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【ポケモン】獣がポケットにおさまるまで

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 おとこのこは、自分の村に帰ると、おとなのひとにおはなししました。
「ぼくは魔獣と友達だよ。ほんとだよ」
 おとなのひとは、最初は相手にしませんでした。けれど、おとこのこはそれでも一生懸命説明しました。きいろい魔獣が林檎をくれたこと、ヒトはおおきな誤解をしていること。けれどおとこのこは挫けませんでした。なぜなら、時々草叢から黄色と黒の耳がのぞいていることを知っていたからです。あんまりにもおとこのこがめげないので、今度は、証拠を出せと言われました。
「証拠は? 証拠。これがないと話にならない。魔獣と友達だっていうなら、その証拠を見せろよ」
 これがないと話にならないというくせに、おとなのひとがその主張を持ち出すのは、随分後になってからでした。
 おとこのこは必死に魔獣を探しました。
「魔獣、魔獣! 林檎をくれた電気の魔獣! お願い、出てきて!」
 がさり。
 そこにいたのは紛れもなく、あの魔獣でした。きいろい姿、まっかな頬、ぎざぎざのしっぽ。それが一度に何体も――。そう、「そこにいたのは紛れもなく、あの魔獣でした」。
 ぴかっちゅう。ぴかぴか。ちゅう。
 それでも魔獣たちは、おとこのこの足元に寄って来て、甘えた声を出しました。おとこのこはうれしくなって走り出しました。魔獣たちもついてきました。
「みんな、みんな聞いてよ、見てよ。ぼく、ほんとに魔獣と友達なんだよ!」
 おとなのひとは驚きました。そして、おとこのこを疑いながらも、とりあえずごめんなさいを言いました。
 それからしばらくして、その村は、ヒトと魔獣が仲良く暮らす、とても素敵な村になりました。

「これで、よし」
 少女は笑った。本物の博士が帰ってきたら、ゾロアの本と併せてこのお話も読んであげようと思った。
 ――珈琲を、淹れようか。林檎を、剥こうか……。