第9Q 子供も案外怖いかもよ?
っつうても――イライラすんだよ、このやり方はよ!!!なんかスカっとするやり方してぇ!!!!!
俺はしばらくしてから、お父さんの前に来た。
「ヘイッ、二つ言っといてやるぜ」
睨みながら、俺は続けた。
「一つは、この試合中に、絶対てめぇのシュートを叩き落としてやる。そして、もう一つは……」
俺はお父さんの後ろに回る。伊月先輩がお父さんに向かってパスを送った。それを、――お父さんの目の前で黒子がパスをして俺に送ったのだった。それをそのままダンクした。
「子供も案外怖いかもよ?」
「子供で話通すの、やめてください」
お父さんは驚いた顔をするのだった。
4-紺野舞
「子供も案外怖いかもよ?」
って、私は入ってないよね?
「お、おう」
火神くんがなにやら汗をかいている。大丈夫かい?
そう思っているうちに新協ボールだ。
「くっそ、そいやあんな奴いたっけか?とにかく、ボール回すぞ」
といいつつボールを別のやつにパスする新協主将だったが、それを目の前で黒子くんのパスに変えられ、私に渡った。
それを、スリープシュートで撃つ。
「はあ?!!!なんであの体勢で入るんだよ!!」
新協のメンバーが驚く中、私は笑みを浮かべる。
さて、そろそろ本気で行くか。
そこから、黒子くんのパス、私の柔軟なペネレイト、バカ神くんのダンクでがんがん点を挙げる。で、とうとう第1Qが終了し、15点差に至った!
「くそっ、なんだってんだよ!」などとイライラしながら戻っていく新協勢。
私たちの方は、全員が息を荒くしながら座り、相田先輩が言った。
「よし、よくやったわ。でも、大変なのはここからだからね。――まず、黒子くん、温存よ。紺野さんはどうする?」
「やめとき、ます。もう肺炎やばいし……」
「わかったわ。じゃあ、水戸部くんと……そうね、土田くん、入って」
二人は頷いて、ストレッチをする。相田先輩は続けた。
「ここからは二人を温存しないといけないから、攻撃力が落ちる中盤、いかに点差を縮められるか」
新協のベンチを見つめ、
「客観的に見れば、パパ以外には脅威になるような選手はいないわ。この試合はとどのつまり、」
バカ神を見据えて、
「二人が戻るまで火神くんがパパにどこまで踏ん張れるか。それに尽きるわ!」
そう告げた。それにバカ神くんは答えた。
「任せろ!っスよ」
向かいの新協では、怒れる監督が低い声で言っていた。たぶん、こう言ったのかな、と思う。
「お前ら、どいつもこいつも……やる気はあるのかね?」
それにびくりとする新協選手たち。さらに監督はパパの方を見て続けた。
「特にパパ……寝坊した上にこの体たらく。十分寝たんじゃなかったのかね?」
「ネテマセン!じゃなくて、ネマシタ!」
監督はフンッと軽く鼻息を出して、レギュラーに告げた。
「パパがいるんだ。高さで勝負すれば、勝てる。練習通りに行け」
「「「「「はいっ!!」」」」」
第2Q開始のブザーは鳴り、新協主将と会話して、軽く叫んでいた。
「練習ヤダ!試合がイイ!」と。
そこからパパはまた牙を向いた。
「う、お……」
バカ神くんはパパに圧され、シュートを許してしまった。
明らかに、高さが増している!だんだん本性が出てきたようだ。
パパはバカ神を見ながら、言う。
「もう本気!負けなイ!」
それに対して、ニヤリと笑みを浮かべて答えた。
「ハッ、そうこなくっちゃな。テンション上がるぜ、お父さん!!」
そんなやり取りの後、12-24。やや点差が縮まった頃、日向先輩が3Pを失敗させた。そのリバウンドにパパとバカ神くんが備える。お互いに手を伸ばし、届いたのは――バカ神くんだった。
そのままゴール手前からボールを入れ込む。
「ナイスリバン!ナイッシュ!」
少しイラついた様子のパパを「気にすんな!ボール回すぞ!」とフォローし、またフリースローラインにいるパパにボールが、向かう。
パパはキャッチして、ゴールを見据え、撃っ……つ前にバカ神くんが跳んだ。鬼のような気迫がここまで向かってくる。パパは新協選手にボールを返す。
「どうした、パパ?勝負勝負!――もう一度だ、パパ!」
しばらくしてボールが再びパパに回り、シュートを打とうとするも、
「ナンデ?ナンカどんどん高クなってる?!」
バカ神くんが上になり、止められた。
「火神すげぇ!踏ん張るどころか、全然負けてねぇ!カントク、特訓の成果出てるッスよ!」
瓦くんは言い、相田先輩はオドオドと答える。
「うん……てゆうか、出過ぎ、かな?」
「え?」
カントクは驚いたように続けた。
「いや、すごいのは知ってたけど、なんか黄瀬くんとやりあってから、一段とパワーアップしたような……」
思い出す。ニセの言葉。
<いつか必ず、『キセキの世代』と同格に成長して、チームから浮いた存在になる>
バカ神くんは、またブロックを成功させた。
<そのとき、火神は……今と変わらないでいられるんスかね?>
今はまだ考えないでいい事項だと思い、払う。ニセの言葉だし。
その頃、
「新協、3Pだ!」
主将が放り、点は51ー60。余談は許されない……。
「二人共!どっちか出れる?」
「むしろ結構前から出れましたけど」
「そう、じゃあ黒子くん、よろしく」
そこから試合では再び黒子くんによるミスディレクションのパスが展開された。
「どーなってんだ、あのパスは!!」
新協一勢が再び驚く中、まだまだ点差は伸びていく。
やがて、再度バカ神くんがシュートするパパの前に来た。そして叫んだ。
「俺たちが弱い?キセキの世代が弱い?戦ってもねぇのに、言ってんじゃねぇ!!そして、あいつらのが断然強ぇわ!!!」
バカ神くんの手が見事にボールを叩き落としたのだった。
直後、試合終了のブザーが鳴り響いた。
「67ー79、誠凛高校の勝ち!!」
「ありがとうございました!!」
上着を着て、『次の試合は……』という放送を聞き流す。
そこへ、バカ神くんのもとにパパが来た。
「負けたよ…ボクたちのぶんまで、がんばって下サイ」
「お、おう」
少しおどおどとしながら答えた。が、
「ナンテ言うか!バカバーカ!!次は負けナイ!!」
その侮辱にバカ神くんは、肩をプルプルさせていたのだった。
とりあえず、
初戦突破である。
5-高尾和成
ガラガラガラッ
さて、俺は今、新協と誠凛との試合を見終えた真ちゃんを荷台乗せ、自転車で走っている。
「ったく、今日も見たいとか、お前同中のやつにどんだけ注目してんだよ」
呆れながら言うと、返しも呆れながら来た。
「違うのだよ。ただ外国人留学生というのに興味があっただけだ」
「留学生だー?興味あんのは誠凛じゃねぇの?」
小さく、「違うと言っているだろう、バカめ」と呟かれる。
俺は無視して、前を見て言った。
「ってか、俺もあいつらに興味出てきたわ。上がってこいよ~」
誠凛が秀徳までの壁は、あと6戦。
NG
火神(えっと、「二つ言っとくぜ」、だよな)「I tell you two things.」
パパ「へ?なんてイッタ?」
火神「だから、I tell you two things.」
パパ「意味ワカンナイヨ」
火神「英語だぞ?!もう帰国子女やめろ!!!」
黒子「テストのあてつけしないでください」
作品名:第9Q 子供も案外怖いかもよ? 作家名:氷雲しょういち