一緒に食べよう
忘れていたふりをするのもおかしな気がして、「私の誕生日ですね」と素直に答える。音也が声を立て笑った。
「うん。明日になったらきっと嶺ちゃんも帰ってきて、皆もお祝いに来るからさ、二人っきりになれないじゃん。…だからさ、今こうやって一緒にいれるのが本当に嬉しいんだ」
温かな腕がトキヤの背をぎゅっと抱いた。引き寄せられるまま音也の体を抱いたトキヤの耳朶を噛んで、音也は溜息を吐くように笑った。
「大好きだよ、トキヤ…」
日付が変わり、音也が差し出してきた袋の中には新しいエプロンが入っていた。
お揃いなんだよと、自分の分をトキヤに見せた後、嶺ちゃんにも買ったんだと告げられた時は少し呆れてしまったけれど、誕生日おめでとうとまるで自分のことのように嬉しそうに言われて、許してしまう。
「…朝は何を作りましょうか」
溜息を吐いてそう笑ったトキヤに、音也も目を細めて笑った。
「一緒に食べればきっと、なんだって美味しいよ、トキヤ」