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Angel Beats! ~君と~

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第50話 オンドゥルルラギッタンディスカー!?



「ふーん…で?」

刑事が取調室で行われている事情聴取みたいに難しい顔をし、腕を組んで遊佐をおんぶしている結弦の経緯(いきさつ)を聞く。
事件は現場で起きているのではない。自然に囲まれている田舎で起きているんだ。

「いやぁ……これ以上何を話せってんだ…」

霧島による謎の顔面ケチャップまみれ事件(?)に踊らされた、大体でまとめるとそんな感じになるだろう。
当の本人は結弦の背中に隠れている。
関根は気絶している入江にマジックペンを取り出し(もちろん水性)、頬にぐるぐるを描いたり額に肉を描こうと思ったがそれは岩沢に止められた。
どうせやるなら油性にしろ、と。
もちろん、ひさ子と関根がツッコミを入れる。
相変わらず野田は警戒の眼をちらつかせ、竹山は何やらパソコンをしている。

「つまり私達はありもしない幽霊に怯えていた、という事ですね」

一通り聞き終えた所で高松は眼鏡を知的に左の中指で軽く持ち上げ、結弦の話をまとめあげる。
ここでウダウダと留まっている必要性はゼロだと判断したゆりは、霧島の側まで歩く。

「霧島さん…だっけ?えーっと……何でもーちょっと早く私達にケチャップが付いた事伝えてくれなかったの?」

「…それは……その…言ったのですが、聞く耳持ってくれませんでした」

本人曰く、自分でも声を頑張って出したが誰も気にせず猛スピードで駆けていった、らしい。ゆりもそれはもっともだと納得。
結局、とんだ勘違いによりこんなことになった、それだけのこと。
だが、ケチャップはどうしてそこにあったのかは不明。次いでに今日の晩御飯がすき焼きに代わったり、さらに難解な事が起きている。

「それは置いておこう。貴様、音無さんに引っ付いてどういうつもりだ?……背にへばりついていて寝ている遊佐は別にして」

「え?………いや……あの…」

余計に恐がらせてしまったのか、更に結弦の後ろに隠れる。

「音無さんを助けたことには非常に感謝している。しかし、これはこれ、あれはあれだ」

「……どういう、こと…ですか……?」

「音無さんから離れろ、という事だ…!」

瞬間、霧島が直井の目に全てが引きずり込まれるような感覚に陥る。

「貴様はカーテンレールのあの名も無き『シャー』だ。年中24時間ずっとカーテンをぶら下げているあの『シャー』の有能さに気付く」

「こらこら!何しでかしてんだ!」

直井は普段、仲が良くも悪くも何とも言えない日向と口論になり、最終的にはおかしな催眠術を掛けておしまいにする。
いたって簡単だが、誰もがその方法が解らず、掛けられた本人でさえも催眠術を掛けられた時に何が起こったのか解らない。ある意味で直井の催眠術は完璧なのである。

「えー?だって音無さんに」

「それでもだ!おい大丈夫か!?」

「え…?あ、はい……。あの…どうやってそのしゃーに気付けば良いのですか…?」

肩を急に捕まれびっくりした霧島は直井の催眠術を受けていないかの様に振る舞う。

「ば…!?何故だ?催眠術は完全に掛けていた筈…!」

「はんっ、腕落ちたんじゃね?」

「何だと…?消えろ!」

鋭く尖らせた直井の目に、茶化した藤巻が吸い込まれていく。

「貴様はマグロだ。海においては最速を誇るかもしれないが、陸はどうだ?地上で何もすることが出来ずにピチピチと地を跳ね、次第に酸素が摂れなくなるマグロの哀れな最期に…貴様は気付くが良い……」

直井の声が終わると同時に藤巻は地面に横たわり、身体を跳ねさせた。まるで、魚の様に…。
皆は特に気にする事は無かった。何だかんだ言って直井はこの集まりが好きであり、手加減をしてくれるからだ。
しかし、心配性の大山はすぐにマグロと化した藤巻に駆け寄る。

「ふーむ……どういうことだ?愚かな小市民にはこの通り効いている……。なのに霧島さんには効いてない…」

顎に手を当てながら心配する大山とその背中に居る小枝とマグロの藤巻と、その藤巻を木の枝でつついている興味津々の初音に目をやり、思案する。次いでに動きと体型が劇的に良くなった松下と踊るTKも見るが興味は別に無い。
前に結弦が聞いた事があり、直井は催眠術を徹底的に身に付けた訳では無いらしい。自覚が無く気付いたら催眠術が出来ていた、とのこと。

「あのなあ直井、すぐそうやって催眠術やんの止めた方が良いぞ?」

「はーい気を付けまーす☆」

素直に返事してくれるのは良いが、遊佐を恨めしそうに見るのは止めてほしいところだった。それだけで十分人を怯ませることが出来るのだから。

「…細かい事は抜きにして霧島さん、どうしてあんな暗い所に一人でさ迷ってたの?」

「……あ、それなのですが…」

「何かしら?」

「道に迷ってしまったので…」

「こんな暗い道じゃ迷っても仕方無いわね。大丈夫?お家は遠くない?」

「はい……明るくなったら、解る…、と思います………」

「うーん…時間も何だから、ご飯食べる?どうせすき焼きだから、いくら食べても減らないわ」

(いや…減るだろ…)

結弦はそう思った。
実際に肉を争奪し、肉が踊り跳ね、飛び上がる肉を箸で掴み合い、肉を取れなかった弱者は野菜を食べる、そんな世界を目の当たりしたのだ。
食事などと形容するのは生温(なまぬる)い。
国に被害が出ない程度の小規模の戦争だ。
ゆりが一通りここに居る全員を霧島に紹介すると、チャーの家へ入っていった。
玄関で各々のサンダル、靴を脱ぎ、下駄箱に入れると霧島はパソコンをカタカタと気持ち良くリズムを取っている竹山に声を掛けた。

「あの……竹山さん、でしたっけ…?」

「何ですか?僕のことはクライストとお呼び下さい」

「え…?あ、はい分かりました……。クライストさん」

「っ!?」

クライストと呼ばれた瞬間、竹山の思考とキーボードを叩く指先がフリーズした。

「クライストさん?」

止まっている竹山に呼び掛けても返事がない。
特別に何かをやった訳でもなく、霧島は反応の無いことに焦った。

「ほっといていいわよ霧島さん」

ぽん、と優しくゆりは霧島の小さい肩に手を乗せた。しかし、ぞくりと背筋が震える程に霧島の身体が冷たかった。

「…仲村さん?」

「……先にお風呂に浸かるのが良さそうね」

ゆりはこんなのを聞いた事がある。
秋田美人は冷房などの類いに弱い、と。そのおかげで肌荒れが酷くなりボロボロになる。
自然育ちの霧島には機械類が苦手で辛いのかもしれないので、こんなに寒い思いをするのか。

























『知ってるか?ヒマワリは太陽の光を受けるために顔を上げているんだ。だから、』



『だから…?』




『だから、ここに来るヤツ全員が新しい光(じんせい)に向かっていってほしい、そう思うんだ』





































霧島が尋常でない程身体が冷たい、と言う訳で脱衣所に居る訳だが、

「うわああああああ!ひさ子さんのバカーーーー!!」

「何で顔から突進してきて受け止めたのに何なんだよ!?」

小枝が半泣き状態で初音に頭をよしよししてもらている。
作品名:Angel Beats! ~君と~ 作家名:幻影