二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

黄金の太陽THE LEGEND OF SOL 2

INDEX|1ページ/19ページ|

次のページ
 

第5章 風の少年


風そよぐ夕暮れの草原の中で、馬車は走っていた。街道らしい道ではないが進む分には苦労はしない。
 馬車の中には商人、それも普通の商人ではない。商いにかなり長けている大商人の風格を醸し出している。
 商人は風格こそすごいが、格好はとても質素なものであり、赤い帽子に布地のマントを身に着けている。綺麗に見えてしまうのは恐らく彼の立派に整えられた口髭のせいであろう。
 商人の隣にはまだまだあどけない少年。 少年は金髪を乱さずに整えた髪をしており、ぱっちりと開いた目は紫色である。この瞳以外鼻も、唇も小さい可愛らしい顔をしている。少女と言ってももしかしたら通るかもしれない。こちらも緑色のマントを身に着けていた。
「ブンサ、今はどの辺なのかね?」
 商人は馬車を動かしている使用人に尋ねた。
「ハメット様、間もなくクープアップという村に到着いたします。もうすぐ日も暮れますので今日はそこへ行くのはいかがかと」
 ブンサは前を見たまま答えた。
「そうですか、ならそれがいいですね。ではそろそろ準備をしとこうか」 大商人ハメットは支度を始めた。
「イワン、お前も準備をしなさい」
 ハメットの隣の少年イワンははい、と笑顔で返事をすると同じく支度した。
「ハメット様、今日も動物から話を聞いたのですが、なにやらこの辺りでは盗賊が頻繁に現れるとか…」
 イワンには不思議な力があった。人の心を読み取る力である。その力は人にだけではなく動物にも効くもので、イワンは普段から動物と会話をしていた。
「そうなのかいイワン?でも心配しなくてもいいでしょう。動物の言っていることならば」
 ハメットは特に驚きもしなかった。
「そうだと、いいのですが…」
 イワンにはまだ不安が拭い去れなかった。というのも彼が今まで聞いてきた動物達の中に嘘をつくのはほとんどいなかったからだ。
「それに、いくら私がちょっとばかし腕のある商人だとしてもこんな質素な格好からでは盗賊も気付きはしないよ」
 ハメットは笑っていた。
「ハメット様、着きました」
 ブンサが馬車を止めた。
「ご苦労様、さあイワンそんなに心配しないで今日はゆっくり休もう。まだまだ行商の旅は長い」
 ハメットは荷物を持ち、馬車を降りた。
「早くおいで、イワン」
「あ、お待ちくださいハメット様!」
 イワンは手荷物と杖を持って馬車を降りた。
「おい、兄弟ありゃあもしかして大商人ハメットじゃねえか?」
 大木の陰でイワン達の様子を見ていた怪しい男が言った。
「こりゃ願ってもねえラッキーだぜ!」
「もうこの村の物はほとんど盗りつくしちまったからな、奴らからたんまり頂いちまおうぜ!」
 男達は3人組の盗賊である。いずれの者もくしゃくしゃの髪をしており、着ているものもなんとも汚らしい服である。腰にはナイフ、リーダー格の男には珍しい短刀がある。大方どこからか盗んだものであろうが。
「で、いつ頂く?」
「もちろん今夜だろ」
「いや、頂くにしても狙いを付けておこう」
「んじゃオレは馬車を襲撃しよう」
「ならオレはハメットの持ち物を」
「ようし、ならば…」
 リーダー格の男はニヤリとした。
「俺はあのガキの杖を頂くとするか…」
 盗賊3人組は密やかに笑みを浮かべていた。
    ※※※
「ロビン、そっちだ!」
 ジェラルドの声が草原に響きわたる。
 ロビンの側面に魔物、ダルマねずみが飛びついてきた。
「く、そりゃぁぁ!」
 ロビンは勢いに任せて長剣バスタード・ソードを振り回した。
「ピギッ!」
 運悪く剣の切っ先は魔物の腹を掠めただけであった。剣の勢いに振り回されロビンは膝をついてしまった。
「ロビン!」
 魔物は怒りを露わにした。手に持つ銛をロビンに向け、飛びかかった。
――く、くそう…!――
 ロビンは目をつぶった。魔物の銛はロビンの体へとどんどん近づいていく。
『フレア!』
 ジェラルドは詠唱すると同時に魔物目掛けて手から火を放った。
 火は見事に魔物に直撃、魔物は断末魔とともに雲散霧消した。
「目ぇつぶんなよロビン!」
 ジェラルドの背後にはもう一匹の魔物、バットが彼に噛みつこうとしていた。
「危ない、ジェラルド!」
「へ!?」
 ジェラルドは振り向いたがとてもかわせない。
 バットは口を大きく開いた。
『アースクエイク!』
 ロビンのエナジーが働き、大地が揺れ、地面の石が魔物目掛けて飛んだ。石は迷わず魔物に当たった。
「キキッ!」
 魔物は地に落ちた。同時にロビンは剣を片手に空中を舞った。そして、切っ先を地面に倒れ痛みにもがく魔物へと突き刺した。どす黒い血が虚空へ舞った後、魔物の死骸は跡形もなく消えた。
 ロビンは地面に刺さる剣の切っ先を引き抜き、
「これで貸し借りなしだぜ」
 笑ってみせた。
 彼らは2日前にハイディア村を後にした後ひとまずクープアップ村を目指し旅していた。
 この2日間もう5回以上今のような魔物との戦闘を繰り返していた。初めての戦いに比べれば多少は慣れ始めてはきた。しかし、それでも死と隣り合わせとあっては出来れば避けたいものである。
 そんな戦いであるが、損ばかりではない。得られる物も幾つかある。
「お、この魔物20コインも持ってたぜ」
 ジェラルドは魔物が死んだ所を調べた。
 まず1つには金が得られることである。どういうわけか魔物を倒すと手に入るのだ。魔物から出てきたものではいささか気味が悪いが、金がなくては何もできない。なので彼らは遠慮なく頂くことにしている。
「それにしてもロビン」
 ジェラルドは拾ったコインを財布に仕舞った。
「お前さっき見たことのないエナジー使ったよな?」
「ああ、なんかさっき危ない目に遭った時にふと頭の中に浮かんだんだ。それをそのまま外に出したらあんなエナジーが出たんだ」
 もう一つに、経験が得られる事である。
 魔物との極限の戦いの際に、少しずつではあるが心身ともに鍛えられているのであろう。戦う度に確実に自分が強くなっているような気がする。
「あーあ、オレも早く新しいエナジー使えるようになりたいなぁ」
 ジェラルドは大剣を鞘にしまって手を頭の後ろで組んだ。
「その内出来るようになるさ。さあ、そろそろ行こう」
 ロビンとジェラルドは歩き出した。
 今までと違い、彼らは街道を進んで行く、ただの草原を歩いていけば確かに近道にはなっていた。だがそうすると魔物と出会しやすくなる。道が遠くなってしまうのは辛いが、魔物と戦うよりは遥かにマシである。
 数時間ほど歩くと前方に小さな村落が見えてきた。
「なあ、ジェラルドあれがクープアップ村じゃないか?」
 ロビンは村落を指さして言った。
「おお、そうみたいだな。ようし、一気にラストスパートだ!」
 ジェラルドは数時間歩いた事など思わせないほど元気に駆け出した。
――全く、どうしてあんなに元気なのやら…――
 その様子を見ながらロビンは苦笑していた。
「おい、待てジェラルド!」
 ロビンも後を追うのだった。
 やがてクープアップ村入り口にたどり着いた。
「ハアハア…、着いたな…」
「ゼ?ゼ?、そうだな…」
 2人とも全力のラストスパートをかけた為、肩で息をしている。
「と、取り敢えず村に入ったら泊まるとこを探すか」