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整備員は、補給作業準備を終えたが補給を行おうとはしなかった。
その光景を食堂のモニターから見ていた避難民は、不安になっていた。
「何なの？
どういうことなの？
ねえ、サイ」
　フレイがサイに聞いたがサイは、何も答えられなかった。
そこにキラがやってきた。

　　　　　※

「ライズマン大尉、これは一体どういうことか説明していただきたい」
　これには、ブリッジにいたノイマン曹長が説明を求めた。
「まだあなたたちを友軍として認めたわけでは、ありません」
「どういうことですか？」
　ジャッキー伍長が反論した。
「ユーラシア連邦のほうには、貴艦の船籍登録もなく無論識別コードもない。
ヴェサリウスから友軍であるという情報は、受けているが重要な船籍登録と識別コードなどの情報はまだ入っていない。
そのためヴェサリウスが持つ船籍登録と識別コードを得てこの艦の士官らに経緯を聞いた後補給作業は、行われます」
　ライズマン大尉が2人に説明した。
「しかし」
　ノイマン曹長がさらに反論しようとしたがジャッキー伍長が止めた。
「軍事施設です。
この位のことは、ご理解いただきたいのですが」
　ノイマン曹長は、それ以上何もいえなかった。
「では、それまでゆっくり休んでいてください」
　ノイマン曹長は、怒りの念をこめてライズマン大尉を睨み付けていた。

　　　　　　※

　ノイマン曹長たちブリッジにいた皆は、食堂に集まっていた。
そこには、多くの人が集まっていた。
考えていることは、同じだった。

　　　　　　※

　アルテミスの司令官であるジェラード・ガルシア少将が副官とともにモニターでアークエンジェルを見ていた。
「大西洋連邦の極秘の軍事計画か。
よもやあんなものが転がり込んでこようとはな」
　ガルシア少将は、ルナツー攻防戦で敵前逃亡の容疑がかかりこのアルテミスに左遷されたためユーラシア本国の極秘計画を知らなかった。
それは、既に大西洋連邦の軍事計画がユーラシア連邦に情報が流れておりユーラシア連邦はその情報を基にこの5機のガンダムを凌ぐ超高性能モビルスーツを開発中であった。
大西洋連邦は、この軍事計画中に更なる高性能モビルスーツの開発が可能になったためこの初期計画がいらなくなってしまった。
そのためユーラシア連邦に計画を横流ししたのだ。
これは、アラスカのデスクトップで働くものたちしか知らず前線で働くものはその事実を知らなかった。
「ヘリオポリスが絡んでいるという情報は、本当だったようですね」
「連中には、ゆっくりと滞在してもらうことにしよう」
　副官の言葉にガルシア少将は、笑みを浮かべながらいった。
そのときドアのブザーが鳴った。
「失礼します」
　ビダルフ中佐だった。
その言葉にガルシア少将は、モニターの映像を消した。
「不明艦より士官4名とヴェサリウスからアデス艦長を連れてきました」
「入れ」
　ガルシア少将は、入室許可を出した。
ドアが開きそこにラミアス艦長、バジルール副艦長、フラガ大尉とクルーゼ中佐とアデス艦長が入室した。
「ようこそ、アルテミスへ」
　ガルシア少将は、5人を歓迎した。

　　　　　　※

　アークエンジェルでは、乗員と民間人が状況が理解できず食堂で情報を聞きあってた。
「ユーラシアって味方のはずでしょ？
大西洋連邦とは、仲が悪いんですか？」
　サイがジャッキー伍長にたまらず質問した。
「確かに大西洋連邦とユーラシア連邦は、仲があまりよくないがこの問題はそういうレベルを超えてるよ」
　ジャッキー伍長は、問題の大きさを説明した。
「識別コードがないのが悪い」
　ロメロ伍長がため息交じりで説明した。
「それってそんなに問題なんですか？」
　トールは、たまらずダリダ伍長に質問した。
平和な世界で生活してきた彼らに「識別コード」の重要性がどうしても理解できなかった。
「どうやらね」
　その質問にダリダ伍長が答えた。
肝心の軍人たちでさえその認識は、なかった。
「本当の問題は、別のところにありそうだがな」
　マードック軍曹は、うすうすガルシア少将の陰謀に気づいていた。
「ですね」
　その意見にノイマン曹長も同意した。
キラは、ため息をついた。
そんな姿をアスランは、心配そうに見ていた。

　　　　　　※

　ガルシア少将は、ヴェサリウスにあったアークエンジェルの識別コードをガルシア少将に渡した。
次にガルシア少将は、4人のIDナンバーを見ていた。
「ラウ・ル・クルーゼ中佐、マリュー・ラミアス大尉、ムウ・ラ・フラガ大尉、ナタル・バジルール少尉か。
なるほど。
確かに君たちのIDも大西洋連邦のもののようだな」
　ガルシア少将は、そこで初めて彼らを友軍と認めた。
「お手間を取らせて申し訳ございません」
　フラガ大尉が謝罪した。
「いや、なに。
輝かしき君の名は私も耳にしているよ、『ワトホートの鷹』殿、そしてクルーゼ中佐。
ルナツー攻略作戦には、私も参加していた」
「おや、それではビラード准将の艦隊に？」
　フラガ大尉は、思いもしなかった戦友との出会いに驚いた。
「そうだ。
准将は、部下たちを逃がすために自ら盾となって散っていった様はまさに『軍人の鑑』だった。
本当にわが軍は、惜しい人材を失った」
「わかります」
　フラガ大尉もガルシア少将の意見に同意した。
「しかし君たちがあんな艦とともに現れるとは」
「特務ですので仔細を申し上げることは、できません」
　今まで黙っていたクルーゼ中佐が説明した。
「なるほど。
補給は、行うがこちらも物資に余裕がなくて君たちの要求を呑めないかもしれないがわかってもらいたい。
それにすぐに出発するのは、困難かと思われるが」
「われわれは一刻も早く月の本部に向かわなければなりません。
まだコロニー軍にも追われていますので」
　ガルシア少将の説明にラミアス艦長がきっぱりと断った。
「コロニー軍？」
　ガルシア少将は、モニターのスイッチを入れた。
モニターには、η艦隊が映し出された。
その光景にラミアス艦長は、息を呑んだ。
「サオトメ」
　思わずバジルール副艦長は、艦名ではなく指揮官の名前を言ってしまった。
ガルシア少将は、いすを半回転させまっすぐモニターを見た。
「見てのとおり。
純白の死神がいる艦隊が傘の外でうろうろしている。
先刻からずっとな」
　純白の死神がいるだけでたいていの指揮官は、慌てふためくのだがガルシア少将は不気味なほど落ち着いていた。
「あんな艦の1隻や2隻など脅威では、ない」
　ガルシア少将は、再びいすを半回転させ5人を正面から見た。
「だがこれでは、出られまい」
「やつらが追っているのは、われわれです。
このままとどまりアルテミスまで被害を及ぼすことは、できません」
　ガルシア少将の言葉にフラガ大尉が反論したが笑い飛ばされてしまった。
「被害だと？
このアルテミスが？
やつらは、何もできないさ。
やがて去る。
いつものことだ」
　ガルシア少将には、絶対の自信があった。
「しかし司令、彼らは」
　フラガ大尉は、反論しようとしたがそこでガルシア少将に反論を止められた。
「とにかく君たちも少し休みたまえ。