黄金の太陽THE LEGEND OF SOL 3
ロビン達は修行の穴のある滝壺の前にいた。本堂でロビン達が座禅を組んで修行しているときにニュンパがジェラルドが修行を終えたと言い出し、ジェラルドを出迎えに行くことになった。
ロビンとしてはようやく厳しい座禅から解放され、助かったのだがもうこうして待ち始めてから30分は経過している。
気の力などを感じ取ることのできないロビンにとって最早終わったかどうか疑わしいものだった。
しかし、修行の終わった事はリョウカにも分かるという。もしや分からないのは自分だけかと思ったロビンだがイワンもメアリィも分からないといった。ロビンは1人ひっそりと安堵していた。
「来るぞ!」
リョウカは言った。言葉とほぼ同時にエナジーが発生し、滝の水を打ち上げた。 水しぶきの舞う中現れたのは体中傷だらけ満身創痍のジェラルドであった。
「ジェラルド!」
ロビン達はジェラルドに駆け寄った。
「待ってろ、今回復してやるからな!」
ジェラルドはその場に膝を付き、力なく答えた。
「ああ…、頼むぜ…」
『キュアライト』
ロビンのエナジーでジェラルドの傷は大方塞がった。
「悪いな、少し楽になったぜ…」
ジェラルドは立ち上がろうとしたが、すぐによろけてしまった。
「まだ体力が戻ってないんだ。無理するなジェラルド」
ロビンはジェラルドに肩を貸した。
「ああ、すまねえ…」
「見事なりジェラルドよ!」
ニュンパは言った。
「ワシは初めお主では制覇するのは無理じゃろうと思っていた。じゃが、その予想は見事に裏切られた。良い意味でな」
ニュンパはジェラルドの前に歩み寄った。
「我が寺の奥義はお主のものじゃ。ジェラルド」
「へへ、ありがとな。じいさん」
ニュンパは手を差し出してきた。ジェラルドはそれに応じた。
握手したニュンパの手はかさついていて妙に骨っぽかった。
「ではそのオーブは返してもらうぞ」
ニュンパはジェラルドが身に付けていたオーブを取った。
「あ、じいさんそれがなきゃ奥義が…」
慌てて止めようとしたジェラルドにニュンパは笑った。
「ふぉふぉ、これは単なる飾りじゃよ」
「え、飾りって」
「お主は修行を乗り越えた事で奥義を会得したんじゃ。こんな物を身に付けたぐらいで奥義が使えては苦労はすまい?」
ジェラルドは納得した。話しを聞いてというよりは自分の中にあのエナジーがあるのを感じたからである。
「さあ、今日はもう遅い。寺で休んでいくと良いじゃろう」
言うとニュンパは本堂の方へと戻っていった。
「まあ、確かに随分日が暮れちまったな」
ジェラルドは言った。
空には既に暗闇が広がり始めていた。この先には森がある。夜に森に入るのは死地に飛び込むも同じ事である。出発は朝にした方がいいだろう。
「今日はニュンパ様のお言葉に甘えて、お寺に泊めていただきましょう」
メアリィが言った。皆気持ちは一緒だった。
その日はフーチン寺で夜を明かした。
※※※
「よいかジェラルド、先も説明したように森の怪しい所に奥義を使うのじゃ。そして現れた森の住人とは戦ってはならんぞ。わざと逃がし、それを追うのじゃ」
ニュンパは寺の入り口までロビン達の見送りに来ていた。
今朝方旅の支度をするときにも森の抜け方を説明してくれたが、忘れっぽいジェラルドのためにもう一度説明していた。
「分かってるってじいさん」
ジェラルドは苦笑した。
「うむ、分かればよろしい」
ニュンパは偉そうに胸を張った。
「ではニュンパさん、お世話になりました」
ロビンは深く礼をした。そして寺を後にした。
「へへ、じゃあなじいさん、またな!」
ジェラルドは振り返って大きく手を振った。
ニュンパも手を振り返した。
――ふ、またな、か…――
ニュンパは手を下ろした。
――奥義を授けることができた。これでワシも安心して…。…さらばじゃジェラルド、ロビン、元気でな――
ニュンパは小さくなっていくロビン達の背中をいつまでも見つめていた。
作品名:黄金の太陽THE LEGEND OF SOL 3 作家名:綾田宗