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とある2人の無能力者4話

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PM10:46

とある学生寮の一室。
玄関、キッチン、居間など、
光源となるべき電球はどれも光っておらず、
唯一その部屋を薄暗く照らしているのはパソコンのディスプレイの明かりだけだ。
音・・・という音もパソコンから響いてくる無機質なもの、マウスのクリック音のみ。
そんな部屋の中で今まで食い入るようにディスプレイを凝視していたこの部屋の主は、しばらくカーソルを上下させ椅子にもたれ掛かると・・・

「はぁ〜〜」



と盛大に溜息をついた。
長い黒髪、去年までは小学生だったとは思えないスタイル、無能力者であることにコンプレックスを抱いている少女、そう…佐天涙子は机の上に置かれた紅茶の入ったマグカップに手を伸ばし一口啜る。


ディスプレイに映っているのは彼女御用達の某掲示板だ。
ここにはいわゆる探偵ものが好きな人達が学園都市内で起きた事件などに関する情報を書き込んでいきそこから犯人を特定しようという探偵ごっこサイトだった。当然ながら書き込まれている内容のほとんどが嘘であり中には自分が犯人ですとか、次の事件の予告とかをしていく人もいる。
まぁその中から嘘か本当かを見極め真実を暴く…というのもこのサイトの要素の一つなのだろうが。佐天はここ一週間で起きた事件について今もっともサイト内で騒がれている事件の書き込みに目を通していた。
3日前の昼過ぎに起きた大通りの爆発事故の書き込み一覧を何度も上下させながらひたすら何か情報がないかを探す。

「……」
こんな事をしだしてからちょうど2日が経つ。
彼女の内には御坂の言っていたあの言葉が深く重く残っていた。

今の自分に出来る事を一生懸命やること。


結果的に彼女が今の自分に出来る事として始めたのがこの情報収集である。
それなりに自信はあったのだが案の定成果無し。
今もこうして同じ箇所を何度も見返している有り様だ。
何だか妙にモヤモヤした…さながら違和感のようなものが頭から離れないのを除けば収穫はゼロだ。ふとディスプレイの端に目をやると11時を過ぎている。

「ん…もうこんな時間かぁ〜て、お風呂入らなくちゃ」

んーっと体を伸ばすと佐天は椅子から立ち上がる。
早めの夕食を済ませてからずっとこうしていたので格好は制服のままだった。
案の定風紀委員の仕事の都合な為先に初春が帰ってしまったので家に帰る道中で、初春達には内緒で"あの現場"に行っていた。本当にここで2日前にあの事件があったのか?…と疑いたくなるくらいにあのビルの建っていた周辺は綺麗に工事されていて、あの倒壊したビルは変わらず同じものが建っていた。
改めて学園都市の科学力に驚かされたのは言うまでもなくしばらく唖然としてしまう自分がいる。
情報収集の為聞き込みをしようとも思ったが辺りにはアンチスキルの要員が二人一組で巡回していたため断念した。結局何も出来ないまま家に帰って来てしまい早めの夕食を済ませパソコンに向かい今に至っている訳である。
もう一度パソコンの画面に目をやり、風呂場に向かおうとしてー



「…、あれ?」


振り向く。
彼女はもう一度ディスプレイを凝視し…


「…あ、あああ!?」


何かに気付いた。








同時刻……





長い報告書の最後の一文字を打ち終えた初春は今の時間を確認しながら支部でのことを思い出していた。珍しく佐天とは帰らず学校からそのまま支部へ向かった彼女を最初に出迎えたのは固法先輩だった。

「こんにちは、先輩」
「今日は早いわね。まぁいつもが遅いって訳じゃないけど」
「白井さんはまだですか?」


初春の問いかけに固法先輩は手にしていた書類に目を通しながら答えた。


「白井さんならここに来る前に現場に立ち寄ってもらってるわ」
「そうなんですか…御坂さんは一緒じゃないんですね」
「あの事件以来必要以上にピリピリしてるみたいよ、御坂さん」
「御坂さんが?」
「犯人を捕らえられなかったこと…気にしてるみたい」


それは御坂本人の性格からきているものだということは初春もよく分かっている。
過去にもそういった言動はあったし予想出来できないことではなかった。とりわけ悪い性格だとは思わないがこうなると御坂は一人で何でもやろうとする傾向がある。きっといつも側にいる白井なら身に染みて分かっていることだろうが彼女が学園都市に七人しかいないレベル5だということは知っていてもやはり友人として心配である。固法自身も同じ事を考えていたのかしばらく手をとめるとぼそりと呟いた。


「無茶しないといいけど」
「そうですね…」

しばしの沈黙。


先に動いたのは初春だった。

「この間の事件、何か進展はありましたか?」

初春は自分の机まで行くとパソコンを起動して報告書に目を通す。

「いいえ、特には」
「…アンチスキル側も?」
「残念だけど、そのようね」

違和感…のようなものはあった。2日が経っても何の情報も得られないのは今までの経験上一度もない。普通なら目撃情報の一つや二つくらいならあってもいいはずだ。当日の事後処理のせいで自分で調べることは出来なかったがそれでもありえない。こう断言するのは早いのかもしれないが初春は何か、晴れないモヤモヤしたものを感じていた。
単にこの状況下で焦りを感じているからとかではなくもっと別の何かだ。



「事件発生から今に至るまでの間に学園都市から外に通じる出入り口の警戒態勢は随分上がったみたいよ。ここ2日で誰も出入りしてないわ。」
「それって空港も含めてですか?」
「空港は例外。外から来る人の制限はしてないみたいだけど学園都市から・・・は無しね」


(・・・そこまで警戒態勢を上げる必要が?)

死人が出る事件ではあったがひとつの国、といってもいいほどに世界のあらゆる事柄に精通している学園都市だ。事件の一つや二つで空港閉鎖など普通はありえない。
また。
不意にモヤモヤした不快な気分に襲われる。


(無事に解決すればいいけど)

結局その日の活動でも進展はなかった。
帰ってからはこうして今日の活動の報告書をまとめていたわけだ。


「♪〜〜〜」
「メール?誰から・・・」

無機質な機械音しか響いていなかった部屋に軽快な着信音が流れた。
椅子から離れるとテーブルの上にあった携帯を手に取り、送信者を確認する。


「佐天さん?」


送信者は佐天となっていた。
さっそくメールの内容を確認。

『う〜い〜は〜る〜!今日のパンツの模様は・・・じゃなくて』

「・・・」

何もメールの中でそれはやらなくても、と思う初春だったが続きがあったので(これで無かったら困っていたが)気を取り直して携帯の画面に目を戻す。


『何と!私、佐天涙子は重要なことに気付いてしまったのです。というわけで明日いつものファミレスに集合!白井さん達にも伝えておいて。時間は初春に任せた!』


始まりは・・・


この一通のメールからだった。





同時刻・・・


第3学区の地下街はよほどお財布に余裕があるか自棄になったかではない限り足を踏み入れがたい場所だった。