Cherish the day
いつもはあまり告げることのない言葉を囁き、口付けの代わりに指先で音也の唇を押さえた。音也が唇を尖らせてトキヤの指にキスをして、笑う。
「今日はトキヤの部屋に行ってもいい?」
「ええ。今日はあなたの部屋では眠れそうにありませんしね」
部屋の現状を思い浮かべてそう言ったトキヤに、音也は不思議そうな顔をした。どうして、と訊きたそうに開いた唇をまた指先で押さえて、手を差し出す。
「さぁ、皆が待っていますよ。…どうぞ、パーティー会場へご案内します」
トキヤはそう言うと恭しく頭を下げて、音也の手を握った。 温かな音也の指を絡め取って、その温もりが離れてしまわないように、ぎゅっと。
(2012年04月11日)
作品名:Cherish the day 作家名:aocrot