黄金の太陽THE LEGEND OF SOL
あれ、ボクはさっき何をしていたんだっけ。
周りを見回してみる。そばにはキニーにジェラルドがいて2人とも呆然としている。目の前には半壊した家がある。
なんだか意識がはっきりしてきた。そうだ、ボクたちは川に落ちたガルシアを助けようと助けを呼びに行こうとしていた。
その直後に山から大岩が転がってきて、父さん達を呑み込ん…え、父さん達をのみ込んだだって?
辺りにはロビンたち以外の人の気配がしないまさかの思いが脳裏をよぎる。
「助けを呼ぶのよ…」
ずっと呆然と黙りこくっていたキニーが突然呟くように言い出した。
見ると僅かに残されたシェルス家のウッドデッキの隅の方にジャスミンが横たわっていた。
既にその片方の足は川に浸かってしまっている。このままにしているのは危険である気がした。
「ジャスミン、今助けに行くよ!」
ロビンは家のドアを開けようとした。しかし、いくら押しても引いてもびくともしない。どうやら落石の衝撃で建て付けが悪くなったようだ。子供の力ではどうにもならなさそうだ。
「助けを呼びに行こう」
ロビンは意を決して広場へ向かうべく走り出した。
ロビンが行っちゃった。
ジェラルドは今までショックのあまり立ち尽くすことしできなかった。 ロビンは自分の父が死んだのかもしれないのに、めげずに助けを呼びに行ってしまった。
「こうしちゃいられない、オレも行かなくちゃ!」
ジェラルドもロビンの後を追って走り出した。
※※※
「まさかあのような事になるとはな…」
「全くだ、まさかあそこにあんなトラップが施されているとは思わなんだぞ」
ハイディア村の林のなかで男女が話していた。
二人ともこの村の者達とは明らかに容姿が違っていた。
2人とも旅の戦士のような重装備であり、何よりもまず顔の色が特異であった。
男のほうは青白い顔をしており、女は奇抜な化粧でめかし込んでいた。髪の色も常人とは明らかに逸脱した青色に薄い黄色だった。
「しかし、どうする?これではアレがとれんぞ」
「まぁ、落ち着くのだ。あそこを詳しく知るものでなければまた同じ失敗をおかす事になる」
少々焦っている女を男がなだめる。
さっきからアレだあそこだと何を言っているのだろうこの二人は。
偶然2人のそばを通りがかったロビンが聞いていた。木の陰から顔半分を出すようにして二人をじっと観察する。
時折女がこちらを一瞥してくる。その度にロビンは顔を逸らした。
「どうしたのだ?先程から向こうをチラチラと」
「いや、ずっと誰かに見られているような気がしてな」
女のほうはロビンの存在に少しではあるが気づき始めていた。
完全に気づかれる前に誰か呼んで来なければ、ロビンがそう思っていた矢先の出来事だった。
「ロビ〜ン!」
あろうことかジェラルドがロビンの名を大声で呼びながらこちらに来たのだ。
「バカ、ジェラルド…」
ロビンが言った時にはもう遅かった。二人がこちらに向かってきた。
「逃げるぞ、ジェラルド!」
「え、何で!?」
この行動も遅かった。
「小僧、貴様話を聞いていたな?」
既に目前まで迫ってきた男が言い放った。
「先程見ていたのはお前達だったのか!」
「今まで聞ていた事は全て忘れろ…、よいな?」
男が恐ろしい表情でいった。
これにたいしてロビンは何もできずにいた。
「安心しろ」
意外な言葉がかけられた。ロビンは一瞬目を丸くする。
手荒な真似はしないのだろうか。
「すぐに忘れられるようにしてやる」
ロビンの予想は見事に裏切られた。
男は腰にさした剣を抜き、女はどこからともなく大鎌を出現させた。
「ゆくぞ!」
男は言った後ロビンめがけてとびかかって来た。
「う、うわぁ!」
ロビンは寸前のところでかわした。
「ロビン!」
「よそ見をするな!」
ロビンの方を見ていた。ジェラルドに女が大鎌を振りかざす。ジェラルドはそれをどうにかかわした。
「わわ!ちょっと危ないでしょおばさん!」
ジェラルドは禁句を言ってしまった。
「おばさん…だと」
女が激怒したのは言うまでもない。
「殺す!」
「ひぃ!」
女は怒りにまかせて鎌を大振りに振り下ろした。しかし、その鎌はジェラルドの前髪を数本持っていくだけで虚空をまった。
「あわわ…」
ジェラルドは腰を抜かして地面に座り込んだ。
「チィ、次こそ殺す!」
『イラプトヴァルカン!』
少し離れた所でエナジーの閃光とともにマグマが湧き出した。
ドサッという音を立てて何かがジェラルドの足元に落ちた。見るとそれは傷だらけになったロビンだった。
「ロビン!」
「案ずるな、まだ息はある…」
男は言った。
「それよりも…」
男は続いて女の方を向いた。
「何をしておる?このような小僧になにを手こずることがある?」
男は呆れた様子で溜め息混じりに言った。
「エナジーを使って仕留めろ」
鋭い形相で言う。
「わ、分かった…」
その形相に恐れをなした女は従い、手をジェラルドに向けた。
手を中心に女の体が光を放ち始めた。
『デンジャフュジョン!』
詠唱が終わるとものすごい爆発が辺りを巻き込んだ。
ジェラルドも例外なく凄まじい爆風を受けた。
「ぐわあああ!」
ジェラルドはロビンの隣に倒れた。
「チッ!まだ息があるか、とどめを刺してくれる!」
女が手に持つ大鎌を振り上げたその時だった。
「な、なんだ今の爆発は!?」
近くにいる村人に気づかれてしまったようだ。
「あっちの方で起きたみたいだ。行ってみよう!」
「ああ!」
村人達はこちらに向かっているようである。
「くそ、逃げるぞ!」
二人は逃げ出した。その直後に村人達が到着した。
「おい、子供が倒れてるぞ!」
「酷い傷だ!早く手当しなきゃまずいぞ!」
「神殿に連れてこう!」
ロビン達は村人によって助けられた。
※※※
村はずれの雑木林の中をあの男女2人が走っている。
「思わぬ邪魔が入ったものだな」
走りながら男は言った。
「全くだ、しかしどうする?アレがなければ我が村が…」
「慌てるな、まだ時間はある。機を見てまたここを訪れよう」
一体この二人組の狙いは何なのであろうか。
作品名:黄金の太陽THE LEGEND OF SOL 作家名:綾田宗