僕よりも優しい人
何でも無いことのように笑って、近藤は持ち上げた二匹の猫を胸に抱え込んだ。そうして土方が「駄目だ」と言う前に大股に河原を上がってしまい、土方に手を伸ばしてきた。
「トシは優しいからなぁ」
犬のことだって本当は心配してたんだろう?と言われ、違うと首を振る。だが近藤は気にせず土方の手を握った。
「俺はさぁ、トシ」
熱い手が指に絡み、強い力で引き上げられる。
「こいつらが死んじまったらお前が悲しい顔するだろうと思うと、このまま置いてはいけねぇよ」
そう言って笑った近藤の顔に、土方は何も言えず唇を閉じた。
自分は傍にいすぎて、大事なことを忘れてしまっていた。
この人に切り捨てる強さはない…だが、繋ぎとめる強さがある。だから自分はこの男の傍にいるのだ。
この笑顔に惹かれて止まないのだ…。
溜めていた息をゆっくりと吐き出し、近藤の手を強く握り返した。唇を綻ばせた近藤の胸元で、ビー玉の目をした猫がみぃ、と土方を呼んだ。