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黄金の太陽THE LEGEND OF SOL 3

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第9章 それぞれの決意


 依然対立は続いていた。
 サテュロスは倒れているが新たな敵となりうる者が現れてしまった。ロビンはラグナロックを放った反動で消耗しており、ジェラルドは体中傷だらけの満身創痍である。
 サテュロスでさえも全員で協力してやっと倒せたというのに今はそれよりも更に強そうな敵がいる。主力の2人がこの状態ではイワンとメアリィにはとても勝ち目はない。
 にも関わらずメアリィはアレクスを睨んでいた。
「そう恐い顔をしないでください、同族の仲間ではありませんか」
 アレクスは大して表情を変えずに言った。
 ロビンはアレクスの「同族」という言葉に驚いた。
 最初はピンと来なかったが、確かによく見ると2人とも同じ目、髪の色をしている。
「アレクス、あなたが同族と言うのなら私達の使命を覚えていますか?」
 アレクスは一度笑って、
「ええ、覚えてますとも。マーキュリー一族はこの地の灯台を解放から守る、ということですね?」
 と答えた。アレクスはメアリィの答えを待つことなく続けた。
「ですが、私は思ったのです。錬金術が世の中にあったときの時代は素晴らしいものだったのではないかと。それゆえに、私は錬金術のある世界を見てみたいのです」
 メアリィは絶句した。
「それに、このマーキュリーの灯火だけでもとてつもない力を与えてくれる。メアリィ、あなたにも感じるでしょう?この力を…」
 アレクスは身に宿るマーキュリーの力をエナジーとして解放した。
 アレクスの周りで突風が起こり彼やロビン達の髪を揺らした。
「今ならあなたにもこんな事ができるのですよ、メアリィ」
 メアリィはアレクスのやったようにエナジーを解放してみた。
 アレクスの時とは違い、メアリィからは優しい水のベールが発生し、ロビン達の傷を癒していった。
 無意識のうちに上級回復エナジー『ウィッシュ』を発動できたのだ。
「こ、これは…」
 メアリィは自分の力に驚きを隠せなかった。
「どうです?素晴らしい力でしょう。あなたの場合は癒やしの力が主体のようなのでお仲間を回復させたのでしょう」
 アレクスはエナジーを解除した。巻き起こる風も収まった。
「錬金術とはこれよりもさらに素晴らしい力を得られるのです。ですから、これから先私の邪魔をするというのであれば容赦しません」
 今まで倒れていたサテュロスがゆっくり起き上がった。
「サテュロス!オレのラグナロックをもろに受けたのになぜ立てるんだ!?」
 サテュロスは不敵な笑みを浮かべた。
「勘違いしないでほしいな。私は貴様らにやられたのではない。灯台の灯火にやられたのだ」
「サテュロスは火のエナジスト、ですから水とは釣り合わなく、力が半減したのでしょう」
 アレクスはまだ少し足下のおぼつかないサテュロスに肩を貸した。
「サテュロスが回復するまで少々時間を稼がせてもらいました。力が半減していたとはいえサテュロスをここまで追い詰めた事に免じて今日は引き下がりましょう」
 アレクスは何かを念じた。するとアレクスの体が一瞬光り、宙に浮いた。
「アレクスめ、またテレポートする気だな…」
 ロビンが呟くとメアリィは驚いた。
「またってアレクスは前にもあんな事をしたのですか?」
「メアリィもヤツと同族なら出来ないのか?」
「私にはあんな事出来ません。アレクスにだって出来なかったはず…」
 アレクスは何かを思い出したようにロビンに向き直った。
「そういえば、マーズスターはお持ちですか?」
 ロビンは確かに持っていたが、正直に答えたら無理にでも奪われるかもしれない。故にロビンは持っていないと答えた。
 アレクスは一度目を丸くしたが、すぐにニヤリとした。
「そうですか?まあ信じておきましょう」
 アレクスは『テレポート』と唱えるとサテュロスと共に空間から姿を消した。
 それからしばらくしてからロビンが口を開いた。
「灯台は守れなかったけども悲しんでいる時間はない。ジェラルドが心配だ。イミル村に戻って手当しよう」
 ジェラルドもメアリィの『ウィッシュ』を受けていたが、未だに意識は回復していなかった。大事でなければよいのだが、用心するにこしたことはない。
「オレ達も灯台を降りよう」
 ロビンは歩き出した。後にイワンとメアリィも続いた。
「あ」
 イワンは何かを発見した。
「どうしたんだイワン?」
 イワンは指差した。
「あそこに人が倒れています」
 イワンは近付いてみた。ロビン達もイワンについていった。
「な…!?」
 そこには血まみれで倒れている少女がいた。
 服は所々に刃物の傷があり、一戦を交えた事を物語っていた。髪も真っ赤だが、これは元々こんな色だったように思える。
 何よりもロビンとイワンには見覚えがある人物だった。
「ロビン、この人はあの時の…」
「ああ、覚えているよ…」
 ゴマ山脈の洞窟入り口の前で足止めをされていた時、邪魔をしていた岩に絡まる蔦を見事な剣技で切り裂き、さらにエナジーでそれをどかしてくれたのである。もっとも、当人は助けたつもりはないようであったが。
「まだ息があるようだ」
 ロビンは少女の手首で脈拍を調べた。
「メアリィ、プライだ。灯台のパワーを利用すればこの傷を治すことができるんだろ?」
 メアリィは了承した。
「いきます」
 メアリィは呪文らしきものを詠唱した。
『プライ』
 水のベールが光の粉を撒き散らして少女を包み込んでいった。
「これで大丈夫です。まだ気を失っていますがしばらくすれば目を覚ますはずです」
「よし、じゃあ一緒にイミル村へ連れて行こう。イワン、ジェラルドを頼む」
 そう言うとロビンはジェラルドをイワンに預け、少女を抱きかかえた。
……ごごごご…………
 先ほどガルシア達が乗って降りていったリフトが戻ってきた。
「ロビン、リフトが戻ってきましたよ」
 イワンは言った。
「降りるぞ」
 ロビン達はリフトに乗って灯台を後にした。
 マーキュリーの灯火は絶え間なく燃え続けている。
    ※※※
――…ここは、一体どこなんだ?――
 赤毛の少女は辺りを見渡した。しかし、周りは真っ白な風景に包まれているだけで何もない。
 体には全く重さが感じられない。摩訶不思議な空間である。
――…イ……――
 少女の心の中に声が響いた。
「何だ?」
――………ス――
 声は簡単にかき消されてしまいそうなほど小さい。誰かを呼んでいるように聞こえるが、ほとんど聞き取ることができない。
「誰だ、姿を現せ!」
 しかし、声の主は現れない。
――…私は、あなたの分身…、いえ私こそが本来のあなた…――
――…お前が本当の私だと?――
 途端に体に衝撃が走った。同時に全く動けなくなる。
――今こそ一つに戻りましょう――
「一つに、だと、ふざけるな!」
 少女は気力で目に見えない呪縛を破った。
「私の名はリョウカ、それ以外の何者でもない!」
 リョウカは大声で叫んだ。
――まだ復活を拒みますか。ならばイ…、いえ、あなたをリョウカとしてもう少しいさせてあげましょう――
 リョウカにまた衝撃が走った。今度のは気を失うほどのものだった。
 真っ白な空間で少女は倒れ伏すのだった。
    ※※※