがあったがひとまずおいておくことにした。
基本的に具体的な能力の特徴を聞かなければいけないのに、ほとんどの負傷者が皆口を揃えてそう言う。
そして何より困難を極めたのは、
「能力なのかも怪しいんだよな…」
の一言だった。
能力者による事件ということで捜査が始まってからの一言…根底が覆えされては調べられるものも調べられない。
能力者ではないのかそうなのか・・・詰まる所、捜査は平行線だった。
「ふ〜ん・・・なんだかややこしいね」
「現場の状況から見てたぶん能力者だとは思うんですけど・・・」
さっきと違ってだんだん深刻そうな顔つきになる友人の顔を横から見る。
いつもならすぐに解決するはずのものが上手くいかず、
なかなか進まないのを気にしているんだろうか。
何だかすっかりしょぼんでしまった初春を見て佐天は。
「初春ちょっと立って」
「え?どうしたんですか?」
「いいから!ホラ、立つ!」
「分かりましたよ、そんなに引っ張らないでください」
(ま・・・私にはこれくらいしか出来ないからね)
言われるがままにその場に立つ初春。
そして・・・
「元気出しなさい!!」
という友人の掛声とともに、
スカートが盛大に捲り上がった。
「へ?」
間抜けな声から数秒後。
「きゃああああああああ!!??」
初春の叫び声が公園内に響き渡った。
「な、ななな何するんですか!?」
「何って・・・元気づけだけど?」
「元気づけって・・・全然元気づけになってません!」
「今日は水玉模様だったね」
「そ、そんなこと言わなくていいです!!」
「あはは、それくらい元気があれば事件なんてすぐに片付いちゃうね」
「佐天さんの意地悪〜」
「褒めても何も出ないよ〜?」
「褒めてません!」
たわいもない会話を続ける佐天達。
時はすぐに経ち、
「そろそろ帰ろっか?」
「そうですね」
ベンチから立ち上げり帰宅路につく2人。
「最近やけに疲れるな〜」
「テスト前だから課題もやけに多いですしね」
「なかなか進まなくてさ・・・ということ初春頼んだ!」
「ま、またですか・・・」
「まぁいいじゃない、ね?」
「はぁ〜佐天さんそろそろ自分で勉きょ」
「どけー!このクソ野郎!!」
そんな2人の耳に突然男の叫び声が響く。
びっくりし声のした方向に目を向けると、
1人の男が反対車線の歩道から全速力でこちらの歩道にむかってきている所だった。
「赤信号なのに危ないですね」
と職務の為初春が男に注意しようと近寄った時だった。
ズドンッ!という音ともに男の上に大型のトラックが落下してきた。
「なっ!?」
いきなりのことで思わずその場に固まる初春。
後から佐天が駆け寄ってくる。
「初春!何があったの?」
「分かりません・・・あの男の人は・・・」
砂埃が飛び視界が晴れたところで男の姿を探す。
「う・・うぅ・・・」
(いたっ!トラックとアスファルトの間に・・・)
あまりの偶然さに驚きはしたものの生きているのを確認し安堵したのも束の間、
「ったくよぉ・・・手間かけさせんじゃねぇよ」
静かな、どこか違和感のある声した。
ふと顔を上げるとそこには私服姿の男が立っていた。
ぱっと見た感じ高校生くらいだろう。
「鬼ごっこは裏路地でやろうぜ。こんな所まで来たら色々面倒臭いっての」
「あなた誰ですか?」
「ああ?」
恐る恐る声をかけると少年はこちらに振り向く。
「んだよお前らは、こっちは取り込み中なんだ。どっか行ってくれ」
「あれはあなたがやったんですか?」
「だったら?」
「風紀委員として見過ごせません」
少年はしばらく黙りこむと、
「よしよし・・・分かったよ」
下を向きその顔を上げたその瞬間。
「3人まとめて死んでくれ」
ぞっとするような目つき。
「!?佐天さん逃げて!!」
「ちょっ、初春!?」
初春が佐天の手を引きその場を離れようとしたその時。
鉄の何かが潰れる音がして、
次の瞬間。
あたりに爆風と閃光がまき散らされた。
作品名:とある二人の無能力者2話 作家名:ユウト