Wizard//Magica Wish −7−
普段の日常。
何もない、いつもどおりの日常。
「今日も平和だな…ミサも現れないし。ちょっと喫茶店で休んでいくか」
そのまま、余計なことをしなければ、進んでいたはずのそれぞれの時間。
「本当の気持ち……本当の…自分の、気持ち…」
何もきっかけさえなければ、何もかもそのままの日常が過ぎていったであろう。
だが、ちょっとの出来後が、後に大きく反映されていくこともある。
「さやかちゃん!一緒に帰ろ?」
「おう!さてと…ん?」
−メールが届いています−
「え…?」
「どしたの?さやかちゃん」
「…ごめん、まどか…ちょっと先帰ってもらって良い?」
各々が幸せになるためには、必ず絶望という壁を乗り越えなければならない時が存在する。
その壁は、いつ何時訪れてもおかしくはないのだ。
「うわっ…雨降り始めたてきた?…そういえばそろそろ梅雨前線くるって ほむらちゃん言ってたな…傘持ってないし、急いで帰ろう」
その絶望の壁は、自身だけではなく、時には周りを巻き込んでしまうことだってある。
誰かに希望が訪れ、その分、誰かが絶望してしまう。
世界は、そのような理で成り立っているのだ。
「なに?突然どうしたのさ、あんたから呼び出すなんて珍しいわね…恭介」
「さやか……」
人は、何があっても絶望という壁から逃げてはいけない。
逃げた瞬間、その人の未来には、絶望一色しか存在しなくなってしまうからだ。
「あぁもう…風引いちゃうよ…家に着替えあったかな…。あ、杏子ちゃんに迎え来てもらえばよかっ…」
「やぁ、こうやって直接会って話すのは初めてだね?操真 ハルト」
「…っ……この声…」
絶望と希望…
どちらを選ぶのも個人の自由だ。
全ての辛い出来事を乗り越えて、希望を目指すのか、
それとも、全てを諦めて、絶望を受け入れてしまうのか。
ただ、どちらにも共通して言えることは一つ。
「ど、どうしたのよ!そんなかしこまっちゃってさ、一体何が…」
「好きだ…さやか」
「…えっ…」
「僕は…僕は、君が好きだ」
「きょ…きょ……す…け?」
『決断』という時は、待ってはもらえないのだ。
「指輪の魔法使い、ウィザード。君に幾つか聞きたいことがあるんだ。ちょっとだけ良いかい?もちろん、君に黙秘権なんてものは無い。それに、君のことは大体調べさせてもらったよ」
「インキュ…ベーター…!!」
「ウィザード、その存在理由と誕生の秘密。正直意外だったよ、君の正体。どおりで僕が知らない筈だった訳だ。そして、暁美 ほむら があそこまでして君を狙う理由。確かに…君の存在はとても大きすぎるね」
「インキュベーター…お前、どこまで知っている?」
「ほぼ全てと言っても過言ではないね。さぁ、話してもらおうよ。操真 ハルト」
その日から、太陽は雨雲に隠れ、いつ降り止むかわからない雨が続いた…。
作品名:Wizard//Magica Wish −7− 作家名:a-o-w