黄金の太陽THE LEGEND OF SOL 2
第8章 開放、動き出した運命
北には海が流氷流れる海が広がっている。南には山々が連なっている。
4つのマーキュリーの女神像の間に灯台の火口がある。この中にエレメンタルスターを投げ込めば、エレメンタルスターに秘められた大いなる力が灯台の灯火を灯してくれる。
「ようやく一番上まで着いたな」
サテュロスは言った。
彼らはたった今灯台の頂上にたどり着いた。後は、マーキュリースターを持つアレクスが火口へそれを投げ入れればマーキュリー灯台は解放される。
「アレクス、何をしているの、早く灯しなさい」
メナーディは解放を急がせた。しかし、当のアレクスはしきりに後ろを気にしている。
「失礼、どうやら私達の他に灯台に来ている者がいるようです」
メナーディは驚いた。
「何!?まさかロビン達が」
「いえ、どうやらロビン達では無さそうです」
その内に火口の横のリフトに人が現れた。それは少女、それも真っ赤な髪をした。
「ふむ、やはり貴女でしたか、来るのではないかと思いましたよ」
アレクスは振り返った。
「貴女確か、灯台の入り口で私達を見ていらっしゃいましたね?貴女も灯台の解放を狙っているのですか?」
少女は無言でアレクスを睨み返した。
「おや、そうではないようですね」
アレクスには特にがっかりした様子は無かった。
「貴様に用はない。私が探しているのは…」
少女はアレクス達を見渡した。違う、こっちも違うと、一行を目で追う。
1人の青年と目が合うと、その青年は驚いた。
「リョウカ…!?」
「シン、ようやく会えたな…」
リョウカはその目を普段よりもさらに厳しいものにした。
「シン、どうして灯台を灯そうとするんだ?灯台を灯せば…」
「魔龍オロチが復活する…」
シンは遮るように言った。
「そうだ、オロチが復活する。オロチが復活したらどうなるかも分かるな?」
「ああ、村はきっと滅ぶだろう…」
「分かっていながら何故…!?」
「何もしなくても滅ぶんだ!」
シンは大声を上げた。
「前に、ウズメ様に訊いたことがある。今から一年もしない内に、オロチは復活して、生贄を所望してくるだろうって。だが、オロチを倒す方法をオレは見つけたんだ」
シンは続けた。
「地の灯台の解放とともに現れるあまくもの剣だろ?」
リョウカは言った。
「知っていたのか!?」
「当然だ、だがその伝説は定かでは無い。昔オロチが復活した時にもその剣が使われたらしいが、消えてしまったそうだ。だから、もうそんなもの有りはしない」
シンは絶句したた。
「リョウカ…、だがそれでもオレは…」
リョウカは腰に差した刀を鞘ぐるみに抜いた。
「シン、これ以上は何も言わん。禁忌を犯した罪人として、お前を斬る!」
リョウカは刀を独特の構えにした。
「何やら込み入ったお話をしていらっしゃるようですが、灯台の解放を邪魔するとあらば私が許しません」
アレクスが間に入った。
「邪魔だ、どけ!」
「シン、あなたはここを離れなさい。ガルシア達と共に」
アレクスは移動を促した。
「いいのか?」
「はい、早く離れなさい。それと」
アレクスはマーキュリースターをサテュロスに投げ渡した。
「サテュロス、このお嬢さんは私が相手しますのでその間に灯してください」
サテュロスはマーキュリースターを受け取って答えた。
「ああ、分かった」
同時にシンもガルシア、ジャスミン、スクレータと共に離れた。
「待て、シン!」
リョウカは追いかけようとしたがアレクスに遮られた。
「貴女の相手は私ですよ」
アレクスは短刀を取り出した。
「邪魔するならばお前も斬るぞ!」
アレクスは嘲笑した。
「面白い、では始めましょうか?」
リョウカはアレクスに斬りかかった。
※※※
幾つもの滝が落ちる部屋に差し掛かった。行き止まりかとも思ったが、これまでの道を考えるとここで合っているはずだ。
「何だよこの部屋?本当に道なんかあんのかよ!?」
ジェラルドは言った。
「騒ぐなよジェラルド、今までもこんな所あっただろ?」
ロビンはジェラルドを宥めた。
「皆さん、こちらです」
メアリィのいる所を見た。メアリィが1つの滝を指さしている。
「この先に道があります」
「本当かよメアリィ?」
滝の先に道があるというのだ、ジェラルドがそう思うのも無理もない。
「本当ですよ、ほらこの通り」
メアリィは滝の中へ腕を入れた。腕は深々と入っていく。
「でも、このまま進んだらびしょ濡れだぜ?」
ロビンは言った。
「そうですねえ、困りましたね」
そこへイワンが提案した。
「こうしてみるのはいかがでしょうか」
イワンは念じ、詠唱した。
『スピン』
イワンの手から小型の竜巻が発生した。
竜巻は水に入り、水の流れを分けた。これにより進むべき道が見えた。
「お、これなら濡れずに済みそうだ。よし行こう」
ジェラルドは先に進んだ。
「さあ、ロビン達も早く、スピンを出し続けるのは大変なので」 ロビンとメアリィは言葉に促され進んだ。
「イワン、お前も早く来い」
「はい、今行きます」
イワンは竜巻を放した。エナジーの力を失った竜巻は急激に弱くなっていった。
イワンは竜巻が消える前に水流の分け目をくぐり抜けた。イワンがくぐり抜けると同時に竜巻は消滅した。
「お待たせしました」
イワンは言った。
「よし、行こう」 ロビン達は先へ進んだ。
進む先にも幾つもの不思議な仕掛けが満載であった。
中にはとても複雑な仕掛けもあり、それを解くのに少々時間がかかった。
水が流れるパイプを連結させて罠を解く仕掛け等もあった。これは特に難しいもので、うっかりパイプを転がしすぎてしまって元に戻すのが大変だったり、これで完成かと思いきやどこか間違えていたりと大変だった。大変の一言しか出ない。
パイプのパズルをどうにか過ぎると今度は妙な位置に置かれた女神像が道を塞いでいた。
「ムーブ」で動かそうにも像の周りにある魔獣像が邪魔でどかすことが出来ない。そこでまずは邪魔なものをどかす事にしたのだが、それには何故かエナジーが効かなかった。
調べてみたらそれには魔封じのエナジー
「タイトエナジー」がかけられていた。
ロビン達は仕方なく手作業でそれらを取り除いた。お陰で時間を大幅に浪費してしまった。こうしている間にもサテュロス達は頂上に向かっているというのに。
ロビン達は巨大なマーキュリーの女神像がある部屋に差し掛かった。それは壁に直接彫られたようになっており、その胸元の部分は淡い光を帯びていた。
ロビン達の心に直接声が聞こえた。
――汝ら、女神の心に祈りしとき大いなる奇跡に寄りて、水鳥の如く水上を舞うであろう――
「ロビン、今の声聞こえたか?」 ジェラルドは訊いた。
「ああ、多分これは…」
ロビンはメアリィの方を向いた。
「メアリィにしか出来ない」
メアリィは頷いた。
「やってみますわ」
メアリィは女神像の前に立ち、手を組んだ。
『マーキュリーの女神よ、我が願い聞き入れたまえ』
女神像の胸元の光が呼応した。
『プライ』
光が一際大きくなった。やがて治まると側にある泉の台座が光を帯びていた。
「これに乗れば水の上を歩けるはずです」
作品名:黄金の太陽THE LEGEND OF SOL 2 作家名:綾田宗