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黄金の太陽THE LEGEND OF SOL 3

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第10章 老木の怒り


「…くだらんな」
 ガルシア達の目の前にはいかにも即席で作ったと思えるバリケードが張られていた。
 サテュロスが今まさに破壊しようとしているところである。
「待て、サテュロス」
 ガルシアはサテュロスを制止した。
「あまり派手なことはしない方がいい。騒ぎはなるべくとどめるべきだ」
 サテュロスは取り合わなかった。
「そんなもの、私の知ったことではない!」
「ねえ、あれ何かな」
 2人がいがみ合っている所にジャスミンが指さし言った。
 バリケードの向こう側の土手に木が立っていた。それもただの木ではない。なんと服を着ているのである。段を重ねるごとに着ている服が違っている。
「何かのオブジェかなんかか?」
 シンは言った。
「ふん」
 サテュロスは迷わずエナジーを発動した。
『ヴァルカン』
 火柱が木の端の辺りに出現した。その勢いで木は倒れ、側を流れる川に落ちてうまく橋のようになった。
「これなら文句は無かろう?」
「ひどい事をするもんじゃ…」
 スクレータは言った。
「文句があるなら来なくていいぞ」
 サテュロスは言い放った。
 逆らえないスクレータは仕方なく妙な木の橋を渡った。
「うん?」
 ガルシアは何かに気付き、振り向いた。
「どうしたの兄さん?」
「いや、何か今木のようなのが動いたような気がしてな」
「そんな事あるわけないじゃない」
 案の定ジャスミンは信じなかった。ガルシア自身も特にそれ以上気にならなかったので見間違いだと思うことにした。
 ガルシア達全員がバリケードの向こう側へ行った後、ガルシアの言っていた木のようなものは歩いていた。
 実際にはそれは木ではなく人間の男であった。しかし体のほとんどが木の表皮と化しており、周りから見ればそれは動く木その物である。
 男は7割以上根と化した足を引き摺るようにして歩みを進めている。進む度に体のどこかが一つずつ木になっていく。
 数十メートル先に、村が見えてきた。男はそこを一心に目指している。足はもうほぼ根である。髪の毛は既に葉になっている。
 やっとの思いで男は村にたどり着いた。とほぼ同時に足が完全に根になり、その場に倒れた。
「おい、あんた大丈夫かよ!?」
 村人が男に近寄った。
「ひ、ひいい!」
 村人は驚きのあまり飛び退いた。男の体には既に体温はなく、表皮が固くなり、髪は葉になっていたからだ。
「た…助け…」
 男は辛うじて動く口で助けを求めた。いつの間にか増えた村人は彼に近付こうともしない。
「助けてくれぇ…!!」
 この言葉を最後に男は完全に木と化した。
「た、祟りだ…」
 村人は大声で叫んだ。
「これは御神木の祟りなんだ!!」
    ※※※
 ビリビノの町はロビン達がゴマ山脈を越えた時にも一度立ち寄った事がある。
 そこは町と言うにはとても小さい所であり、町の囲いとして丸太をそのまま埋め込むようにして作られている。
 全体的に見て華美な建物等はなく、規模は村と同じくらいであろう。しかしながら、小さな町であっても富豪が住んでいた。
 マッコイ宮殿にその富豪マッコイとその夫人が住んでいる。
 ある日マッコイの夫人が宮殿の別宅を作りたいと言い出したらしい。それもとても大きな建物である。
 ビリビノの町では古くから材木用の木はこの町から東に位置するコリマ森から得ていた。コリマ森の木はビリビノの町だけでなくそのほか色々な町や村に売っていた。そのため森には材木になる木がほとんど無くなってしまっていた。
 このような事態にも関わらず夫人は別宅の建設を中止しようとしなかった。そんな中樵達は大きな間違いを犯してしまった。
 御神木として崇められていた木に斧を入れてしまったのである。
 何百年という時を生き長らえた木にはトレントという精霊が宿るという。精霊によって意志を持った御神木は怒りに我を忘れ樵達に呪いをかけた。
 マッコイはその呪いを打ち倒せる戦士を集めていた。
「…こいつらか?」
 マッコイはロビン達を連れてきた門兵に訊ねた。
「はっ、この者達が勇気を出して神木の呪いを打ち破ってくれるとの事です」
 マッコイはロビン達を一通り眺めてみた。
 それなりに強そうなのが2人ほどいるが、後の3人は力の弱そうな女子供しかいないではないか。果たして本当に仕事を頼めるのであろうか。
「まだ子供ではないか?」
 マッコイは言った。
「いや、しかし彼らは勇気を出して…」
「勇気があるかどうかはよいのだ。この者どもにできるのか?」
 マッコイはバリケードの鍵を取り出し目の前のテーブルの上に置いた。
「これがバリケードの鍵だが…」
 マッコイは少し考えた。
 今までも数多くの戦士をコリマへと向かわせた。しかし彼らのうちに今までに帰ってきた者は誰一人としていなかった。今回またこの子供達を送ったとしても恐らく帰ってはこれないだろう。無駄死にして化けて出てこられでもしたらたまったものではない。
 マッコイは鍵をしまって言った。
「やはり未来ある子供達には頼めん、その勇気は認めるが帰ってもらおう覚えておくんだな、勇気と無謀は違うのだ」
 ジェラルドはすっかり頭にきている様子である。
「子供、子供ってバカにしやがって。そんなにオレ達が弱そうだってのかよ」
 それに続くようにリョウカも迫った。
「勇気と無謀は違うだと?私が無謀な事をすると思っているのか」
 マッコイはうんざりした顔で門兵に合図した。門兵はロビン達をつまみ出すような形で宮殿の外へと連れ出した。
「お主ロビンといったな?」
 宮殿の外で門兵は言った。
「残念だったな、もっと老けていれば仕事を頼まれたのだろうが…」
「あの、兵隊さんボクたち東へ行かなくてはならないのですが、通るだけでも出来ないでしょうか?」
 イワンは訊ねた。
「そういうことも出来ぬ。マッコイ様のご命令であるからな」
 ジェラルドは食い下がった。
「どうしても通りたくてもか?」
「どうしてもだ。事件が解決してから通ればよかろう」
 ロビン達の願いはとても聞き入れては貰えそうになかった。
「どうせ、あんなバリケード鍵なんかなくたって…」
 門兵は言った後しまった、という顔付きになった。
「鍵なんか無くてもなんだ?」
 ロビンは聞き逃さなかった。
「いや、何でもない…なんだ、じろじろ見るな。さっさと帰りなさい」
 門兵はそれ以上は口を割らなかった。これ以上いても無駄だろうと、何よりも面倒なことになりそうだと考えたロビン達は仕方なく宮殿を去ることにした。
 それからロビン達は例のバリケードの所に行ってみる事にした。
 それは川沿いに東に進んだ先にあった。一見するとそれはバリケードと言うよりはただ木箱を立てかけただけのものであり、バリケードと言われなければ分からないほど粗雑なものだった。
 確かに扉があり、鍵もかかっているがこれもその気になれば突き破る事ができそうなほど脆い作りであった。
「なあロビン、お前何してんだ?」
 ジェラルドは訊ねた。
 ロビンはしきりにバリケードの扉ではなく壁を調べていた。
「この程度の扉、私なら簡単に壊せるぞ」
 リョウカは扉を叩いた。なんとも薄っぺらい板の音がした。