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パラレルワールドストーリー

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「言っておくけど…生徒会のメンバーは皆知ってるよ。お前以外は。聖川も、シノミーも、おチビちゃんも、皆だ。お前に話さなかった理由は、お前がイッキのことを何も訊かなかったから…というのがひとつ。もうひとつは、イッキがお前にそれを隠したがっていたから、だ」
がつんと頭を殴られたようなショックがあった。
「何故、ですか」
「原因が分からないか?」
呆れたようにレンが笑う。それに何か言い返そうとした時、生徒会室の扉が開き音也が入ってきた。いつものように上機嫌に鼻歌を歌いながら駆け込んできた音也は、すぐに室内の異様な空気に気付いたように歌うのを止めて入り口で立ち竦んだ。
「…どうしたの、二人とも。何かあった?」
戸惑ったようにそう言った音也に応えず、トキヤは黙って自分の席に戻った。
「どうもしないよ、イッキ。今日は随分早かったね」
「あ、うん。掃除が早く終わったから」
レンが笑顔で音也を迎え入れる。音也はトキヤの態度が気になったのか、ちらちらと視線を寄越してくるのが分かったが、トキヤは顔を上げなかった。
 音也に隠し事をされていた。皆が知っていたのに、自分だけが知らなかった。
 その事実に、ひどい苛立ちを感じていた。
 その日、トキヤは音也と一言も言葉を交わすことは無かった。最初は気にせずにトキヤの傍にいた音也も、時間が経つにつれ次第にそれを気にしたように、落ち込んだ顔をして離れていった。
 音也はトキヤが何故こんな態度を取るか、分かっていないだろう。
 当たり前だ…。
 何故こんなに苛立っているのか、トキヤ自身も分からなかった。


(2012年10月22日~)