機動戦士ガンダムRS 第6話 鉄壁の要塞
サオトメの脅威がなくなったといってもこの先コロニー軍のパトロール艦隊と鉢合わせをしないとも限らない。
そこでサオトメとの戦闘で疲れ果てパトロール艦隊に沈められたら今までの努力が水の泡だろ?
そうならないためにも休息は、必要だ。
部屋を用意させる」
ガルシア少将は、もっともな意見を言って5人を納得させようとしビダルフ中佐を呼んだ。
しかしまだフラガ大尉は、何か言いたげだった。
「失礼します」
ビダルフ中佐が入室し敬礼した。
「やつらが去れば月本部と連絡の取りようもある。
すべては、それからだ」
ガルアシア少将は、立ち上がってそういった。
「アルテミスは、死神の鎌をも防ぐ鉄壁の防御ですか?」
クルーゼ中佐が最後に質問した。
「ああ、まるで母の腕の中のようだ」
ガルシア少将は、アルテミスの防御力に絶対の自信を持っていた。
※
アークエンジェルの食堂では、皆に食事が配られていた。
「いつまでこんな状況なんでしょう?」
食事をもらったダリダ伍長がぼやいた。
「わからない。
艦長たちが戻らなければ何もわからない」
ジャッキー伍長の回答にダリダ伍長がため息をついた。
「友軍相手に暴れるわけにもいかないか」
ロメロ伍長が物騒なことを言った。
「いろいろあるんだな、地球軍の中でも」
それを聞いていたサイが寄せ集めの軍の統一のなさをいった。
キラは、先の戦闘のことを思い出していた。
サオトメの強さを少しわかったキラには、早く安全な場所に行きたかった。
※
「私は、あの艦にこのアルテミスの傘のデータを入力させるように命令しておいた」
部屋に向かう途中ガルシア少将は、そんなことを言った。
皆は、驚いたが1番驚いたのはクルーゼ中佐だった。
「私は、ルナツー攻略作戦でサオトメが駆るガンダムサイガーのビームライフルのビームがアガメムノン級のゴットフリートのビームを呑み込みそのままアガメムノン級を撃沈するところを見た。
そのとき私は、不覚にも失禁してしまった。
それからだ。
私は、防御兵器に力を注いだのは。
そしてアルテミスの傘として完成した。
どうかこの技術も月本部へ持っていってほしい。
交換条件として」
ガルシア少将は、説明した後にそう付け加えた。
「交換条件?」
たまらずフラガ大尉が質問した。
「あの艦とモビルスーツのデータをユーラシア連邦にもくれないか?
『アルテミスの傘』の技術を手に入れられるのであれば安いものだと思うが?」
「それは」
ガルシア少将の不当な要求にバジルール少尉が反論した。
「あの艦が大西洋連邦の極秘であることは、君たちの話からわかったがわれわれもそれ相応の代価を支払おうとしてる。
断れば補給の話もなしになるが」
ガルシア少将は、アークエンジェルの現状の足元を見た。
「わかりました。
よろしいでしょう。
もしアルテミスの傘を装備したモビルスーツが大量生産されコロニー軍に勝った暁には、司令の名は歴史に刻まれるでしょう」
クルーゼ中佐が毒があるような言い方で言った。
それを聞いたガルシア少将は、笑った。
「何を言っているのかね、中佐。
私は、ただ戦争を早く終わらせるために努力したのだ」
「大きな独り言です。
私の悪い癖でして」
クルーゼ中佐は、詫びのひとつもなくそういった。
※
「傘は、レーザーも実体弾も通さない。
向こうも同じだが」
ドゴス・ギアのブリッジでは、ブライアン艦長がアルテミスの傘の説明をしていた。
「だから攻撃してこないのか」
シグマン大尉は、アルテミスに近づいているのに敵が攻撃してこないことに疑問を感じていた。
「そのあたりは、まだ技術不足といったところだろう。
しかし防御するだけならそれだけで十分だ。
厄介なところに逃げられた」
サオトメは、あそこで撤退命令を出してしまったことに後悔を感じていた。
「それだったら隊長のガンダムサイガーS型のG-B.R.Dで超長距離から攻撃してみたらいかがでしょう」
サウス中尉がサオトメに提案した。
「能ある鷹は、爪を隠す。
何事にも強力な爪を用いれば万事解決ということでは、ないのだ」
サオトメは、力押し以外の作戦を考えていた。
「艦長、傘は常時展開しているわけではないんだよな?」
サオトメがブライアン艦長に質問した。
「ああ、周辺に敵がいないときまで傘を展開する必要はないから。
それは、既に偵察機の観測で確認済みだ。
しかしひとたびこちらが近づけば優れたレーダーでそれを感知しこちらの攻撃前に傘を展開する」
ブライアン艦長がさらなる傘の詳細情報をいった。
「試してみるか」
サオトメは、ある作戦を思いついた。
※
η艦隊は、180度回頭しアルテミスからいったん離れた。
※
それは、アルテミスでも確認できた。
司令部にいたガルシア少将に通信が入った。
「何だ?」
「コロニー軍の艦隊が離脱します。
イエロー18。
マーク20。
チャーリー。
距離700。
さらに遠ざかりつつあります」
「わかった。
後は、ライズに任せる。
引き続き対空監視を怠るな」
「了解」
いつものことだとこのときガルシア少将は、思っていた。
そのとき副官が入ってきた。
「どうだ?」
ガルシア少将の注目は、既にガンダムとアークエンジェルのデータしかなかった。
「はあ、それが艦の方の調査は順調なのですがモビルスーツの方が」
副官が現状報告を少々渋ませた。
「どうした?」
ガルシア少将は、その先を聞きたかった。
「OSに解析不可能なロックが掛けられていていまだに起動すらできないということです」
「何?」
副官の報告にガルシア少将の顔がこわばった。
「今技術者全員で解除に全力で充てているのですが解除の見込みは、ないです」
ガルシア少将は、いっそう顔をこわばらせた。
※
η艦隊は、さらにアルテミスから離れていった。
「アルテミスとの距離3500。
光波防御体は、以前変化なし」
ハリダ軍曹がブライアン艦長に報告した。
ドゴス・ギアのブリッジでは、シグマン機とサウス機のユーピテルがダミーバルーンに包まれていた。
ガンダムサイガーには、S型に換装されていた。
(ダミーバルーンで俺とサウスがアルテミスに近づく。
近づいたら隊長がガンダムサイガーのG-B.R.Dで超長距離狙撃で攻撃する。
光波防御体の発生器が現れたら2人でそれを破壊する)
シグマン大尉は、作戦内容を反復していた。
ほかの機体は、推進剤節約のためゲタに乗って発進準備を待っていた。
※
ガルシア少将と副官は、小型艇に乗りアークエンジェルに向かった。
※
「この艦に積んであるモビルスーツの指揮官パイロットと技術者は、どこかね?」
2人は、アークエンジェルの食堂に着くとガルシア少将は、そう聞いた。
「パイロットと技術者だ。
この中にいるだろ」
返答がなかったため副官がもう一度質問した。
思わずキラは、立ち上がろうとしたが後ろにいたマードック軍曹がそれを制した。
「クルーゼ中佐です」
ノイマン曹長が答えた。
作品名:機動戦士ガンダムRS 第6話 鉄壁の要塞 作家名:久世秀一