新生勇者戦記ブレイヴサーガ・ディザスター 第93話
彼氏の珍妙な闘いをよそに、彼女の演技は続く。ラストの毒を飲んで自殺する演技だ。
澪 「この身が朽ち果てようと、二度と君を離しはしない!!」
澪を照らしていたスポットライトが消えた。そしてしばらく間を置き、今度は律にスポッ
トライトが照らされる。
律 「ああ、ロミオ!!何故私の分の毒を残しておいてくれなかったの?!!・・・・・
待っていて・・・この剣が私をあなたの許へと連れて行ってくれる・・・・。」
律の熱演ぶりに会場は釘付けとなっていた。律は剣を胸に突き刺した。
律 「ううううっ・・・・!!!」
倒れこんだ澪に被さるように倒れこむ律。勇士朗も感動に浸ろうとするが、次のボケに備
えた体制を作ってしまう。だが・・・。
蓮 (うわああああああん・・・・律が死んじゃったぁぁぁ・・・・!!!)
勇士朗 (今更感情移入してんじゃねえええええ!!!!)
涼 (さっきからなにやってるんだ??蓮先輩達・・・。)
そして劇は拍手喝采の中、幕が降りた。初めて桜校へ来た撫子やさやか、直も迫真の演技
に感動しながら拍手していた。
無事劇は終了した。クラスのそれぞれがお疲れ様のムードで舞台を片付ける。澪と律も一
山乗り越え、ほっと一安心した様子だ。紬が2人に水を渡す。
その後、勇士朗達も一時的に澪達と合流。楽しく語らいながら過ごす。舞台裏の話題や、
観客席の攻防戦(??)の話題等で盛り上がっていた。
その中で澪は勇士朗を呼びとめ、少し場所を移す。無論、中学生男子と光、蓮は興味津々
で行こうとするが、それぞれの彼女もしくは意中の女子達に止められる。
人目がつかない校舎の片隅。澪は恥ずかしそうにもじもじとしながら勇士朗としゃべって
いる。彼女は今日に至るまでのお礼の気持ちを言っていた。
勇士朗も照れくさそうにしている。そして勇士朗と澪は、顔を赤くしながらゆっくりとそ
の唇同士を近づけ合い、キスをした・・・。
さながら願いが成就したロミオとジュリエットのように・・・。
その日の夜。澪達は泊り込みで練習することになる。その息抜きにみんなで屋上に来てい
た。11月の時に涼しく時に肌寒い風が吹く中、満天の星空が広がっている。
被服室で篭りきりだったさわ子も息抜きで彼女達と屋上に来ていた。
梓 「ううーっ寒いっ!制服の上着部室に忘れてきちゃいましたよ〜・・・!」
唯 「なら、私が暖めてあげるっ!ぎゅーっ!!」
梓 「ひゃあっ・・・・もう、唯先輩ったらー!」
唯 「きゃーっ、あずにゃーん!!」
じゃれあう2人を見て律は屋上に来た選択を反省する。
律 「はははっ、ん〜・・・・でも屋上じゃ流石に寒かったかなー。」
紬 「けど、夜の屋上に来るの初めてー。なんだかわくわくしてくる!!ほら、夜空がこ
んなに綺麗っ!!」
さわ子 「この季節になると、段々空気が澄んでくるからよ。こういう日に夜景を見に行
くととても綺麗でロマンチックに映るのよ!」
紬 「彼氏さんと行ったりするんですか?!」
すると、さわ子の中で今を闘う要の事が過ぎった。次の日の学園祭には来ると約束してく
れているのだが、彼が背負った痛みを思い起こしてしまう。
さわ子 「まーね。たまに出かけてるわ。んんー・・・身体伸ばそ、伸ばそー!」
その時やや強めの風が吹く。薄着の梓は寒くてたまらない。梓に限らず皆が肌寒さを感じ
る風が吹きつづける。
梓 「ひゃああ!!寒いー!!」
澪 「ううーっ、唯っ!!」
紬 「りっちゃーん!」
律 「おおう?!」
唯に澪がくっつき、律に紬がくっついた。結果的に先輩達が梓を挟むようにくっつく。更
に何度も吹き続ける初冬の風。紬は唯と手を重ねあう。
紬 「うう〜・・・こうすればりっちゃんと唯ちゃんに挟まれて暖かいでしょ?」
梓 「はいですぅ〜・・・。」
するとその時、さわ子が言い放つ。
さわ子 「みんなこっち見てー!」
え?となってさわ子へ向く一同。さわ子が手に持ったデジカメに気づいた唯と紬が笑う。
パシャッ!
光るフラッシュ。それから間もなく風が止む。満足気にさわ子は撮れた画像を見せながら
言った。
さわ子 「ん〜♪いい画が撮れた!!ほらほら!!」
律 「おおー!」
紬 「いいカットだぁ〜。なにかのモデルさんになった感じ!」
さわ子 「いいシャッターチャンスだった!!後で部室に張っとくわね。それにしても、
ラストのお墓のアドリブよくうまくいったわね?」
律 「本当だよ〜。静がオカルト研に友達いなかったら間に合わなかったんだぜー!!」
澪 「でもそのおかげで大成功だった!!オカルト研の2人にも感謝しなきゃな!」
すると紬が、彼女達へのお礼に憂からもらった料理のおすそ分けを提案した。
紬 「そうだ!憂ちゃんからもらった料理をオカルト研におすそ分けにいかない?」
律 「おー!いいな、それ!!お礼を兼ねていこーぜい!!」
紬の発案でその場を後にしたメンバー。いざオカルト研究部のドアを開く。
律 「しつれいしまー・・・・す・・・・??!!」
だが、そこには驚愕の光景が広がっていた。グレイタイプの異星人数人がオカルト研の生
徒を担いで誘拐を図ろうとしていたのだ。まさにキャトルミューティレーション。部室の壁は
綺麗にくりぬかれていた。
物音立てることなく進入した彼らの目が光る。直に視線を合わせてしまった澪の絶叫が、
桜校の校舎に響いた。
グレイタイプ異星人 「キュイイイイイ・・・・!!!」
澪 「ひっ・・・・きゃあああああああああああああああああ!!!」
つづく
作品名:新生勇者戦記ブレイヴサーガ・ディザスター 第93話 作家名:Kブレイヴ