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Wizard//Magica Wish −5−

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ハルトは大人達が集まる前に電気屋を後にした。もちろん、ウィザードの事がばれてしまうと色々と面倒なので変身を解除し一目散に出口へと逃げた。
頭の中ではこのあと歓声が押し寄せてサインや握手…等といった事を考えていたらしい。だが現実はそう上手くいくわけがない。
突然目の前に人物の姿が変わったらまず驚くところから始まるだろう。しかも子供にとっては状況の理解と処理がしきれず、その場で泣き叫ぶのがオチだ。


「ここまで来れば大丈夫か…ったく、なんで泣いちゃったんだろう?」

「…ッ!…操真 ハルト」

「え…あれ、今日平日だよね?ほむらちゃん。学校は?」


電気屋から少し歩いたところにばったりと暁美 ほむら と出会った。
もちろん、今日は平日で学生は学校に登校しなくてはいけない。だが、目の前にいる彼女は私服姿で珍しいことにメガネをかけていた。そこまで派手な服ではなく、軽いデザインが入った白い服に黒いスパッツに膝が隠れるか程度のスカートにヒールを履いており、よく雑誌で見かけるモデルが好むファッションだ。大人っぽい格好が好みなのだろうか。
手荷物はバックのみで買い物袋は特に持っておらず、学校をサボって買い物…という訳ではない。
彼女は一瞬戦闘態勢に入ろうとしたが、まどか との契約を思い出したのか軽く咳払いを一度し、長い黒髪をふぁさっと風になびかせた。

「あなたには関係ないわ。あなたこそ何をしているの?他にやることがないのかしら」
「まあ散歩だよ散歩。軽い運動だよ」
「そう、なら夕方までそうやってだらけていることね」

そう言い残し ほむら はハルトの横をスタスタと歩いて行った。
もちろん、ハルトは ほむら に興味を持ち、すぐ彼女の横へと駆け寄る。
ほむら は軽くイラついたのかハルトの顔を見上げて眉間にシワをよせた。
いかにも こっちくんな! と言っているかの様子だ。

「…何なの?」
「ほむらちゃんってメガネかけることあるんだね~。しかも何気に似合っているし」
「そう、運がよかったわね」

ほむら は若干歩くスピードを早める。
しかし負けじとハルトもそのスピードに合わせた。ハルトのほうが長身のため彼女と並走するのは容易だったのだ。
ほむら は普段感情を表に出すことはほとんどといって無い。だがその額には軽く汗が滲み出ており息が微かに荒くなっている。相当イラついている証拠だ。

「何故着いてくるの?」
「だって暇だし」
「私の後を着いてきても何もないわ」
「だったらなおさら気になるよ。学校サボってどこ行く気してるのさ」
「あなたと一緒にしないでもらえないかしら?私は目的があって今日は休学しているのよ」

ほむら はまた歩くスピードを早める、が、ハルトにとっては何の意味もなかった。
ただ自分の体力が減っていくばかりで彼の顔をみると余裕そうに微笑む。

「いい加減にしてちょうだい。今は 鹿目まどか との約束…いえ、契約を結んでいるからこうしておとなしくしているけど、その気になればいつでもあなたを襲う準備は整っているのよ?」
「まぁその時はまた ほむらちゃんを縛り上げてあげるよ。気に入ってるんでしょ?」
「黙りなさい。そんな趣味持っているのは、美樹さやか ぐらいよ」
「あっ、さやかちゃんに言ってやろ~」
「………はぁ…」


ほむら はハルトの意地に観念したのか、かるくため息をして歩くスピードを緩めた。
バッグからハンカチを取り出し、額にできた汗を拭き取りまた髪をなびかせた。


「…病院に行くのよ」
「へ?ほむらちゃんどっか調子悪いの?」
「持病よ、私は昔から体が弱いの。普段は魔力で補っているだけのことよ」

二人は街の中心部を過ぎ病院へと続く道を歩く。
つい先程まで建物ばかりだったが、自然に木々が立ち並ぶようになり人工物ばかりだったので目の保養になる。

「ずっとこうして病院に通ってるんだ、ほむらちゃん」
「あまり私を探らないでもらえる?まだ私はあなたを認めた訳ではないわ、…いえ、これから先も認めるつもりなんて、全くないけれど」
「ありゃりゃ、それはどうも…と、それでさ。ほむらちゃん」
「何?急に」

ハルトはふと、何かを思い出したかのように空を見上げる。
今日も快晴で雲一つ見当たらない。

「マミちゃんって、最近見ててさ、疲れてるって思わない?」

「巴マミ?彼女は魔法少女としてはベテランよ。そんな簡単には疲労は現れないと思うけど」

「そっかなぁ~、結構疲れてると俺思うんだけど…。仮にさ、マミちゃんを魔法少女の仕事休ませるって俺が断言したら、ほむらちゃんどう思う?」

「彼女は貴重な戦力よ、周りがどう言うのかわ知らないけれど私はあまり良い気はしないわね」

「そっか。…お、見えてきた」


そんな話しを二人がしていると目の前に大きな病院が見えてきた。
見滝原総合病院。この見滝原市で最も大きい病院でこの街以外の都市からも患者が運ばれてくることもしばしばある。ほむら は幼い頃から体が弱く長期の入院をしていた施設でもあるのだ。ちなみに さやか の思い人、上条恭介もこの病院で今もリハビリを続けている。

「…ふぅ、病院か。あんまり良い想い出はないな」
「なら帰りなさい。まさかまだ着いてくる気をしているの?」
「ははっ相変わらずの毒舌っぷりだぁ」

ハルトは流石に悪いと感じたのか、ここで ほむら と別れることにした。結局、本当に着いてきただけだった。まぁ特に用事も無く暇だったので良い時間つぶしにはなっただろうと自分を励まし、今通ってきた道を再び歩くのか、と重い足取りで帰ることにした。

−チャリンっ−
「あっ…しまった」

「…ん?」

ふと、自分の目の前に、ハルトとほぼ同い年ぐらいの男の子が杖を付きながら何かを地面から拾おうとしていた。どうやら100円玉を落としてしまったらしい。彼は身体が不自由なためか両脇に杖を装着して身体を動かしていた。だがその杖がネックになってしまい、手が地面へと届かない。

「ほら、これ君のでしょ。今度は気をつけるんだよ」
「あ、…ありがとうございます」

「じゃあね」

「あっ!…あ、あの」

「なに?」


「この病院で…その、僕と同い年の人見かけるの滅多にないから…その…」
「…?」

ハルトは100円玉を拾ってあげて帰ろうとしたところ、声をかけてハルトの歩みは止められた。さわやかな外見とは裏腹にどこかもたもたしく、内気な性格なのだろうか。まぁ病院みたいに隔離された空間にずっと生活していれば誰だってこうなるだろう。
彼はずっともじもじしているため一体何を伝えたいのかハルトは理解できない。

「もしよかったら、ちょっと話し…してきませんか?」

「あ…うん、暇だから良いよ」


・・・

作品名:Wizard//Magica Wish −5− 作家名:a-o-w