機動戦士ガンダムRS 第8話 敵軍の歌姫
バジルール副艦長が追えるか聞いたが既にロメロ伍長は、追っていた。
すると砂嵐の中にパターン化された砂嵐音が聞こえた。
「解析します」
ロメロ伍長がそれを解析フィルターに通した。
「こちら・・・第8艦隊先遣・・・・モントゴメリィ・・・・アークエンジェ・・・・応答を」
ところどころ砂嵐で聞こえないが皆を安心させるには、十分だった。
「コープマン大佐の艦隊だわ」
ラミアス艦長がうれしそうに言った。
その言葉に皆が口々に喜びの声を上げた。
「探してるのか?
俺たちを」
ノイマン曹長がそういいながら近づきジャッキー伍長とダリダ伍長が近づいてきた。
「まだかなりの距離がありますね」
ロメロ伍長が冷静に分析した。
「でも合流できればかなり安心できる」
ノイマン曹長がダリダ伍長と肩を抱き合いながら言った。
※
サオトメは、ラクスがいる部屋から出た。
「隊長」
するとサウス中尉がきて敬礼した。
「部下から食堂でのニールとのやり取りのことを聞きました」
サオトメは、表情を変えずに聞いた。
「気にしないでください。
自分は、隊長を信じます」
「ありがとう」
サオトメの心は、少し晴れた。
すると部屋から歌が聞こえた。
サオトメは、ラクスとのやり取りを思い出していた。
※
「俺は、別にブルーコスモスとして軍に身をおいているわけじゃない。
だから敵がコーディネーターだろうがナチュラルだろうが宇宙生物だろうが国民の生命と財産を脅かす存在と戦っていきます」
サオトメは、うそ偽りなくそう答えた。
「そうですか。
でもあなたが優しいのは、あなただからでしょ」
サオトメは、そう言われたのは初めてで驚いた。
「お名前を教えていただきませんか?」
「アツシ・サオトメ」
サオトメは、名前も偽ることもなく事実を答えた。
「そう。
ありがとうございます、サオトメ様」
ラクスは、屈託のない笑顔でそう答えた。
※
ラクスは、歌い終わったようだ。
「きれいな声ですね」
サウス中尉は、聞き入っていたようだ。
「俺には、わからない」
サオトメは、幼少から敵の殺し方とマン・マシーン操縦しか習わなかったためこういう娯楽を評論できなかった。
「それも遺伝子をいじった成果でしょうか」
サウス中尉は、そういってドアの前から去った。
サオトメもその場を去り再び『でもあなたがブルーコスモスではなく優しいのは、あなただからでしょ』という言葉を思い出していた。
「『心は、自分を形作る重要な部分である』か」
サオトメは、もう忘れてしまった本に書いてあった言葉を思い出した。
その本に従えばサオトメの心は、どんな人にも優しく接する心を持っているということになるがサオトメはいまいちそれを実感できなかった。
※
食堂で座っていたフレイは、いかにもつまらなそうにしていた。
そこにサイがやってきた。
「ねえ、サイ」
「何?」
サイは、フレイに声を掛けられて返事をした。
「キラってさ、本当にスーパーコーディネーターなの?」
サイは、少し表情を曇らせた。
「まあ時々俺たちもスーパーコーディネーターだってことを忘れるよ。
なんたってあいつは、勉強はできるけど運動はまるっきりだめだから」
「そうなの?」
フレイは、意外な言葉に少し驚いた。
「幼馴染のアスランが言ってたけどあいつは、コペルニクスにいたころは勉強嫌いで学年でもワースト1位だったらしいよ」
フレイは、キラの意外な過去を楽しく聞いていた。
「それで育ての親と先生からもっと勉強しろと怒られて必死に勉強したらしい。
そのかいあってヘリオポリスに避難したころには、学年1位になったんだ」
サイは、フレイにキラの過去を赤裸々に語った。
※
遊撃艦隊第251艦隊は、アーガマもどきの追撃中に地球軍艦隊を発見した。
「どうしたんですか?」
アル・ギザのブリッジでは、ケイト准尉が艦長のバルク・ジェトロ大尉に質問した。
「地球軍の艦隊だ。
こんなところで何をしているんだ?」
バルク艦長は、艦隊が何をしているのかわからなかった。
ケイト准尉は、宙域地図を見た。
「アーガマもどきが月本部に向かうとすればどうします?」
ケイト准尉は、バルク艦長に質問した。
「だとするとあの艦隊の任務は、補給ならびに出迎えか」
バルク艦長には、ケイト准尉が言わんとすることがわかった。
「こっちは、まだ気づかれていないわね。
ロストしないで慎重に動いて」
ケイト准尉は、艦隊を追尾するように命令した。
「あれを追うのか?」
バルク艦長は、艦隊を無視しアーガマもどきを捜索しようと考えた。
「あれを攻撃すれば本命は、出てくるわ。
サオトメ少佐の報告によればあの艦の艦長は、まだ甘いという指摘もあったしモビルスーツパイロットも素人と考えていいわ」
ケイト准尉は、あの艦隊をえさにアーガマもどきはやってくると確信していた。
しかしバルク艦長は、半信半疑だった。
※
アークエンジェルは、針路を変えた。
「方位45。
マーク10αへ針路修正完了。
機関、60%。」
ノイマン曹長が修正針路を報告した。
※
それは、避難民にも伝えられた。
皆は、食堂で安堵していた。
ジャッキー伍長は、先遣隊の中にサイの父親で大西洋連邦事務次官であるジョージ・アーガイルがいることを伝えた。
「親父が?」
サイは、驚きはを隠せなかった。
「ああ。
先遣隊ときている。
無論お前のことは、知らなかっただろうがさっき乗員名簿を送っていた」
「そうですか」
サイは、驚きはしたがあまりうれしそうな感じではなかった。
※
アークエンジェルのモビルスーツデッキにキラは、マードック軍曹に呼ばれてきた。
「すみません。
遅れました」
しかしキラは、遅刻した。
「ああ、規律ジオメトリーのオフセット値を変えといたからちょっと見といてくれ」
マードック曹長は、そういった。
「はい」
マードック軍曹は、ストライクガンダムを見上げた。
「もうこいつも用は、ないかもしれないけどな」
2人は、感慨深くストライクガンダムを見上げた。
※
食事を終えたラクスは、いすに座って机の上のハロと戯れていた。
「では、問題です。
私たちは、どこに向かっているのでしょうか?」
ラクスは、ハロに質問したがその場を回転しただけで何も答えなかった。
ラクスは、そんなハロをほほえましく見ていた。
※
アークエンジェルは、第8艦隊先遣隊に合流すべく合流地点に向かっていた。
作品名:機動戦士ガンダムRS 第8話 敵軍の歌姫 作家名:久世秀一