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黄金の太陽THE LEGEND OF SOL 2

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第7章 マーキュリー


 ウェイアード暦で現在は一年も半分を過ぎた頃である。となると季節は晩春から初夏となる。というにも関わらず、イミルの大地ではまだ冬が続いていた。
 イミルの岬に天まで届かんばかりの塔がある。外壁の色は淡い水色である。その入り口には水の女神、マーキュリーの像がある。そう、ここがエレメンタルの灯台の一つ、マーキュリー灯台なのである。
 マーキュリー灯台のエントランスホールには泉がある。もっとも、水は既に枯れてしまっている。入り口には扉がない。その代わり何か不思議な力が膜をはって、とても入ることは出来そうにない。
 錬金術の復活を目的とする者達もそこで足止めされていた。
 ガルシア、ジャスミン、スクレータは外套を着ている。
しかし、サテュロス達は何も上に羽織っていない。これは彼等が不感な訳ではなく、寒さに強いからである。とりわけ、サテュロスとメナーディの故郷プロクスはほぼ年中冬の気候であり、真冬はイミル以上の極寒である。さらに彼等は火のエナジストなので、火のエナジーを体温に変換する力を持っていた。今はそんな力を使っている素振りは見えない。
「ジャスミン、大丈夫か。寒くはないか?」
 ガルシアは妹の身を案じた。
「うん、平気よ兄さん」
 現在の天候は小雪が舞っているが、軽く日が射している。気温と比べ体感温度はさほど低くはない。
「それよりもシン、あなた大丈夫なの?」
 ジャスミンは向かいで泉の縁に腰掛けるシンを見た。彼の格好は動きを重視したかなりの薄着である。にもかかわらず、外套はおろかマフラーすらしていない。
「大丈夫だ、オレの居た村の冬もこれ位寒かったし、厚着してちゃ動きづらいからな」
 シンの声が僅かに震えている事を、ガルシアは聞き逃さなかった。それから間もなくシンは盛大なくしゃみをした。鼻水を垂らしながら慌てて弁解した。
「いや、違うよ!?寒いんじゃなくて、空気が冷たすぎて鼻の奥がね…」
 ふと、シンの手に何か握らされた。それはガルシアが普段身に纏っているマントであった。
「無理せずに着ておけ、多少なりとも変わるだろ」
 シンは鼻を啜った。そして言われるままにマントを纏った。
「済まない、ガルシア」
「なに、気にするな」
「ていうか、あるなら最初から出せよ!」
「いや、わざとそんな格好なのかと…」
 ガルシアは苦笑した。
「んなわけねーだろ!上着全部お前らが着ちゃったから、我慢してたんだよ」
 そんな彼らのやり取りの端で、サテュロスとメナーディはしびれをきらしていた。彼らは先述のように、マーキュリー灯台の入り口で足止めをくらっていた。同時に、入り口の封印を解ける人物を待っていた。
「アレクスのやつ、一体何をしているのだ!」 いつものごとく不機嫌な様子でメナーディは言った。
「奴の気ままさには、いい加減腹が立ってくるな」
 サテュロスも珍しくイライラしていた。
 ガルシア、サテュロス一行がアレクスに最後に会ったのは、ここより南東の町、ビリビノである。ゴマ山脈を越えた後すぐの位置にあるこの町でアレクスは宿にいた。
 ソル神殿の時から彼はサテュロス達と一緒には旅していない。その理由は彼によると集団で動くことが好きではないとのことである。
 ビリビノの宿で会うことができたのも偶然の出来事であった。
 そこで、サテュロスはマーキュリー灯台について訊いた。アレクスによると灯台の入り口は封印されているとの事であった。実際にここは封印されている。アレクスは言っていた。
「マーキュリー灯台の封印を解けるのは私ともう1人いるのですが、きっとこの人は協力しないでしょう。ですから、一週間後マーキュリー灯台の入り口で待っていてください。必ず行きます」と。
 ふと灯台から少し離れた位置からエナジーの気配が感じられた。アレクスが空間に現れたのである。宙にふわふわと浮かんだ状態で、灯台の入り口までやってきた。そして地面に降りた。
「遅いぞ、アレクス!」
 一番最初にメナーディが怒鳴った。
「すみません、少し用事があったもので」
 アレクスに悪びれた様子はなかった。
「アレクス、早く封印を解いてくれ」
 サテュロスはそれ以上は訊かなかった。
「はい、…おや?」
 アレクスはガルシア達を見回した。その視線はガルシアのマントを羽織っている青年へと止まった。
「何やら見慣れぬ方がいらっしゃいますね」
 アレクスはシンの元へと歩み寄った。シンは一歩後ろに下がった。
「そう警戒なさらないでください。私はあなた方の味方ですよ」
 シンにとって、空間から突然人が現れることは当然初めての事であった。
「あなたの名は?」
「…シンだ」
「シン、ですか。いい名前ですね。私はアレクスと申します。どうぞよろしく」
 アレクスは浅く礼をした。
「あなたも錬金術の復活を狙っているのですか?」
「いや、オレは錬金術なんてのはよく分からない。だが灯台を灯さなければ、オレの村は滅ぶ」
 シンは依然警戒の色を隠さなかった。「そうですか、何にしても私達は仲間です。一緒に灯台の解放を頑張りましょう」
 アレクスは微笑みを浮かべた。
「アレクス、早くしろ!」
 メナーディが声を荒げた。
「すみません、今やりますよ」
 アレクスはシンから身を翻して不思議な膜をはっている入り口の前に立った。
「いきます」
 アレクスは何かをぶつぶつ唱え始めた。
『マーキュリーの守神よ、我こそは己が子、マーキュリー一族の者である。今祈りを捧げよう。どうかその守りを、封印を解きたまえ!』
 アレクスの体が眩いばかりの光を放った。
『アーネスト・プライ』 光とともに、天使が現れた。それはとても小さな天使であり、全長がアレクスの頭の先から肩くらいの高さしかない。
 天使は祈る形にしている手を広げた。すると、不思議な力が働き次の瞬間入り口を塞いでいた膜がガラスのように割れて消えた。
「お待たせしました。さあ、マーキュリー灯台の解放に行きましょう」
 アレクスも加わり、サテュロス一行はぞろぞろと灯台の中へと入っていった。
 女神像の陰から人が現れた。それは少女、それも普通ではない、常人とは違う真っ赤な髪に、珍しい服装、鍔のない刀を持った少女である。
 少女はサテュロス達が奥へ行くのを待っていた。その間そのきつい目はある人物を一心に見つめていた。
ーーシン、お前の思うようにはさせないーー
 サテュロス達が奥へ行ったのを見計らうと、後を追うように灯台の中へと駆け込んだ。
    ※※※
「さ、さささ、寒みい…!」
 ジェラルドは歯をガチガチとならしている。
「うるさいなあ、寒いのは分かってるよ」
 ロビンは嫌そうな顔をジェラルドに向けた。
「そうですよ、寒いと思うから寒いんです。心頭滅却すれば火もまた涼し、ですよ」
 イワンは自分なりの寒さの対策を語り出した。
「そんな事言って火は涼しくなるかもしれないけど、寒いのが暑くなるわけじゃないだろう?」
 ジェラルドはこう言ったつもりのようだが、ガチガチと歯を鳴らしながら、震えた声だったのでロビン達には聞き取れなかった。