お猫さまと私達
だからあの野郎、最近俺の部屋に来なかったのか……。
別に石田は何もしてねぇ。何かをした、やらかしたと言えば俺がやらかした訳だが――合点がいったところで、周囲に己の苛立ちがバレていたことを思えば、今度は何だか無性に気まずい気分になって溜め息を吐いた。そして再び野郎を見れば、野郎も俺につられるように眉を八の字に垂らして「なんて顔してんスか、アニキ」と呆れたように此方を見た。
きっと今更気付いたのか、とかそんな事思われてんだろうなと呆れた表情に当て嵌めてみる。
あーあー、どうせ俺は周りの事なんてお構いなしな横柄者だよ。
だったらどうした。悪かったなぁ!――と、常の俺だったらきっと開き直って言えるだろうが、今回の件については、完全に俺の八つ当たりだと分かっているから、何も言い返せねぇ。
「一体何をそんな怒ってたんスか?」
「あー……えぇーと」
「言えないようなことっスか。俺らは別に慣れてっスけど、三成さんにはちゃんと訳を伝えといて下さいよ」
「あ……おぅ、うん。分かってる」
どうだかなぁ。
曖昧な俺の態度に野郎は苦く笑って、それ以上は何も言わなくなると、絡繰り資金の帳簿に目を落とした。