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The beginning of a journey.

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あたしと君は、小さな頃から互いの事を何でも知っていた。
 幼い日から今日まで。
 いわゆる幼馴染だった。
 喧嘩もしたし、毎日の様に泥んこになるまで外で遊んだ事もある。
 あたしは君に負けじと、そんな男勝りな女の子だった。
 君と今日までの道を歩んで、気付けばあたし達は既に高校生。
 大人と子供の境目。
 やや君の事を幼馴染というよりは、一人の男の子として意識し出して、大人っぽい服とか、可愛い服とかを着だして、君の趣味や理想に合わせようとした。
 今まで、ただの小うるさいガキ程度にしか思っていなかったのに、いつからだろう。
 こんなに君に対して、想いを必死に巡らせる様になったのは……。

 学校からの、君と一緒の帰り道。
 あたしが君に好きな女の子のタイプを半ば強引に聞き出して、肩を落とすのは毎度の事。
 でも、今日の君は違った。
 焦る様にして声を低くする。


 誰にも言うなよな。
 俺、好きな人が出来た。


 周りを気にする様にして、あたしの耳元で囁く。
 そんな君がこっそり教えてくれたのは、年上の綺麗な女性。
 学校内では皆の人気者。
 赤毛の入った様な髪を持つあたしなんかとは違う、真っ直ぐで艶やかな黒髪。
 すらっとした体付きに、抜群のプロポーション。
 人ゴミの中に置いても、彼女の事は一目で分かってしまう。
 それほど綺麗な人だった。
 君が好きになるわけだ。
 そんな風に少しからかってやったら、ムスッとした顔で君に睨まれた。

 いつもと同じ帰り道を君と共にし、普段通りに別れて帰宅した。
 部屋の電気は消したまま、カーテンも閉めたまま……。
 ベットに顔をうつ伏せて、ただ泣いた。
 君の事は、ずっと好きだった。
 それなのに君は、全く知りもしない綺麗な誰かに恋焦がれている。


 あたしなんかじゃ、あの人には追い付けない。
 もう遅いんだ。
 君が彼女を好きになった時点で……もう、手遅れだったんだ。


 昔、母さんから聞いた事があった。
 リープ。
 十代後半の少女特有の能力で、文字通り過去へタイムスリップが出来る。


 私も、昔は過去へ飛んでいたものだわ。
 高校生くらいになったら、きっとあなたにも出来るんじゃないかしら。
 ただ念じるのよ。
 自分自身が覚えている範囲で、行きたい時を思い浮かべて。


 もう遅いのならリープをしよう。
 追い付けないのならリープを使って、君が彼女を好きになる前に……。
 こんな非現実的な事、普段のあたしなら信じようとはしなかった。
 なんてバカだったんだろう。
 この時のあたしは、藁にも縋る想いだった。
 暗い部屋の中、ギュッと目を瞑り、両手を力強く組む。
 ただ念じ続けた。
 あたしが望む過去へ。
 君と一緒にいて、ただ純粋に楽しかった、あの頃。
 そこでまた君と出会い、また恋をするんだ。


 お願い、飛んで‼

作品名:The beginning of a journey. 作家名:レイ