鳥籠
空を旋回する鳶が甲高い鳴き声を上げている。昆奈門はちらりとそれを見上げ、それから足元に深く生い茂った茂みに横たわる人間を見下ろした。
「生きているか」
そう訊くと、抑揚の無い声が「死んでいる」と応えた。
「…照星、アンタがヘマをするとは珍しいな」
仰向けになり、四肢を投げ出した照星の右腕は血にまみれ、左足の大腿部にも銃創があった。
「佐武はどうした」
「先へ行った。生きていれば戦の後で私の屍を迎えに来るだろう」
「…死ぬつもりか」
「この腕ではもう銃を持つことが出来ない。死んでいるのと同じだ」
そう言って照星は目を閉じた。もう何も話したくないと言うように、固く閉ざされた瞼は開く気配を見せず、やがて呼吸が穏やかになっていく。
気を失ったか。
照星の傍らに屈み呼吸を確認する。片手を上げると背後の茂みに控えていた高坂が進み出てきた。
「連れて帰る」
一言そう告げて、昆奈門は照星の大腿部に触れると血に濡れた布を破った。焼けた傷口の皮下に肉にめりこんだ鉄砲の玉が見える。昆奈門は脚絆から取り出した刃物で、照星の皮膚を裂いて玉を取り出した。流れ出てくる血を晒で押さえ、傷口をきつく縛る。
「腕の方は貫通しているようです」
照星の肩に晒を巻いていた高坂が静かに告げた。
「この出血では助かるか、」
「連れて帰る、と私は言ったよ。聞こえなかったか」
「は…申し訳ございません」
頭を下げ、高坂が控える。昆奈門は照星の身体を持ち上げ肩に抱えた。だらりと下がった腕が昆奈門の背に触れる。
銃が持てなくなれば死んだも同然とは、随分潔いことを言う。
「全く、アンタらしいな照星…」
昆奈門は呟いて、小さく笑った。
「生きているか」
そう訊くと、抑揚の無い声が「死んでいる」と応えた。
「…照星、アンタがヘマをするとは珍しいな」
仰向けになり、四肢を投げ出した照星の右腕は血にまみれ、左足の大腿部にも銃創があった。
「佐武はどうした」
「先へ行った。生きていれば戦の後で私の屍を迎えに来るだろう」
「…死ぬつもりか」
「この腕ではもう銃を持つことが出来ない。死んでいるのと同じだ」
そう言って照星は目を閉じた。もう何も話したくないと言うように、固く閉ざされた瞼は開く気配を見せず、やがて呼吸が穏やかになっていく。
気を失ったか。
照星の傍らに屈み呼吸を確認する。片手を上げると背後の茂みに控えていた高坂が進み出てきた。
「連れて帰る」
一言そう告げて、昆奈門は照星の大腿部に触れると血に濡れた布を破った。焼けた傷口の皮下に肉にめりこんだ鉄砲の玉が見える。昆奈門は脚絆から取り出した刃物で、照星の皮膚を裂いて玉を取り出した。流れ出てくる血を晒で押さえ、傷口をきつく縛る。
「腕の方は貫通しているようです」
照星の肩に晒を巻いていた高坂が静かに告げた。
「この出血では助かるか、」
「連れて帰る、と私は言ったよ。聞こえなかったか」
「は…申し訳ございません」
頭を下げ、高坂が控える。昆奈門は照星の身体を持ち上げ肩に抱えた。だらりと下がった腕が昆奈門の背に触れる。
銃が持てなくなれば死んだも同然とは、随分潔いことを言う。
「全く、アンタらしいな照星…」
昆奈門は呟いて、小さく笑った。