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氷雲しょういち
氷雲しょういち
novelistID. 39642
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第11Q この試合、絶対勝ちたいです

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私のシュートは…よし、入った。
と、隣にいるクリ旗くんが恐々と口を開く。
「や、やべぇ……超びびってきた。普通に観客いるし、会場も今までみたいな学校体育館じゃねえし」
「なら帰れ」
「しかも王者二連戦。ってか、連戦以前に、一つ勝てるかもキツいよ」
「なら死ね」
「待って、オレはどういうポジションなの?」
「ううん……フリハタ、カッコ笑い?」
「ちょっ!!」
「冗談冗談」
「ああ、よかったー」
「帰れ、だけわね」
「死ねは?!」
そんな彼を無視し、なんとなくおは朝魔くんに目をやる。
あちらも私たちを見ていた。
バカ神くんやホクロくんも、目を鋭くしていた。
そのバカ神くんの頭は、
「ガン飛ばす相手が違ぇよ、ダアホ」
日向先輩にグリッと回された。
痛そうだ。
「痛てぇ!」
そりゃそうだ。
「お前な、いくら飛ばしても、次負けたらただのアホだろうが」
バカ神くんは首をマッサージしながら、日向先輩の言葉に応える。
「ちょっと見てただけだ!です!ちゃんと次の相手に集中してるっすよ」
その言葉とともに、私も背後でパスやシュートをしあっている正邦選手たちへ振り返った。
黒々とした服装の男子たちが投げ合う。ってかなんか威圧感が……。
って、なんか雰囲気はあるけど、秀徳とは全く種類が違う……。
「正邦って思ったより普通というか、あんまり大きい人いないんですね」
フグ田くんの呟きに相田先輩が応じる。
「まぁ、全国クラスにしても小柄かもね。一番大きいのは首相の岩村くん。187よ」
一年の視線が相手選手の一人に集まる。
「ああ、水戸部先輩と同じくらい、ってごつっ!!すげぇパワーありそう!!」
「あと、司令塔は春日くん。あの金髪の子ね。その三年二人がチームの柱よ」
ヒョロリと細身の男子を指してそう言ったのだった。
「あー、君が火神くんっしょ!」
そのとき、突然バカ神くんのもとに、あの坊主君が来た。
キラキラとした笑顔で向かっていく。
「うわー、マジで髪赤ぇー!こえ~~~!」
「あんっ?!」
バカ神くんはなんとなくイラっとしていた。
坊主くん、たしか津川くんは、正邦側を見て、叫んだ。
「誠凛超弱いけど、一人すごいの入ったって、こいつっしょ?主将!」
正邦は一同ギョッとしていた。まぁ、無理もないだろうが。
それに対し、誠凛の一同はプチ怒り気味だ。
「おーおー、言ってくれるわね、クソガキィ……」
「ハァ、なんでお前、いつも他校さんと絡むんだよ」
「いや、今日は違うっすよ!!」
そこでようやく正邦の主将さんが坊主の頭をグーで突いた。
「チョロチョロすんな、バカたれ」
「あいてっ」
そのまま日向先輩のもとに来た。
「すまんな。コイツは、空気読めんから本音がすぐ出る」
うわぁ、本音って……。
「謝んなくていいっすよ。勝たせてもらうんで。去年と同じように見下してたら泣くっすよ」
「それはない。それに、見下してなどいない。お前らが弱かった。ただ、それだけだ」

5-岩村努
正邦の控え室。選手一同着替え中である。
俺は、春日に言った。
「どうだった、春日?あいつらの印象は」
「上級生はやっぱ力つけてそうだよー。あとは、一年の火神が要注意、かな」
「じゃ、同じ一年だし、今のお前ならどんな奴でも止められるだろ」
俺は、満面の笑みを浮かべた津川を見上げた。
「ほい、やったぁ!楽しくなってきたああああああぁぁぁぁ!!!!!」
その神々しいまでの笑みを見ながら、引き気味に春日が言った。
「うわっ、出たよ、津川スマイル」
首を振る春日に、後光の眩しい津川、ため息をする俺。
「世界中見渡してもお前だけだよ、笑顔でDFする奴」

6-火神大我
誠凛控え室。みんな緊張しているのか、固い。
その空気を感じてか、カントクが口を開いた。
「全員、ちょっと気負い過ぎよ。元気でるご褒美考えたわ!」
全員の視線がカントクに集まった。
そして、頬に手をやり、頬を染め、星を出した。
「次の試合に勝ったら、みんなのほっぺにチューしたげる!どーだ!」
……………………場は静まった。さっきよりさらに深く。
「ウフってなんだよ…」
「星出しちゃダメだろー」
カントクの顔がひきつる。
「バカヤロー!そこは義理でも喜べよ!」
あ、止め刺された。
「ぐっ……な、なら、紺野さんのチュ」
「ようし、みんな頑張るぞー!」
「「「おう!!」」」
「そこの無視って、何気に私にもダメージ来るんですけど?!!」
流した誠凛の先輩たちに突っ込む紺野である。
「流されるなんて、かわいそうだな、紺野」
「?火神くん、今のは先輩たちが興奮しただけですよ」
「そうなの?!」
流されるのもかわいそうだけど、いや、積極的にされたくもない、かな。
そう思っているうちに、カントクはキレた。
「ガタガタ言わんと、シャキっとせんか、ボケーーー!!!!去年の借り返すんだろうが、ええ?!おい!!一年分利子ついて、えらい額になってんぞ、コラァアアア!!!」
そう暴れるカントクをドウドウ、と水戸部先輩が諌めた。
主将らも苦笑しながら言う。
「わりーわりー。わかってるよ」
そして、なにか覚悟を決めたように「おっしゃ」と告げ始めた。
「行く前に改めて言っとくけど、試合始めればすぐ体感するだろう。けど、一年は腹くくっとけ」
腰に手を当て、続ける。
「正邦は強い。ぶっちゃけ、去年の大敗で俺らはバスケが嫌いになって、もうチョイでやめそうになった」
無言で言葉を胸に染み込ませる俺ら一年。
そのまま、沈んだ。
「うわ、暗くなんな!立ち直ったよ!元気だよ!むしろ喜んでんだよ!――去年とは同じには絶対ならねぇ。それだけは確信できるくらい、強くなった自信があるからな」
笑みを浮かべ、二年の面々は力強くうなづいた。
そして、締める。
「あとは勝つだけだ!行くぞ!!!!」
「「「おう!!」」」
その声と共にコートへ向かう俺たち。だが、黒子が止まっていた。不思議に思って、声をかける。隣には紺野がいた。
「どうした?」
「どったの、ホクロくん?」
「火神くん、君は、バスケを嫌いになったことはありますか?」
「は?」
一度考え込む。
「いや、ねえけど」
「僕はあります。理由は違うけど、気持ちはわかります」
暗い顔で黒子は続ける。紺野は、悲しげな視線を黒子に送っていた。
「今はあんなに明るいけど、好きなものを嫌いになるのはすごく辛いです」
二年生たちは既に出っ張らった。
「緑間くんと話した時、過去と未来は違うといったけど、切り離されてるわけじゃありません。この試合は先輩たちが過去を乗り越える、大事な試合だと思うんです。だから、」
そう切ってから、一度ドアをまたいだ。
そして、試合は開始のアイズがなされた。
『それではこれよりAブロック準決勝、第一試合、誠凛高校対正邦高校の試合を始めます!』
5人ずつが向かい合う。俺は、ジャンプボールの準備をしながら、先ほどの黒子の言葉を回想する。
〈バスケを嫌いになったことありますか?〉
俺はバスケが嫌いになったりとかはねーし、全部理解は出来てねぇ。
〈だから、改めて思いました〉
けど、最期の言葉だけはわかったぜ!!
〈この試合、絶対勝ちたいです〉
さぁ始めようぜ、死に物狂いの王者二連戦!!最初の王者、正邦!!!!