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黄金の太陽THE LEGEND OF SOL

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第3章 開かれし封印


 目を開けるとそこは綺麗なところだった。
 いや、見覚えがある。ここは…、ハイディア村の草原だ。辺りには動物たちが楽しそうに走り回っている。
 ジェラルドは立ち上がった。するとリスが一匹ジェラルドの足元にすり寄ってきた。ジェラルドはリスを手の上に乗せた。するとなんとも恐るべき事が起こった。
「おい、ジェラルド!」
 なんとリスが口を聞いたではないか。ジェラルドは驚いて後ろに飛び上がった。
「おい、ジェラルドってば!」
 なおもリスはしゃべり続ける。
「く、くるな!うわあああぁぁ!!」
 リスがジェラルドに襲いかかるのだった。
    ※※※
「起きろ、ジェラルド」
「うわあああぁぁ!」
 ジェラルドは目覚めた。肩で息をしながら辺りを見回す。そこは筆舌に尽くしがたい場所であった。
 崖のような場所である。いくつか切り立った足場になりそうな崖が点々としてある。崖の下は水がある。川とも湖とも違う。遠方には水色、黄色の強い黄緑色、紫色、赤色の光が東西南北それぞれに見える。
「びっくりした…、そんな大声出さなくてもいいのに…」
 ジェラルドの眼前にはロビンがいた。
「ロビン?ちきしょう、変な夢見ちまったぜ…って、ここは?もしかしてこれも夢?」
 これほど神秘的な所である、そう思ってしまうのも無理はないだろう。
「夢なんかじゃないよ。ここはスクレータいわく海らしいぞ」
 ロビンは応える。
「そんな事より早く立ったらどうだ、スクレータはさっさと調べものに行っちゃったから早く追いかけなきゃ」
 ロビンはジェラルドに手を差し伸べた。ジェラルドは手を取り、立ち上がる。
「そういえば、ジャスミンは?」
「ああ、スクレータ一人にしとけないって先に行っちゃったよ。さあ行くぞ」
 ロビンはさっさと歩き出した。
「お、おいロビン!」
 ジェラルドも後に続いた。
 スクレータ達に追いつく事は簡単だった。
 大きく切り立った崖はさほど広くなかったのですぐに見つけだすことができた。
 そのスクレータによると、ここは海ではないらしい。
「どうしてさ、スクレータ」
 言ったのはジェラルドである。
「ワシはトレビ町からここへくる前にカレイという町に行ったんじゃ。その時に船乗りから海についての話を聞いた。それは大層広いものらしい。ここは広いことは広い、それでここが海ではないかと思ったのじゃが、海にあるはずのものがなかったのじゃ」
 スクレータは一通り説明をした。そこに新たな質問が投げかけられた。
「何がないの?」
 ジャスミンが言った。
「波がないんじゃよ。海には波があるという。それは時として生物を助け、時として人に牙をむくという…」
 スクレータは言葉を一旦止め、また語気を変えて話し出した。
「じゃが、ワシもまだ本物を見てはおらん。いつかは見てみたいものじゃ。そしてお前達にもみせてやりたいのう」
「オレ、見てみたいな。海ってやつをさ」
 ジェラルドが言った。
「ロビン、お前も見てみたいよな?」
 ロビンに目を向ける。
「そうだな」
 ロビンからは決まりきった応えが返ってきた。ロビン達は新たな夢に胸を染めた。
「そういえば…」
 ジェラルドが思い出したように言う。
「どうした、ジェラルド?」
「東西南北に見えるあの光は何なんだろう?」
「何、お主光をどこでみたのじゃ!?」
 スクレータがもの凄い見幕でジェラルドに迫った。
「む、向こうの方で見えたよ…」
「本当じゃな!」
「ほ、本当だって!」
 ジェラルドとスクレータの顔はもう少しで接吻できそうなほど近い。
「ちょ、顔!近いってスクレータ!あ、ほらここからも見えるよあの光が!」
 スクレータはジェラルドが指差した方を振り向いた。これによってジェラルドはようやく解放された。
「お、おお!あれは、あの色は…!」
 スクレータは声にならない叫びをあげているようだった。
「スクレータ、何があるんですか?」
 ロビンが歩み寄った。
「あそこじゃ、赤色の光が見えんか?」
 ロビンはスクレータが指し示す方角を見た。すると北西の方向に確かに赤い何かが見えた。
「次はあっちを見てみい」
 東である。そこには黄色く光ものが見える。
「そして…、こっちじゃ」
 スクレータは自分達の向いている方向とは逆の方を振り向いた。
 指差す方向は南西である。そこには紫の光がある。
「これで最後じゃろう、こっちじゃ」
 北に水色の光である。
「ねえ、スクレータあれは一体何なの?」
 ジャスミンが訊ねた。
「うむ、あれこそが錬金術の鍵を握る宝玉、エレメンタルスターなのじゃ」
 言った後すぐにスクレータは手前の崖に飛び移った。
「危ないわよ、スクレータ!」
「今ついに、探し求めていた物が見つかったのじゃ…」
 スクレータの足は震えている。
「それを取りに行かねば…」
 スクレータが次の崖に足をかけた。その時だった。
 ガララ、と崖が崩れたのだ。
「ひ、ひええ!」
 何とか体勢を立て直したが、その足場も崩れた。
「ひいいい!」
 スクレータは悲鳴を上げ、後ろ向きに跳びつつロビン達のもとへ戻ってきた。
――む、ムリじゃ。こんなのとてもじゃないが…くそ、エレメンタルスターはすぐそこにあるというのに…――
 スクレータは高鳴っている胸を押さえ、地面に座り込んでいる。
「全く、あんまりムリすると寿命が縮むわよ」
 ジャスミンが言った。
「何を、人を年寄り扱いしおって!」
 スクレータが反論した。
「大体あの光までは結構遠いでしょ。あなたの足じゃたどり着くのも難しいわ」
 ジャスミンは厳しく言う。
「ならばエレメンタルスターは諦めろと言うのか?」
 ジャスミンは呆れた様子で首を振った。
「そうは言ってないわよ、行くならこの二人の方がいいんじゃないかしら」
 この二人とは紛れもなくロビンとジェラルドである。
 指名を受けた少年達は驚いて反論した。
「おいおい!オレたちに行けってのか!?冗談じゃない、こんな所命が幾つあっても足りねえよ!」
 ジェラルドが食ってかかった。
「そうだよ、大体なんでジャスミンは行かないんだよ!?」
 ジャスミンはやんわりと答えた。
「だって私、か弱い女の子だもん」
 ロビン達が釈然としなかったのは言うまでもない。
「ほら、グズグズしてないでさっさと行ってきなさい!」
 ジャスミンの最後の一押しに負けて、ロビン達は渋々承諾した。いや、するしかなかった。
「ちきしょう、男って損するよなロビン」
 この問いかけにロビンは
「そうだな…」
 答えるだけだった。
 光の方角目指して少年達は崖を跳んでいった。そのうちに姿が見えなくなった。
「ああは言ったけど大丈夫かしら」
「少なくとも、エレメンタルスターだけは無事であって欲しいな…」
 ジャスミンの後方から返答が返ってきた。
 その声色はロビンとジェラルドではない。ましてやスクレータなどは自分の目の前で座り込んでいる。
 突然ジャスミンは後ろから手で口を塞がれた。
「少しの間、大人しくしてもらおうか…」
 ジャスミンに襲いかかったのは特異な顔色をした戦士風の男であった。
「じ、ジャスミ…!?」
作品名:黄金の太陽THE LEGEND OF SOL 作家名:綾田宗