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Wizard//Magica Wish −7−

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「も、もう!からかわないでください!」
「ごめんごめん、なんとなく、仁美が怖がっている光景が頭の中にひろがっちゃってさ」

俺の目の前にいるのは、いつもの恭介だよな。
でも、どこか…なんというか。違う。
一言でいうと、ぎこちないのだ。
普段の恭介はもっと笑う。まぁ俺が男友達っていうこともあるが。
もちろん、仁美ちゃんとの会話で全く笑っていない訳ではない。
ただ、心の底から笑っていないのだ。
何故?
目の前にあんな美人な彼女がいるのに。

もしかしたら

恭介の心に、なにか迷いがあるのか?


「…あら!もうこんな時間、すみません、上条くん。これから私はピアノのお稽古がありますの」
「そっか…毎日大変だね。僕は別にどこにもいかないから、また暇な時間できたらおいでよ…待ってる」

「あれ、もう帰るの?」
「えぇ、これからお稽古がありますの。今日は楽しかったです、操真さん!それでは、私はこれで…」

「あぁ、気を付けて帰れよ?」
「じゃあね、仁美」

仁美ちゃんは笑顔で手を振りながら病室を後にしていった。
「良い子だな、仁美ちゃん」
「えぇ…とっても…」
恭介は、どこか浮かない顔でそう答える。やはり…なにかあるらしい。
「どうした、恭介。…あ、さては仁美ちゃんが帰って寂しいのか?」
「…っ!…ま、まぁそんなところですよ、ははっ!」
違う。
恭介は何かに気付き、必死に笑顔を作ろうとしたが、俺には無意味だ。
恭介は、心の中で何かと葛藤している。

「なぁ恭介」
「はい!なんですかハルトさん?」
「お前…仁美ちゃんのことで何か悩み事でもあるのか?」
「えっ…な、なに言っているんですか!ハルトさん!」
「まぁ…なんだ。別に無理して話してくれって言っている訳じゃない。ただな…仁美ちゃんと二人きりの恭介の姿見ていると…お前はどこか申し訳なさそうに仁美ちゃんと接しているように見えるんだ」
「えっ…」
「…恭介」

俺はベッドに座り、恭介の両肩を掴む。無論、恭介は突然のことで言葉を失い、じっと俺を見続けていた。

「なにか悩みがあるなら、迷わず口に出した方が絶対良い。ずっと心の中で背負い込んでしまうと、自分自身を…お互いを傷つけていくとになるぞ」
「…ハルトさん…」
「なぁ恭介、お前は、自分の本当の気持ちと向き合えているか?」
「……えっと…その…」
「別に俺は恭介達を妬んでいるわけじゃない。だが、中途半端な気持ちでそのままにしておくと、その先に待っているのは『絶望』だけだ」
「絶…望…?」
「あぁ。…だから、自分にもっと正直になれ。思っていることがあるんだったら、迷わず行動しろ。自分を信じるんだ。」

「自分の…本当の気持ち…」

「決めるのは、俺じゃない。恭介だ。…ほらっ!だったらもっと胸張って堂々としろ!」
「え?」
俺は恭介の背中を軽く叩いてやった。
それと同時に重い空気があっというまに吹き飛び、いつもの日常が始まる。
「俺には出来ることは限られているが、何かあったら相談しても良いんだぞ?もちろん、期待はするなよ」
「ふふっ!…ありがとう、ハルトさん!」

久しぶりに、心の底からの恭介の笑顔が現れた。
本当に、俺のこの発言は正解なのか、不正解なのかわからない。
だが、このままではいけないと感じた俺は、恭介の友達として助言してあげた。


だが、物事っていうのは、そう簡単に進まないことだってある。
むしろ、その一言が、上手く噛み合っていた歯車を、崩してしまうこともあるのだ。



作品名:Wizard//Magica Wish −7− 作家名:a-o-w